パレット
パレットとは、貨物を一定の単位にまとめて載せ、フォークリフトなどで一括して荷役・保管・輸送するための台である。日本ではJIS Z 0106で用語が定義され、一貫輸送用の平パレットについてはJIS Z 0601で寸法と性能が定められている。木製、プラスチック製、金属製、紙製と材質の幅は広い。製造業の出荷現場から小売の店舗搬入まで、物流のほぼすべての工程で使われる基本資材である。
ユニットロード化とパレットの普及
20世紀前半までの荷役は、袋や箱を1個ずつ人力で積み降ろす「バラ積み」が中心であった。状況を変えたのは第二次世界大戦中の米軍である。フォークリフトとパレットを組み合わせて軍需物資を大量に動かし、その効果を実証した。戦後、この方式は「ユニットロードシステム」として民間に広がった。日本では1960年代の高度成長期に導入が進み、1970年にJIS Z 0601が制定されている。翌1971年には日本パレットレンタル株式会社(JPR)が設立され、共同利用の仕組みづくりが本格的に始まった。トラック1台の荷降ろしにかかる時間は、手積みなら2〜3時間を要するところ、パレット積みでは20〜30分程度まで短くなるとされる。
寸法規格とT11型
国内で最も普及しているのが、1,100mm×1,100mmのT11型である。高さ144mm、積載質量1tを標準とし、JIS Z 0601の一貫輸送用平パレットとして定められている。T11型が選ばれた理由のひとつは、日本のトラック荷台や鉄道コンテナの内寸に無駄なく収まる点にある。海外では事情が異なり、ISO 6780には次の6種類が国際規格として並ぶ。
| 寸法(mm) | 主な使用地域 | 備考 |
|---|---|---|
| 1,200×800 | 欧州 | ユーロパレット(EPAL) |
| 1,200×1,000 | 欧州・中国 | 化学・飲料業界に多い |
| 1,219×1,016 | 北米 | 48×40インチ(GMA規格) |
| 1,140×1,140 | アジア・国際 | 海上コンテナ向け |
| 1,100×1,100 | 日本・韓国 | T11型 |
| 1,067×1,067 | 北米・欧州 | 42インチ角 |
輸出を伴う工場では、仕向地の規格に合わせて複数サイズを使い分けることが多い。国内向けはT11型、欧州向けは1,200×800mmというように区別しておかないと、現地の倉庫のラックに載らないといったトラブルが起こる。
形状と差込口による分類
構造面では、フォークの爪を差し込む方向で二方差しと四方差しに分かれる。四方差しはどの向きからでも荷役できるため、狭い通路の倉庫で重宝される。ただし、桁(けた)に切り欠きを入れる分、同じ材料なら強度は二方差しより下がる。デッキボードが上面だけにある片面形と、上下両面にある両面形の違いもある。両面形は剛性が高く、ラック保管や段積みに向く。
平パレット以外の主な形式
- ボックスパレット:側板付きで、鋳物部品やばら物の保管に使う
- ポストパレット:四隅の支柱で段積みが可能で、つぶれやすい荷に向く
- ロールボックスパレット:キャスター付きで、店舗配送やカゴ車として使われる
- シートパレット:厚さ数mmのシート状で、プッシュプル装置付きのフォークリフトで扱う
材質ごとの特徴と使い分け
木製はもっとも安価で、新品のT11型でも1枚数千円程度で手に入る。修理しやすい反面、含水率の変化で反りや割れが出やすく、釘の浮きが製品を傷つけることもある。プラスチック製はポリエチレンやポリプロピレンを射出成形したもので、価格は木製の2〜4倍になる。それでも寿命が長く洗浄もできるので、食品・医薬品工場では標準になりつつある。
鉄製やアルミ製は、エンジンブロックや金型のように1tを超える重量物で選ばれる。紙製(段ボール・ハニカム)は1枚あたり数kgと軽く、航空貨物や片道輸出で回収の手間を省く目的で使われる。現場の実感では、「回収できるか否か」が材質選定の最大の分岐点になる。社内の工程間搬送ならプラスチック、戻ってこない輸出なら木製か紙製、という判断が一般的である。
輸出時の木材検疫(ISPM No.15)
木製パレットを輸出に使う際に避けて通れないのが、国際植物防疫条約に基づく国際基準ISPM No.15である。害虫の国境移動を防ぐため、木材の中心温度を56℃以上で30分以上保つ熱処理(HT)か、臭化メチルによるくん蒸(MB)を施し、IPPCマークを刻印しなければならない。日本では木材梱包材消毒実施者として登録された事業者が処理を行う。マークのないパレットで出荷すると、相手国の港で積荷ごと返送や廃棄を命じられる場合がある。合板やパーティクルボードなど加工木材は対象外のため、検疫コストを避ける手段としてプレスウッド製を選ぶ企業も多い。
現場運用とレンタルパレット
自社で購入したパレットは、納品先から戻らず年間に数%ずつ紛失していくのが実情である。このロスを抑えるために広がったのが、レンタル会社が管理するプールパレット方式である。荷主は使った枚数と日数に応じて料金を払い、回収は事業者が担う。自動倉庫を導入する工場では、たわみ量や寸法公差の小さいプラスチック製T11型を指定することが多い。木製の反りが数mmあるだけで、スタッカークレーンの検知エラーが起きるからである。
積付けも見落とせない。ケースがパレット外周から20〜30mmはみ出すだけで、段ボールの圧縮強度は大きく下がる。輸送中の荷崩れを防ぐため、ストレッチフィルムによる包装や、柱積み・れんが積みといった積付けパターンの選択が、品質事故の削減に直結する。2024年以降はトラックドライバーの時間外労働規制を背景に手荷役の削減が求められ、T11型への統一とパレット化率の向上が業界横断の課題として改めて注目されている。
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