バンドギャップ
バンドギャップは固体物理学や半導体工学で重視される概念であり、電子が存在できるエネルギー帯域(バンド)の間に形成されるエネルギー差を指す。金属、半導体、絶縁体などの物質は、それぞれのバンド構造によって電気伝導性が大きく異なる。その中で、バンドギャップが適度な大きさを持つ半導体は、電子が自由に動く導体(金属で)と、電子がほとんど動けない絶縁体の中間に位置し、デバイス設計上の自由度が高い。半導体デバイスのオン・オフ切り替えや発光ダイオード(LED)の発光波長、太陽電池の光吸収帯域などは、このバンドギャップの大きさによって左右される。
エネルギーバンド構造の基礎
結晶内部では原子が周期的に並ぶため、電子がとりうるエネルギー準位がバンドとして形成される。これは無数の原子軌道が相互作用してエネルギー準位が離散化から連続に近い形へと分裂したものである。バンドのうち、電子が多数詰まっている部分を価電子帯(valence band)、電子が存在しうるが十分に埋まっていない上方の帯域を伝導帯(conduction band)と呼ぶ。両者の間のエネルギー的な空隙がバンドギャップにあたる。このギャップが小さいほど電子は熱や光などの影響で容易に励起され、伝導帯へ移動しやすい。
今はっ【ダイヤモンド】にはないことですっ🌟💎
っで、なぜこのよ〜にっGeやSiやダイヤモンドのよ〜な
ダイヤモンドの結晶構造が【半導体】として求められるのか
はっ、【バンドギャップ】が大きいので、熱エネルギーの中
でも【半導体】として【安定して存在できる】からですっ🌟💎っで、Geの➡️10/ pic.twitter.com/a3NkgCdZeh
— 🎼よーぐるまにあ🎻 (@yogul_mania) March 17, 2024
金属・半導体・絶縁体の違い
金属では価電子帯と伝導帯が重なっているか、もしくはバンドギャップがほぼゼロに近い。そのため、わずかなエネルギーでも多くの電子が自由に動き、電気伝導が起こる。一方、半導体は1eV前後から数eV程度のバンドギャップを持ち、常温でもある程度の電子が励起されて伝導帯へ移るため、中程度の導電性を示す。絶縁体ではバンドギャップが数eVから十数eVと非常に大きく、常温程度の熱エネルギーでは励起が困難であり、ほとんど電流を流さない。
金属
半導体
絶縁体
の違い pic.twitter.com/ST9oXyhTHv— iGamerai (@iGamerai) November 2, 2021
バンドギャップと半導体デバイス
シリコン(Si)は約1.12eV、ガリウムヒ素(GaAs)は約1.43eVのバンドギャップを持ち、従来の電子回路や光デバイスに多用されてきた。LEDやレーザーダイオードなどの光半導体では、放出される光子のエネルギーはバンドギャップに対応するため、ギャップが大きいほど波長が短い光(高い周波数)を放出する。また、太陽電池においてはバンドギャップが適切であれば太陽光を高効率に吸収して電力へ変換できる。こうした特性を応用することで、照明やディスプレイ、発電分野まで含めて幅広く半導体技術が活躍している。
【二次元材料MoS2】
✅最も重要な二次元材料の一つ
✅グラフェンと異なり、バンドギャップ1.9eVを持つため、半導体デバイスへの応用が可能
✅剥離法の他、CVD、MBEなどで合成可能なため半導体プロセスとの親和性が高い#半導体技術 pic.twitter.com/eVW4bSIvT6— ロン | 半導体系YouTuber (@Semicon_Academy) January 28, 2024
ワイドバンドギャップ半導体の登場
近年注目を集めているシリコンカーバイド(SiC)やガリウムナイトライド(GaN)などはバンドギャップが3eV以上と広い。これらは高温耐性や高耐圧性能に優れ、パワー半導体の分野で大きなブレークスルーをもたらしている。特に電気自動車(EV)や再生可能エネルギー分野、航空・宇宙開発などにおいて、エネルギーロスを低減しつつ大電力を扱う技術として期待が寄せられている。一方、ワイドバンドギャップ材料を扱うには高品質結晶成長や高温プロセスなど高度な製造技術が不可欠であり、依然として課題も多い。
電気電子工学系 西中浩之 教授、鐘ケ江一孝 助教らの研究チームは、超ワイドバンドギャップ半導体ルチル型GeO2による縦型ショットキーバリア ダイオードの開発に成功しました。
なお、詳細は下記URLからご覧ください。https://t.co/XX7irSfdrW pic.twitter.com/s6ztX1QDPJ
— 国立大学法人 京都工芸繊維大学 (@pr_kit) April 8, 2025
実験的測定方法
バンドギャップの大きさを評価するには、光吸収スペクトルからバンド端近くの吸収特性を調べる方法や、フォトルミネッセンスによって発光エネルギーを解析する手法が用いられる。また、ARPES(Angle-Resolved Photoemission Spectroscopy)などを用いて電子構造を直接測定する研究も進んでいる。バンドギャップのわずかな差異によって物性が劇的に変わることもあるため、精密な測定と理論計算を組み合わせて物質の電子構造を総合的に評価するアプローチが一般的である。
外的要因とバンドギャップの変化
温度や圧力、ドーピング濃度などの外的要因によってバンドギャップは微妙に変化する。たとえば半導体は温度が上がるとバンドギャップがやや縮小し、導電性が増す場合がある。また、大きな圧力を加えると結晶構造が変化し、バンド構造が歪むことでギャップが変形する。更に不純物を添加してフェルミ準位を制御すると、電子キャリア密度の変化に伴って物質の導電特性を大幅に変えることができる。これらの要因を狙いどおりに制御することで、半導体デバイスの特性最適化が可能になる。
バンドエンジニアリング
ヘテロ接合や量子井戸構造など、異なるバンドギャップを持つ材料を多層積層する技術を利用すれば、バンド構造を人為的に設計できる。これをバンドエンジニアリングと呼び、高効率光デバイスや超高電子移動度トランジスタ(HEMT)などの先端素子開発に欠かせない手法となっている。実際にGaAs/AlGaAsやInGaN/GaNといった複合材料系を使うと、バンドオフセットの差を利用して電子や正孔を局在化させ、発光効率や輸送特性を大きく向上させることが可能である。
強化学習により微調整された生成モデルの論文。
自己回帰トランスフォーマの事前学習モデルを強化学習で微調整することにより、予測構造の安定性が向上し、バンドギャップと誘電率がより大きな結晶構造を予測できたそうです。
最先端の材料探索って感じ。https://t.co/jftYQePRtQ pic.twitter.com/KONcDLtR0U
— 横山トモヤス|計算材料科学者 (@yoko_materialDX) April 7, 2025
今後の展望
製造技術の進歩により、原子レベルで材料を制御できる領域へと人類は踏み込みつつある。最先端の半導体デバイスではナノメートルスケールで量子効果を活かしたエレクトロニクスが進化し、バンド構造を狙い通りにコントロールする技術がますます重要となっている。さらなる省エネルギー化や超高速通信、量子コンピュータへの応用など、バンドギャップを理解し巧みに操作することで、新たな物性や機能を引き出す可能性が広がっている。未来の産業や社会インフラを支える中核技術として、バンドギャップにまつわる研究開発は今後も加速度的に進んでいくと予想される。