ファンクションジェネレータ
ファンクションジェネレータは、実験・設計・製造現場で用いられる汎用信号源であり、時間領域の既知波形(正弦波・方形波・三角波・パルス・ノイズ・任意波形など)を所望の周波数、振幅、オフセット、デューティ比で生成する装置である。回路評価、フィルタ特性の測定、センサ励起、アクチュエータ駆動、システム同定など幅広い用途に対応し、周波数安定度や歪率、上昇時間、ジッタといった波形品質の管理が重要となる。
基本構成と動作原理
一般的なファンクションジェネレータは、内部の波形生成部(アナログRC発振、デジタルDDS、任意波形メモリ)、周波数基準(TCXO等)、波形整形回路、振幅・オフセット設定、出力段(増幅器、アッテネータ、インピーダンス変換)、およびUI(ノブ、数値入力、リモート制御)から構成される。DDS方式は基準クロックに対して位相累算器とLUTを用いて高精度な周波数分解能を得るのが特徴である。
代表的な出力波形と用途
- 正弦波:フィルタ、増幅器、電源の周波数応答測定
- 方形波・パルス:デジタル回路駆動、立上り時間の応答観察
- 三角波:スイープ源、線形性評価、駆動試験
- ノイズ:SNR評価、耐雑音試験の疑似入力
- 任意波形(Arb):センサ模擬、特定トランジェントの再現
主要仕様の読み方
周波数範囲(例:1 µHz〜120 MHz)、分解能、周波数確度(基準クロックppm)、振幅範囲(VppまたはVrms)、オフセット範囲、出力インピーダンス(50 Ωが標準)、THD、SNR、位相雑音、パルス立上り時間、デューティ可変幅、バースト/スイープ機能、変調(AM/FM/PM/FSK/PWM)、メモリ長、サンプリングレート、チャネル数、同期出力などを確認する。計測系が50 Ω終端か高インピーダンスかで実効振幅が変化する点に留意する。
接続とインターフェース
出力はBNCまたはSMAが一般的で、終端は50 Ωが標準である。トリガ入出力により単発波形、ゲート制御、外部同期が可能である。制御はフロントパネルのほかUSB/LAN/RS-232などでSCPIコマンドにより自動化できる。同期出力(Sync/TTL)は位相参照やパルス列の基準として有用である。
測定系への組み込み手順
- 負荷と周波数帯域に見合う機種を選定する(帯域、振幅、上昇時間)。
- 終端方式を統一する(50 Ω終端ならジェネレータ側の表示振幅と一致しやすい)。
- 必要に応じて直流ブロック(カップリングコンデンサ)やアッテネータを挿入する。
- オシロスコープまたはパワーメータで出力実効値を検証し、必要なら校正する。
キャリブレーションと不確かさ
周波数確度は基準発振器に依存するため、年次での校正が望ましい。振幅は終端条件、ケーブル損失、帯域制限で変動する。不確かさ評価では、計器仕様(±%読み+桁)、環境温度、周波数依存性、ケーブルSパラメータを合成し、カバレッジ因子を明示する。高確度が必要な場合は外部基準(10 MHz)入力で同期させる。
波形品質と信号整形
方形波のエッジは帯域制限によりリンギングやオーバシュートが生じる。必要に応じてパッシブLPF/HPF、アッテネータ、終端器を併用して整形する。THDの低減には正弦波専用の低歪モードや外付けフィルタが有効である。任意波形はDAC分解能と補間方式に依存し、量子化ノイズや画像成分が生じるためサンプリング周波数とアナログ帯域の整合が必要である。
安全・EMC上の注意
出力オフセットが大きい状態で高感度入力へ直結すると破損の危険がある。耐圧の低いデバイスや測定器には直流ブロックと保護抵抗を用いる。ループや長尺ケーブルは不要輻射やグランドループを誘発するため、シールドと一点接地を徹底する。無誘導アッテネータの使用は高周波リップルの抑制に有効である。
選定のポイント
- 周波数・振幅余裕度:必要仕様の1.5〜2倍の余裕が安全である。
- 時間特性:立上り時間、ジッタ、位相雑音が系の限界にならないか。
- 機能:変調、バースト、スイープ、任意波形、デュアルチャネルの要否。
- I/O:外部基準、トリガ、Sync、リモート制御の有無。
- キャリブレーション:校正証明、トレーサビリティ、ドリフト仕様。
発振方式の比較視点
アナログRC発振は構成が簡潔で低価格だが長期安定度に限界がある。DDSは周波数分解能と再現性に優れ、位相制御やスイープが容易である。任意波形ジェネレータ(AWG)はトランジェント再現に強いが、サンプリングレートとメモリ長、DACビット数が制約となる。用途に応じた方式選択が実用的である。
実例:フィルタ特性評価
ローパスフィルタのBode測定では、ファンクションジェネレータのスイープ機能を用い、出力をDUTへ、入力・出力をオシロスコープやロックインへ接続する。利得は20 log10(Vout/Vin)、位相は基準信号との時間差から算出する。入力レベルは非線形領域を避けるよう適切に設定する。
トラブルシューティング
- 振幅が想定より低い:終端ミスマッチやケーブル損失、スケール設定を点検する。
- 波形が歪む:帯域不足、飽和、オーバーシュート。周波数や負荷を下げ、フィルタを適用する。
- 同期しない:トリガ極性・レベル、Sync配線、外部基準のロック状態を確認する。
関連機器との併用
ファンクションジェネレータは、オシロスコープで波形観測し、スペクトラムアナライザで周波数成分を確認し、マルチメータやLCRメータで受動素子の実効値を評価するといった連携で真価を発揮する。電源供給系では直流電源と組み合わせ、バイアス重畳や負荷試験に用いる。