ケーブルダクト
ケーブルダクトとは、電力・通信・制御などの電線やケーブルを機械的に保護し、配線経路を整えるための収納路である。建築物の床下・天井裏・壁内や、工場・プラントの設備間、制御盤や配電盤の内部など、配線密度が高い場所で用いられる。ケーブルの曲げ半径や放熱、点検性を確保しつつ、落下物・踏圧・摩耗・薬液・粉じんから保護するのが主目的である。配線を見える化することで保全作業の迅速化と誤配線の抑止にも寄与する。
種類(形状と敷設方式)
- 床下・埋設型:フロアダクトやピット内に敷設し、OAフロアのアウトレットに接続する方式である。
- 天井懸架・露出型:金属ダクトを梁下に吊り、分岐部で取出し口を設ける。点検性に優れる。
- 壁内・モール型:樹脂成形の細径ダクトで室内配線を意匠的に収める。後施工に適する。
- 盤内用スリットダクト:制御盤で配線束を整理するためのスリット入り樹脂ダクトである。
材料と構造
材料は鋼板(溶融亜鉛めっき)、ステンレス、アルミニウム、難燃性PVCなどが一般的である。機械的強度・耐食性・質量・施工性のバランスで選定する。カバー付き密閉型は防塵・防滴性に優れ、スリット型は引き回しや結束作業が容易である。腐食環境ではステンレスや耐薬品性樹脂を選ぶ。アース用ラグを設け、ダクト相互や盤筐体との電気的連続性を確保する。
規格・サイズ選定
許容占積率(断面の充填率)を指標に、将来の増設余裕を見込んで内寸を決める。ケーブル外径の合計×1.3〜1.5倍を目安とし、曲げ半径はケーブル仕様(例:外径の6〜10倍)を下回らないようにルートを計画する。長手方向の熱伸縮や沈下にも配慮し、伸縮継手や可とう継手を要所に配置する。
設計・施工の要点
- ルーティング:高圧動力と弱電は離隔し、交差は直角とする。熱源・振動源から距離を取る。
- 支持間隔:ダクト剛性・積載質量に応じてスパンを設定する。長スパンでは補剛を併用する。
- 接地:金属ダクトは多点接地を基本とし、塗装部は導通を確保する。
- 識別:系統ごとに色帯・マーキング・系統票を付し、保全識別を容易にする。
耐環境性と保護等級
屋外や粉じん・油ミスト環境では密閉型ダクトを選び、必要に応じてパッキンでシールしてIP等級を満たす。化学薬品雰囲気では樹脂材質の耐薬品表を参照し、腐食に強い材質を採る。高温域では放熱孔付きや断熱スペーサで熱溜まりを防止する。
EMC(電磁適合性)
ノイズ源(インバータ・大電流回路)と信号線は経路分離し、金属ダクトをシールド経路として活用する。導通の良い接続でダクト全体を等電位化し、入出力取出し部にはフェライトやシールドクランプを併用する。必要に応じてツイストペアやシールド線を併用する。
関連部材(グランド・ラグ・仕切り)
ダクトへのケーブル導入部はケーブルの損傷防止と気密・防塵の観点からケーブルグランドやグロメットを用いる。盤内ではスリットダクト用の仕切板や番線ホルダを適所に配し、結束は耐熱結束バンドを使用する。接地のためにケーブルラグを介した確実な圧着端子接続を行う。
他配線方式との違い
- ケーブルトレー:開放型で放熱・目視点検に優れるが、防塵性は劣る。
- コンジット(電線管):耐機械性・防水性に優れるが、引替え・増設性は限定される。
- ダクト:経路の整理性・分岐の柔軟性に優れ、設備内配線の標準解である。
適用分野と実装例
オフィスのOA配線、データセンターのラック間、工場の生産ライン、ビルの受変電室から階配電盤、FA制御盤内部など幅広い。通信系ではLANケーブルや同軸ケーブル、電力系では動力・照明系統を分離して収める。機器側はケーブルグランドで端末保護し、幹線側は電線仕様に適合させる。
安全・保全
開口部のエッジは面取りし、保護ブッシュで被覆を守る。重積載区間では架台強度を再計算し、ケーブル交換時の引張荷重にも耐える固定方式を採る。定期点検ではカバー開閉、結束の緩み、導通(接地抵抗)、粉じん堆積の清掃を実施する。改造時は占積率と曲げ半径を再評価し、無理な増し配線を避ける。
関連知識へのリンク
- 配線:系統設計と離隔・識別の基礎。
- シールド線:ノイズ抑制とEMC対策。
- LANケーブル:情報配線のカテゴリーと性能。
- 同軸ケーブル:高周波伝送路の基礎。
- 電線:導体・絶縁体・許容電流の基礎。
- ケーブルラグ:端末処理と接地。
- ケーブルグランド:導入口のシールと引張防止。
用語の補足
ダクトレースウェイ:ダクトを用いた配線経路全体を指す一般語である。占積率:ダクト内断面に対するケーブル断面の割合で、発熱・施工性・将来余裕の観点から上限を設定する。等電位化:金属部材間の電位差を低減し、ノイズや感電リスクを抑える設計概念である。
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