オームの法則|電圧・電流・抵抗の基本式

オームの法則

オームの法則は、金属導体などの線形素子において電圧V、電流I、抵抗Rの関係をV=IRで与える基本法則である。1Ωは1Aの電流を流すのに1Vを要する大きさであり、単位対応は1Ω=1V/Aである。直流でも交流の各瞬時値でも成り立つが、周波数依存のない純抵抗での近似が前提である。解析では電源・負荷の関係を単純化し、設計値の見積り、発熱予測、計測器の校正など広範に用いられる。

定義と数式

定義はV=IRである。Vは両端電圧、Iは流れる電流、Rは等価抵抗である。比例係数Rが一定である範囲で線形が成立する。I–Vグラフでは原点を通る直線の傾きが1/Rであり、逆にV/IからRが求まる。電源内部抵抗や配線抵抗を含めれば等価回路で表せ、合成後に同式を適用できる。なお、「Ohm’s law」という表記では英字は半角で記す。

単位と換算

電圧の単位はボルト(V)、電流はアンペア(A)、抵抗はオーム(Ω)である。派生単位としてmA、kΩ、MΩなどが頻用され、10進換算を確実に行うことが重要である。例えば5.0Vで2.5kΩならI=5.0/2500≈2mAである。電力はP=VI=I^2R=V^2/Rで求まり、回路の発熱や許容電力の確認に直結する。

抵抗の幾何学と材料

体積抵抗率ρ[Ω·m]と長さL、断面積Aの関係はR=ρL/Aである。金属は温度上昇で抵抗が増加する(温度係数α>0)のが一般的である。合金や半導体、カーボン系は温度特性が異なるため、精密用途では温度範囲を明記する。導体・絶縁体・半導体の区別や素材選定は回路の安定性に影響する。

直列・並列回路での適用

直列接続では合成抵抗はR_total=R1+R2+…であり、並列接続では1/R_total=1/R1+1/R2+…となる。これにより分圧・分流を設計できる。例えば12V電源、4Ωと8Ωの直列では電流I=12/(4+8)=1A、各端子電圧は4Vと8Vである。並列なら等価抵抗は(4×8)/(4+8)=2.67Ω、電源からの電流は約4.5Aとなる。

電力と発熱の見積り

抵抗体の発熱はジュール熱であり、P=I^2Rで増加する。例として12Vと4ΩならI=3A、P=36Wである。抵抗器は許容電力(例:0.25W、0.5W、1W…)が定格化され、周囲温度によってデレーティングが必要である。ヒートシンクや実装の熱抵抗も合わせて評価する。

微視的な記述と導出の直観

連続体モデルでは電場Eと電流密度JがJ=σE(σは導電率)で結ばれ、巨視的にはV=IRに対応する。σの逆数が抵抗率ρである。散乱時間やキャリア密度が一定の範囲で線形が保たれ、温度や強電場で非線形に移行することがある。これがオームの法則の適用限界の物理的背景である。

適用範囲と限界

ダイオードやLED、ツェナー素子、フィラメント、電解液などはI–V特性が非線形であり、厳密なV=IRは成立しない。高周波領域ではインダクタンスやキャパシタンスの寄生成分が支配的となる。接触抵抗、温度上昇、自己加熱によるRの変動も実務では無視できない。これらは周波数領域解析や小信号線形化で扱う。

測定と実務のコツ

実測では4端子法(ケルビン接続)でリード線抵抗の影響を除去する。I–V測定からRを傾きとして推定し、近似直線の決定係数を確認する。電源内部抵抗は等価直列源で表し、負荷線で動作点を読む。多点測定、温調、校正された計器の使用が信頼性を高める。

設計例とチェックリスト

  • 分圧器: R1とR2でV_out=V_in·R2/(R1+R2)。入力インピーダンスと負荷効果を考慮。
  • 電流制限: LEDに直列抵抗R=(V_s−V_f)/I。温度でV_fが変動するためマージンを確保。
  • シャント: 小抵抗で電流検出、P=I^2Rと自己発熱に注意。
  • トラブル時: 過電流→抵抗焼損、過電圧→絶縁破壊の順で点検。

回路法則との関係

回路網解析ではオームの法則をキルヒホッフの法則と組み合わせて用いる。節点解析(ノード法)やメッシュ解析で未知数を立式し、線形代数で解く。時定数の評価ではRとC、RとLの組合せが基本となる。エネルギー評価ではジュールの法則とP=VIの併用が有効である。

歴史的背景

ゲオルク・ジーモン・オームが19世紀に体系化し、その名を冠した。初期は実験精度の限界から議論もあったが、標準電気計測の発達により普遍性が確認された。単位系の整備とともにV、A、Ωが定着した。

用語と記号の整理

  1. V(電圧)、I(電流)、R(抵抗)、P(電力)の記号は国際的に通用する。
  2. Rの温度係数はα[1/K]で近似R(T)=R_0{1+α(T−T_0)}。
  3. 等価抵抗は負荷点から見た見かけの抵抗である。