トルクメータ
トルクメータは回転軸や締結作業におけるトルク(ねじりモーメント)を定量化する計測器である。研究開発から生産ライン、保全に至るまで、回転機械の性能評価、効率算出、締付品質の保証に欠かせない。単位はN・mが一般的で、測定原理はひずみゲージ式、磁歪式、光学式など多様である。用途に応じて反力式(静的)と回転式(動的)に大別され、選定時は測定範囲、回転数、精度、剛性、温度環境、保護等級などを総合的に検討する。
原理と分類
トルクメータの中核は、軸に生じるせん断応力からトルクを推定する変換部である。ひずみゲージ式は弾性体にブリッジ回路を構成して微小ひずみを電圧に変換し、磁歪式は磁気特性の変化を検知、光学式は格子や干渉でねじれ角を読み取る。反力式は固定フランジに生じる反力を検出し、回転式は回転軸上の信号をスリップリングやテレメトリで伝送する。動的試験では回転振動や共振を避けるため固有振動数と測定帯域の整合が重要である。
測定単位と基礎式
トルクTは力Fと半径rの積T=F・rで表される。回転機の出力Pとの関係はP=2πNT(Nは回転数[rev/s])であり、実務ではP[kW]=9.55×10−3・T[N・m]・n[rpm]が便利である。したがって出力評価や効率η=Pout/Pinの算定にトルクメータは直結する。基礎概念はトルクやモーメントの項に通じる。
構造と主要部品
トルクメータは弾性体(測定軸)、変換素子、信号伝送部、ハウジング、入出力のカップリングで構成される。回転式ではベアリング支持や電源・信号の無線伝送が鍵となり、偏心・芯ずれを吸収するカップリング選定が重要である。周辺機器にはエンコーダ、回転数ピックアップ、増幅器、A/Dがある。機械要素としてはベアリング、歯車、潤滑、シールの設計が信頼性を左右する。
選定と仕様の要点
- 測定範囲:最大トルクの120〜150%をカバーし、過負荷許容(過トルク保護)を確認する。
- 精度:非直線性、ヒステリシス、再現性、ゼロドリフトを総合した総合誤差を参照する。
- 回転性能:定格回転数、慣性モーメント、ねじり剛性、共振周波数を用途に適合させる。
- 環境:温度係数、保護等級(IP)、耐油・耐塵、電磁ノイズ耐性を確認する。
- 電気仕様:出力形態(mV/V、V、mA、デジタル)、サンプリング周波数、帯域幅。
- 機械インタフェース:フランジ寸法、キー溝、ねじ寸法、締付トルク規定(ねじ・ボルト)を整合。
設置・配線上の注意
トルクメータの据付では軸心合わせ(ミスアライメント低減)が最優先である。偏心は横荷重や曲げを誘発し、指示誤差と軸寿命低下を招く。回転式は接地とシールドを適切化し、ケーブルのループや高周波ノイズの回り込みを抑止する。ガードと非常停止を設け、安全距離を確保することが望ましい。
校正方法と不確かさ
標準的な校正はデッドウェイト(既知の質量)とレバーにより既知トルクを与える方法である。てこ長の幾何学的不確かさ、質量の校正値、重力加速度、温度ドリフト、読み取り分解能を合成して拡張不確かさを評価する。回転式ではゼロ点の熱ドリフト、スパンの温度係数、帯域制限、振動重畳の影響を確認する。校正点は全面レンジに分散させ、上昇・下降の双方向でヒステリシスを点検する。
締結管理への応用
トルクメータはねじ締結における締付トルクの検証にも用いられる。トルク—軸力の関係は座面・ねじ面の摩擦係数に左右され、同一トルクでも軸力が変動するため、ボルトの軸力管理や回転角法の併用が有効である。基礎事項はボルトやねじの項が参考になる。
ねじ締結の実務ポイント
- 潤滑状態や表面粗さを管理し、摩擦係数のばらつきを低減する(関連:潤滑)。
- 材料の降伏を避けるため、許容軸力と許容トルクを事前に算定する。
- 締付手順と規定トルクのトレーサビリティを確立する。
回転機の評価と効率測定
トルクメータと回転数計を併用すればモーターやポンプ、ファンの出力・効率を高精度に評価できる。負荷試験ではトルクリップル、起動トルク、定格運転時の温度上昇や振動も同時計測し、機械損と電気損の切り分けを行う。ギヤトレインでは歯面損失やねじり剛性が伝達効率に影響する(関連:歯車)。
よくある不具合と対策
- ゼロ点ドリフト:温度安定化、充分なウォームアップ、ゼロリセットの手順化。
- ノイズ混入:トランスデューサのシールド強化、接地一点化、ケーブル分離。
- 機械的過負荷:過トルクリミッタ、ソフトスタート、トルク制限の設定。
- 偏心・芯ずれ:高弾性カップリング採用、精密芯出し、取付面の平面度改善。
関連規格と試験
トルクメータの選定・校正・運用では、機械計測一般のJIS/ISO、締付試験(例:ボルトのトルク—軸力評価)、電磁適合性、環境試験(温度・振動)を参照する。品質管理では不確かさに基づく校正証明、点検周期、ドリフト監視の仕組みを整え、試験結果のトレーサビリティを確保することが望ましい。