カムシャフト研削盤|カムロブとジャーナルを高精度研削

カムシャフト研削盤

カムシャフト研削盤は、内燃機関のカムシャフトに配置されたローブおよびジャーナル外周を高精度に研削し、指令通りの非円形プロファイルと面粗さを実現する工作機械である。カムリフトや位相は燃焼効率・出力・排出特性に直結するため、形状偏差は数μmオーダ、面粗さはRa0.2μm級が要求される。近年はビトリファイドCBN砥石と高剛性スピンドル、リニアモータ駆動、CNCの同期補間により、短サイクルと安定精度を両立する量産用ラインの中核装置として用いられる。

構造と基本原理

カムシャフト研削盤は、ワークヘッド(主軸・センタ支持・定心台)、砥石スピンドル、X/Z送り軸、ドレッシング機構、冷却系、計測系で構成される。非円形プロファイルの生成は、ワーク回転角と砥石相対位置をCNCで厳密同期させる「電子カム」制御が基本である。ワーク角度検出には高分解能エncoderを用い、X軸はプロファイル従動、Z軸はローブ幅・肩部端面の位置決めを担う。スピンドルは空圧静圧や高剛性アンギュラ玉軸受を採用し、熱変位抑制のため冷却・温調を行う。

プロファイル生成法

プロファイルは数式定義(多項式、サイクロイド、修正正弦など)または点列テーブルから生成される。CNCはワーク回転角θごとの目標半径r(θ)を内挿し、X軸をフィードフォワード+フィードバックで追従させる。過去に用いられたマスターカム機械式従動方式に比べ、デジタル補間は補正・最適化が容易で、ローブごとの微小補正、熱・弾性変形のモデル補償、ドレス後の径補正を即時反映できる。

加工工程と段取り

  • 供給・チャッキング:ローダ/ロボットで搬送し、センタ穴精度・曲がりを確認して基準角を合せる。
  • 荒研削:ジャーナル外径やローブ近傍を高切込で加工し、熱発生を抑えるため高流量クーラントを使用する。
  • 仕上研削:微小切込みで形状偏差・面粗さを追い込み、ローブごとに位相・リフトを検証する。
  • ドレッシング:成形ロールまたはロータリードレッサでCBN砥石を整形・目立てし、砥石有効径を管理する。

砥石とドレッシング

ローブの硬化層(焼入鋼・鋳鉄 chilled 層等)にはビトリファイドCBN砥石が標準である。粒度は#80〜#170程度を基点に要求粗さで選定し、結合度・集中度で切れ味と寿命を調整する。成形精度はドレッサの真円度・芯出しと同期制御の精度に依存するため、ドレスはインプロセスで頻繁に行い、砥石有効径の変化をCNC補正量に反映することが重要である。

精度指標と計測

形状偏差(プロファイル誤差)、位相誤差、ローブ間相対位相、ジャーナル真円度・同軸度、面粗さが主要指標である。インプロセスゲージで径変動を監視し、ローブ形状は後工程のプロファイル測定機で評価する。熱ドリフトは最大の外乱であるため、機内温調、クーラント温度安定化、機上測定による補正ループを組み込み、長時間の連続稼働でも数μmの安定性を確保する。

自動化・ライン統合

カムシャフト研削盤はタンデム配置やパレット循環、AGV/AMR搬送と統合され、上流の熱処理・ショットピーニング、下流の超仕上・洗浄・最終検査と直結される。型替えは治具・ソフトのプリセット化で短縮し、MESと連携して個体トレーサビリティ、補正履歴、砥石寿命を一元管理する。スループットはローブ数・ドレス頻度・除去量に依存し、理想化よりクーラント清浄度や砥石再生時間が律速になりやすい。

適用材料と熱処理

素材は浸炭焼入れ鋼、誘導焼入れ鋼、パーライト鋳鉄、チルド鋳鉄などが用いられる。CBNは焼入鋼に高能率で、熱損傷(研削焼け)を抑えるため適正な周速・切込み・クーラント噴射(的中噴流)を選ぶ。組立式カムシャフトではローブ圧入後の位相維持と微小振れが課題であり、支持点配置と研削反力の最適化が必要となる。

トラブルシューティングと保全

  • 焼け・白層:周速過大やクーラント不足、砥石目詰まりが原因。ドレス頻度増加、ノズル再設計、熱量収支の見直しで対策する。
  • びびり痕:機械剛性・固有値と切削条件の組合せ不良。砥石径・周速・切込みの最適化、スピンドルバランス修正で抑制する。
  • 寸法ばらつき:温度変動・砥石摩耗・芯出し偏差。機上計測のフィードバックと自動補正、基礎温調で安定化する。
  • 油泥・濾過:CBN運用では微細スラッジが問題で、磁性分離+紙フィルタ+サイクロンの多段濾過が有効である。

安全・環境対応

研削火花・ノイズ・ミスト対策として全周カバー、二重インタロック、ミストコレクタ、静音化設計を施す。クーラントは生分解性や長寿命化添加剤の採用で廃液量を低減し、スラッジの適正処理と熱交換器の定期洗浄で省エネと安定稼働を両立する。オペレータ教育では段取り時の指差し確認、砥石取り扱い基準、起動前の振れ計測を徹底する。