フォースドコンベクション
フォースドコンベクションとは、ファンやポンプなどの外力で流体を強制的に流し、対流伝熱を高める現象である。浮力に依存する自然対流に比べ、流速と流路設計を制御でき、伝熱係数hの大幅な増加が期待できる。熱交換器、電子機器の冷却、乾燥装置、発電プラントの二次冷却系など、産業用途で最も広く使われる基本機構である。設計では流動様式、圧力損失、材料温度限界、汚れ付着や騒音など多面的な要件を同時に満たす最適化が必要となる。
原理と定義
フォースドコンベクションの原理は、外部動力により境界層を薄くして熱・運動量の拡散距離を短縮し、単位面積あたりの熱流束を増やす点にある。自然対流では密度差が主因であるのに対し、本機構では流速・乱流強度・表面粗さ・形状が支配因子となる。
基礎式
基本関係はニュートンの冷却則で、熱流量Q=hAΔTで表される。ここでAは伝熱面積、ΔTは代表温度差である。装置の入口出口に温度勾配がある場合は対数平均温度差ΔT_lmを用いる。hの単位はW/m^2Kであり、目的は対象条件でhを最大化しつつ損失を抑えることである。
境界層と流動様式
固体表面近傍には速度境界層と温度境界層が形成される。層が薄いほど勾配が増しhが高まる。層流は秩序的で摩擦が小さいがhも低い。乱流は混合が強くhは高いが圧力損失が増える。遷移域では表面粗さや入口条件に敏感である。
無次元数
支配指標としてRe=ρuD/μ、Pr=ν/α、Nu=hD/kが用いられる。Reは慣性と粘性の比で流動様式を示し、Prは運動量拡散と熱拡散の比である。Nuは対流と熱伝導の比で、実用上は相関式で予測する。輸送の複合度合いにはPe=Re·Prも便利である。
代表相関式
- 円管内乱流: Dittus–Boelter式 Nu=0.023Re^0.8Pr^n (加熱n=0.4, 冷却n=0.3)。
- 物性変化顕著: Sieder–Tate式 Nu=0.027Re^0.8Pr^(1/3)(μ/μ_w)^0.14。
- 外部流: Churchill–Bernstein式で円柱周りの平均Nuを広範囲に適用。
- 板上流れ: 層流はNu_x=0.332Re_x^0.5Pr^(1/3)、乱流は0.0296Re_L^0.8−…など。
内部流れの注意
流入口近傍では速度・温度境界層が未発達で、局所Nuが高い。十分発達後は一定値へ収束する。開発長は層流でおよそ0.05ReD、乱流で約10D程度が目安であり、短管では未発達効果を考慮する。
圧力損失と動力
フォースドコンベクションではΔpがポンプ/ファン動力P=Δp·Q_vに直結する。Darcy–Weisbach式Δp=f(L/D)(ρu^2/2)により摩擦損失を評価する。h向上のための乱流促進や狭小化はしばしばfを増やすため、伝熱性能指標j/fや性能評価基準(PEC)で総合判断する。
設計指針
目標熱負荷と許容温度差から必要hを逆算し、流路断面、フィン形状、配列、材質、流速を決める。熱交換器では対向/並行/交差流配置でΔT_lmが変わる。電子冷却ではヒートシンクのフィンピッチとファン特性曲線の整合が肝要である。
測定と推定
実験では入出力熱収支と表面温度分布からhを同定する。薄膜熱流計、熱電対アレイ、赤外計測、定常加熱法や過渡法が用いられる。物性は代表温度で評価し、壁温でのμやk補正を行うと精度が安定する。
典型的な適用例
- 自動車ラジエータとインタークーラ
- 空調ダクトとコイル
- 電子機器ヒートシンク
- 乾燥炉・流動層乾燥
- 化学反応器のジャケット冷却
- ガスタービンブレード内部冷却
実務上の落とし穴
- 代表温度差の誤用とΔT_lm未適用
- 局所Nuと平均Nuの混同
- 表面粗さ・汚れの長期劣化無視
- 騒音・振動と共振の看過
- 流量分配の不均一化
規格と参考
設計・試験ではJISやISOの熱交換器・風量測定規格を参照する。最新の相関は学術誌やハンドブックで更新されるため、適用範囲の確認が不可欠である。数値解析CFDは詳細を見る強力な補助手段である。
関連概念
フォースドコンベクションは自然対流やミックスドコンベクション、沸騰・凝縮としばしば併存する。伝熱経路は伝導+対流+ふく射の合成であり、装置ではこれらの寄与を分離評価し、支配要因に資源を集中させることが合理的である。