ポリシリコン|多結晶構造を有するシリコン材料

ポリシリコン

ポリシリコンとは、多結晶構造を有するシリコン材料のことである。半導体デバイス液晶ディスプレイ(LCD)太陽電池など幅広い分野で用いられ、高い導電性や熱特性、微細加工の容易さなどから重要視されている。単結晶シリコンよりも結晶構造が乱れているが、製造コストが比較的低く、堅牢性や実装の自由度も高い。ポリシリコンは微細化技術の進歩とともに各種デバイスで欠かせない層材料となっており、高集積化や高性能化を支える基盤としても位置づけられている。

概要

ポリシリコンは結晶構造が不均一であり、微細な結晶粒が集合する形態を取っている。半導体分野ではゲート電極や配線層に活用されるケースが多く、シリコンの優れた物性を活かしつつ、単結晶ほどの高価な工程を経ずに作製できる点がメリットである。結晶粒の大きさや粒界の性質によって導電率やキャリア移動度が左右されるため、アニール条件や不純物ドーピングなどの工程を細かく制御して目的の特性を引き出すことが重要となっている。

用途

最も代表的なのはMOSFETやCMOSにおけるゲート電極としての利用であり、微細化が進むにつれてゲート酸化膜とのマッチングが鍵となっている。また、ポリシリコンは液晶ディスプレイの薄膜トランジスタ(TFT)にも広く活用され、高解像度や高速応答の実現に寄与している。太陽電池分野でもアモルファスシリコンとのハイブリッド型セルに用いられる場合があり、結晶シリコンに比べて低コスト化や製造速度の向上を図れるメリットがある。センサー分野では抵抗膜として利用され、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)のような微小機械構造の形成にも応用されている。

製造方法

ポリシリコンの形成にはCVD(Chemical Vapor Deposition)が広く採用されている。シランガス(SiH4)やジクロロシラン(SiH2Cl2)などを使用し、高温環境下で化学反応を起こして薄膜を堆積する。堆積後、アニール処理を行うことで結晶粒を成長させ、膜中の結晶構造や不純物の分布を最適化する。必要に応じてドーピング処理を施し、n型あるいはp型の導電性を付与することで、半導体デバイスゲート電極や抵抗層として機能させることができる。

物性

ポリシリコンは多結晶構造のため、結晶粒界による散乱効果が起こりやすく、単結晶シリコンと比較してキャリア移動度が低い傾向にある。一方で結晶配列がランダムであることから、結晶欠陥による影響を局所化できる場合があり、特定の用途では有利に働く場合もある。膜厚や結晶粒サイズ、ドーピング濃度などを適切に設計することで、目的に応じた導電率や温度特性を得られる点が特徴である。さらに、機械的強度も比較的優れており、微細構造を伴うデバイスの耐久性向上に寄与することがある。

微細化との関係

半導体業界ではトランジスタの微細化が進むにつれて、ゲート長や配線幅の縮小が繰り返し行われている。この過程でゲート電極として利用されるポリシリコンは、酸化膜との界面品質や不純物拡散プロファイルが重要な要素となる。膜形成時の工程管理やアニール条件の選定を慎重に行わなければ、ゲートリーク電流やしきい値電圧のばらつきが大きくなり、歩留まり低下を招きかねない。EUVリソグラフィなど最先端のリソグラフィ技術との組み合わせにより、極端に微細な回路パターンでも高い信頼性を確保できるよう努められている。

課題

ポリシリコンは安価で大量生産に適する一方、粒界でのキャリア散乱や不純物偏析がデバイス特性に影響を及ぼすため、工程条件の最適化が難しいという課題がある。ドーピング後の熱処理や膜の結晶化プロセスを細かく制御し、均質な特性を得るには高度な装置やプロセス管理が必要となる。また、高周波特性が要求される分野では、ゲート電極金属シリサイドを併用するケースが増えており、ポリシリコンそのものの利用範囲が変化しつつある。結晶粒や膜厚のばらつきをいかに低減するかが、将来のデバイス性能を大きく左右しているといえる。