ジョークラッシャ
ジョークラッシャは、固定顎板と可動顎板のあいだで岩石や鉱石を圧縮破砕する一次破砕機である。偏心軸とトグル機構によって可動顎が往復し、材料は上部から投入され、破砕室内で繰り返し圧砕・摩砕されながら下方の開口(セット)から排出される。堅牢で保守が容易、湿潤・硬質な原料にも適応し、砕石・骨材・選鉱のフロントエンドに広く用いられる。
構造と作動原理
主要構成は固定顎板、可動顎板、ピットマン、偏心軸、トグルプレート、フレーム、フライホイール、ベアリングから成る。偏心軸の回転がピットマンとトグルを介して可動顎の楕円運動を生み、上部では咥え込み(ニップ)下部では解放を繰り返すことで破砕と排出が進行する。破砕室は上広がりのV字で、開口寸法とセットが粒度と能力を規定する。
主要仕様と選定指標
- 給鉱粒度(F80)と目標排出粒度(P80)、想定破砕比
- 開口寸法(幅×奥行)、設定開度(C.S.S.)、回転数、ストローク
- 処理能力(t/h)、モータ出力、トルク余裕、フライホイール慣性
- ライナ材質(高マンガン鋼など)と耐摩耗性、交換容易性
選定では原料の硬さ・研磨性、含水・微粒分の割合、供給の均一性を重視する。上流・下流設備(ホッパ、フィーダ、スクリーン、コンベヤ)とのバランス設計が安定運転の鍵となる。
型式の比較と用途適合
- シングルトグル:構造が簡潔で軽量、高回転・大ストロークで一般骨材に適する。
- ダブルトグル:咬み込み力が大きく、極めて硬質・大塊原料に強みをもつ。
- 可搬式(モバイル):履帯・タイヤ台車に搭載し、現場近接で一次破砕を行う。
骨材プラントでは一次にジョークラッシャ、二次以降にコーンクラッシャやインパクトクラッシャを組み合わせる構成が一般的である。
性能に影響する設計因子
ニップ角は一般に約18〜24°で、過大であれば滑り・詰まり、過小であれば咥え込み不良を招く。ストロークと回転数の組合せは破砕機内の物質滞留と粒度形状に直結する。ライナプロファイル(波形・鋸歯形)やチークプレートの形状は摩耗進行と製品曲線を左右し、高マンガン鋼は加工硬化により寿命を伸ばす。
運転・保守の要点
- 給鉱は均一・連続とし、過大塊はブレーカで前処理する。過剰な微粒分はスクリーンでバイパスし、摩耗と目詰まりを低減する。
- セット調整はシムまたは油圧装置で行い、製品粒度・能力の目標に合わせて定期管理する。
- ベアリング潤滑、トグル座面、ライナ締結ボルトを点検し、熱・異音・振動の兆候を監視する。
- トグルプレートは過負荷時の安全装置として作用し、破損で機体を保護する。
ライナは片減りを避けるため対で交換し、締結トルクは規定値を厳守する。再締結時は座面清掃と座金管理が重要である。
プロセス統合と粒度制御
前段のグリズリで微粒を抜くと有効破砕長が生き、能力が向上する。後段スクリーンで過大粒を環流させれば閉回路が成立し、製品粒度のばらつきが縮小する。フィーダの速度制御はチョーキングと空運転の双方を抑え、電力原単位(kWh/t)の低減に寄与する。
適用限界と材料適合
粘土質や粘着性の高い原料は橋架け(ブリッジ)やベッディングを誘発するため、水噴霧・熱風乾燥・前処理で流動性を確保する。強研磨性原料ではライナ材とプロファイルの選択が寿命を左右する。板状・片理のある岩石では破砕面が偏りやすく、二次での整粒を見込む。
安全・環境対策
投入口・ベルト移行部のカバー、非常停止、ロックアウト/タグアウトの手順を徹底する。粉じんはエンクロージャと集じんで抑制し、騒音は防音壁・ライナ背面への制振材で低減する。金属異物はマグネットで除去し、詰まり除去は必ず停止・エネルギー隔離後に行う。
用語補遺
- ニップ角:原料を咥え込む角度。過大で滑り、過小でかみ込み不良となる。
- セット(C.S.S.):下部開口の最小間隙。製品粒度を支配する。
- トグルプレート:運動変換と過負荷保護を担う犠牲部材。
- ピットマン:偏心運動を受けて可動顎を揺動させる連接体。
- チークプレート:側壁保護板。ライナとともに摩耗部を構成する。
- フライホイール:回転エネルギーを平滑化し、瞬時負荷を吸収する。
これらの概念理解はジョークラッシャの設計・運転・診断の共通基盤であり、粒度制御、エネルギー効率、ライフサイクルコスト最適化に直結する。