マーガレット=ミード

マーガレット=ミード Margaret Mead 1901~78

アメリカ合衆国の文化人類学者。主著『サモアの思春期』『男性と女性』 。文化人類学の母。サモア諸島の若者には青年期およびそれに見合う期間がないという。マーガレット=ミードは、学習された行動の様式としての文化が、どのように世代間で伝達されるかを研究した。南太平洋の島々をめぐって、未開社会の子どもの成長を調査し、サモア島では子どもは5歳くらいになると生活に必要な知識や技術は身につけて大人の仲間入りをし、青年期特有の葛藤現象がないことを示した。また、ニューギニア島では働いて権力を持つ女性に男性が依存する部族がいることから、男女の性格は生得的ではなく、社会的に形成されたものであると説き、ジェンダー論にも大きな影響を与えた。「菊と刀」の著者ルース・ベネディクトは彼女の指導教官に近い立場にあった。

マーガレット=ミード

目次

マーガレット=ミードの生涯

1901年生まれ、1924年コロンビア大学を卒業後、翌年から南太平洋のサモア島に向かう。50年余りを南太平洋のサモア諸島、ニューギニアのセピック川の端、マヌス島、そしてインドネシアのバリ島などの各村を巡り、男女の文化的性差や気質を研究した。
マーガレット=ミードのこの文化人類学の研究は、男女の文化的差と養育、文化と気質の関係は当時フロイト心理学が支配していた人間科学の中で新しい疑問を投げかけることになる。 
常に実践的な社会参加として行動に移されており、社会活動は末年まで続いた。
1942年からニューヨーク自然博物館の民俗学部準管理員として活躍する傍ら、ニューヨーク師範大学やコロンビア大学などで人類学の調査を担当した。
ミードは米国人類学会と米国科学振興協会会長を務めただけなく、国立アカデミーの会員、世界教会協議会など10余りの組職に関与した。世界を歩き回りながら宗教と女性、犯罪、飲酒、結婚問題などほとんどすべての社会問題について大衆の前で講演を行っており、女性雑誌「レッドブック」に16年間寄稿し、女性の人権伸張にも大いに寄与した。この幅広い活動は、多くの人々に文化人類学を世間の人々に知らせ、偏狭な文明優越主義から脱することを促しただけでなく、ジェンダー論についても大きな影響を残した。1978年、この世を去っている。

著作

  • 『サモアの時代年齢層』(1928)
  • 『ニューギニアにおける成人化』(1930年)
  • 『変化するインディアン種族の文化』(1932年)
  • 『3つの原始社会における性と気質』(1935年)
  • 『男性と女性』(1949年)

マーガレット=ミードと結婚

マーガレット=ミードは、文化人類学の研究の中で、性と結婚に対して「寛容」な態度を取り、結婚制度やジェンダー論に大きな影響を与えた。人間の寿命が延長されるほど一夫一婦制が一生持続する可能性は少なくなるという考えのもと、結婚に過度な期待を抱かないことと予備的結婚を推奨した。実際にマーガレット=ミードは牧師志望生、人類学者レオ・フォーチュン、グレゴリー・ベイトソンと結婚と離婚を3回繰り返したが、前の夫たちと彼らの妻とも良い関係を維持することで、新しい形態の結婚観を示した。

男と女の文化的差異と文化的発展

マーガレット=ミードは男と女に対し、生物的な差異以上に、文化的な差異があることを指摘し、そこに男女の違いとして執拗に現実社会で認められている。この文化的な差異はとくに職業などに置いて文化発展の障壁となっている。この障壁を取り除き、男女すべての才能を開花させ、より一層完全に活用できる文化の型を構築する方法を模索している。

男女の差異のステレオタイプ化

男女の身体的差異とこれに密着した性の役割を過剰に強調し、不当に生活の他の部分に適用する男女観が固定化されてしまっている。さらに、ステレオタイプ化によって、知性、芸術、政治、宗教における男女差をひとつの尺度でみるという誤りを犯している。また、そのことで現実の能力とは別に、性に対する活動を制限する傾向にある。たとえば、性による選挙権の有無や男の仕事、女の仕事といったように。
男女に関わらず、両性ができるにもかかわらず、社会的にそれを制限することは社会的な利益とつながらない。性の垣根を超えることで社会を文化的にも経済的にもよりよく発展させる必要がある。

通過儀礼(イニシエーション) initiation

通過儀礼(イニシエーション)とは、誕生・成人・結婚・死亡など、人生の重要な節目や区切りに行われる儀礼をいう。 日本では、子どもの成長に伴う通過儀礼としては、お宮参り・七五三・成人式(元服)などがある。マーガレット=ミードによれば、近代社会の成立以前は、子どもは大人になるためのさまざまな試練を含む儀礼を通過することによって、村や部族で大人の資格を持つ者と認められ、大人の仲間入りをした。そこには、青年期という独自の 発達段階は存在しなかった。近代以後、教育制度の確立とともに大人になるための準備期間として青年期があらわれた。(参考:モラトリアム

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