リダクションギア|モーター回転を減速・増トルク

リダクションギア

リダクションギアは、入力回転を所望の回転数・トルクへ変換するための歯車機構である。電動機や内燃機関の高回転・低トルクを低回転・高トルクへ変換し、搬送機、産業用ロボット、AGV/AMR、工作機械、EVのe-axleなど幅広い用途で用いられる。一般に減速比iを大きくするほど出力トルクは増すが、効率は低下し、バックラッシや騒音の管理が重要となる。構造は平行軸歯車、斜歯車、遊星歯車、波動歯車、サイクロイドなど多様で、必要な精度・剛性・効率・サイズに応じて型式と段数を選定する。

原理と基本構成

リダクションギアは、歯数比に基づく角速度変換機構である。理想的には出力回転数n_out=n_in/i、出力トルクT_out≒T_in×i×η(ηは効率)で表せる。基本構成は入力軸・歯車列・軸受・ハウジング・潤滑系からなり、取付部はキー、スプライン、カップリング等で動力を伝達する。歯車精度や軸受剛性、ハウジングの寸法剛性は、騒音・振動(NVH)と寿命に直結する。

主な型式

  • 平行軸(平歯/斜歯):一般的なリダクションギア。斜歯はかみ合い率が高く静粛であるが、スラスト荷重が増える。

  • 遊星歯車(planetary):同心・同軸で高減速比を小型で実現。ねじれ剛性に優れ、ロボット関節やe-axleで多用。

  • 波動歯車(harmonic/波動):柔軟輪の弾性変形を利用し、大減速比・高精度・低バックラッシを実現。軽負荷・高精度用途に適す。

  • サイクロイド:圧縮転動で高耐久・衝撃に強い。低速高トルクで工作機械や搬送分野に用いられる。

設計指標と計算の要点

リダクションギアの設計では、減速比i、トルクT、許容曲げ応力(歯元強度)、接触応力(歯面強度)、効率η、バックラッシ、ねじり剛性、騒音、熱収支を総合評価する。選定時は必要出力トルクT_reqに対して、使用係数(サービスファクター)を掛け、T_out≧T_req×SFを満たすように段数・モジュール・歯幅・材質・熱処理を決める。許容荷重はJISやISO、AGMAに準拠した計算で確認する。

材料・熱処理・歯面仕上げ

歯車材はS45C、SCM系合金鋼、SNCMなどが用いられ、浸炭焼入れ・浸炭窒化・高周波焼入れによって歯面硬度と耐ピッティング性を高める。ショットピーニングは疲労強度を改善する。潤滑はギヤオイル(ISO VG等級、EP添加剤)やグリースを用途に応じて選択し、歯面粗さ・クラウニング・歯形修整により実運転荷重下の接触状態を最適化する。

公差・精度と規格

リダクションギアの精度は歯形・ピッチ・偏心・歯すじ等で規定される。一般にJIS B 1701/1702やISO 1328系列の等級に従い、用途に応じた精度を採用する。バックラッシ管理は定位精度・応答性・騒音へ影響が大きく、要求精度が高い場合は予圧や歯面修整、波動・遊星の多点かみ合いを活用する。

音振・効率の改善

  • 歯形修整(クラウニング、リード修整):負荷分布の均一化とミスアライメントの吸収。

  • 斜歯・高かみ合い率化:トルクリップル低減と静粛性向上。

  • 高精度加工とベアリング予圧:起振源低減とねじれ剛性向上。

  • 適正潤滑:スコーリング防止と効率維持(過多油は攪拌損失増)。

用途例

産業用減速機、ロボット関節、AGV/AMRの駆動ユニット、EV e-axle、ウインチやコンベヤ等の低速高トルク駆動にリダクションギアが使われる。小型サーボでは遊星段+直交段の複合も一般的で、応答性・剛性・静粛性のバランス設計が要点である。

選定手順(実務の勘所)

  1. 仕様定義:必要回転数・トルク・許容バックラッシ・目標効率・寿命・騒音目標。

  2. 型式選定:負荷トルクと空間制約から平行軸/遊星/波動/サイクロを選ぶ。

  3. 強度確認:歯元・歯面強度、軸・キー・スプライン、軸受寿命をJIS/ISOで検証。

  4. NVH/熱:共振回避、放熱、油量、シール、攪拌損失。

  5. 製造・組立:加工公差、測定、組立冶具、締結管理(例:ボルトの軸力管理)。

保全と故障モード

リダクションギアの典型故障は、歯面ピッティング、スコーリング、歯元折損、フレーキング、焼付き、潤滑劣化、シール摩耗による漏油などである。定期的なオイル交換・ろ過・鉄粉監視、バックラッシ・振動・温度のトレンド管理、シールと軸受の予防交換が信頼性を高める。

組立・取付上の注意

芯出し誤差や基礎の剛性不足は歯面荷重偏在の原因となる。入力側・出力側カップリングのアライメント、基台の平面度・剛性、締結の軸力管理、適正な通風・放熱経路の確保が重要である。電動機直結のリダクションギアでは、起動・停止のトルクリップルや回生時の荷重を見込み、過負荷保護と制御パラメータを整合させる。