高炉|鉄鉱石を還元し銑鉄を生む巨大炉

高炉

高炉は、鉄鉱石をコークスで還元・溶融し、銑鉄を連続的に取り出す竪型の製錬炉である。溶鉱炉とも呼ばれる。大型のものは基礎から炉頂までの高さが100mを超える。一度火を入れると十数年にわたり、昼夜を問わず操業が続く。得られた銑鉄は転炉で余分な炭素を取り除かれ、鋼となって自動車、建築、造船などの分野に出荷される。日本の粗鋼生産のおよそ7割以上が、この高炉・転炉ルートで作られている。

木炭からコークスへ――高炉の歩み

竪型の炉で鉄を溶かす技術は、14世紀頃のヨーロッパで広まった。当初の燃料は木炭である。森林資源の枯渇が深刻になった英国では、1709年にエイブラハム・ダービーがコークスによる製銑に成功し、大量生産への道が開かれた。1828年にはニールソンが送風を予熱する熱風送風を考案した。1857年にカウパーが蓄熱式の熱風炉を発明すると、燃料の消費量は大きく減った。同じ1857年(安政4年)の12月1日、日本では大島高任が釜石・大橋の洋式炉で出銑に成功している。この日は現在「鉄の記念日」とされる。近代的な銑鋼一貫製鉄の始まりは、1901年に火入れされた官営八幡製鐵所の東田第一高炉である。

炉体の構造

炉体の周囲、朝顔の上部には羽口(はぐち)が30~40本並び、1,100~1,300℃に加熱された熱風を炉内へ吹き込む。内壁は耐火れんがで覆われ、溶けた鉄に触れる炉床部にはカーボンれんがを使うことが多い。耐火物を守るため、外側には銅製や鋳鉄製のステーブクーラーを並べ、水冷で炉体温度を管理する。現場の運転員が日々気にかけているのは、このステーブの冷却水温度の変化である。炉内の異常は最初にここへ現れるためである。上から順に見ると、炉体は次の5つに分けられる。

  • 炉口:原料を入れる最上部。ベル式やベルレス式の装入装置が載る
  • シャフト:下へ向かって広がる円錐部。装入物が降りながら予熱・還元される
  • 炉腹:炉内で最も直径が大きい円筒部
  • 朝顔:下へ向かってすぼまる部分。鉱石の軟化と融着が進む
  • 炉床:溶けた銑鉄とスラグがたまる底部。出銑口が設けられる

炉内で起こる還元反応

羽口の前では、コークスが熱風中の酸素と燃えて2,000℃を超える燃焼空間ができる。この空間はレースウェイと呼ばれる。燃焼で生じたCOガスは炉内を上昇しながら、鉱石中の酸化鉄から酸素を奪っていく。ヘマタイト(Fe2O3)の還元はマグネタイト、ウスタイトを経て段階的に進み、全体としては次の式で表せる。

Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2

間接還元と直接還元

COガスによる還元を間接還元という。これに対し、炉下部の高温域で固体の炭素が直接関わる反応(FeO + C → Fe + CO)を直接還元と呼ぶ。直接還元は大きな熱を吸収するため、その割合を下げるほど燃料を節約できる。炉頂から入った原料が炉床に届くまでは6~8時間ほどかかる。取り出される溶銑の温度は約1,500℃、炭素濃度は4.5%前後になる。

装入原料と還元材

炉頂からは、鉄源となる鉱石類とコークスが交互に層状に装入される。日本の高炉では、粉状の鉱石を焼き固めた焼結鉱が鉱石類の7~8割を占める。主な原料とその働きは次のとおりである。

原料 主な役割 特徴
焼結鉱 主要な鉄源 粉鉱石に石灰石などを混ぜて焼成。還元されやすい
ペレット 鉄源 微粉鉱を粒径10~15mmの球状に焼成したもの
塊鉱石 鉄源 粒度をそろえた天然鉱石。前処理コストが低い
コークス 還元材・熱源・通気の確保 石炭を約1,000~1,300℃で乾留して製造
石灰石 造滓材 鉱石中の脈石成分をスラグとして分離する

銑鉄1tあたりの還元材使用量を還元材比という。国内の大型炉ではおおむね490~520kg程度である。羽口から微粉炭を吹き込むPCI(微粉炭吹込み)を使えば、高価なコークスの一部を安価な一般炭に置き換えられる。ただし、コークスは鉱石層のあいだでガスや溶融物の通り道を支える骨格の役目も果たしている。強度が足りないと炉内の圧力損失が増え、操業はすぐに不安定になる。原料炭の銘柄配合は製鉄所ごとに異なるノウハウであり、調達コストを大きく左右する。

大型化と炉寿命

戦後の日本は、臨海部に製鉄所を建てながら高炉の大型化を進めた。1970年代には内容積5,000m³級の炉が現れる。日本製鉄大分製鉄所の第2高炉は内容積5,775m³で、世界最大級として知られる。この規模になると、出銑量は1日1万tを超える。炉頂圧を0.2~0.3MPa程度に保つ高圧操業や、炉頂ガスの圧力で発電する炉頂圧発電が広まったのもこの時期である。一代の炉寿命は15~20年が目安で、耐火物が傷むと吹き止めて改修する。改修では、旧炉体を大きなブロックに分けて丸ごと入れ替える工法が主流になり、工期を数か月に縮めた例も多い。

電気炉との比較

鉄をつくるもう一つの代表的な方法が電気炉である。電気炉は鉄スクラップをアーク熱で溶かすため、鉱石を還元する工程がいらない。両者の違いを整理すると次のようになる。

項目 高炉・転炉法 電気炉法
主原料 鉄鉱石、コークス 鉄スクラップ、還元鉄
CO2排出量(粗鋼1tあたり) 約2t 約0.4~0.5t
設備規模 巨大な一貫製鉄所が必要 比較的小規模で建設できる
得意な製品 高級薄板、自動車用鋼板 棒鋼、形鋼などの建材
生産量の調整 連続操業が前提で止めにくい 停止・再開が比較的容易

製品品質から見た使い分け

鉱石からつくる鉄は不純物が少ない。そのため深絞り加工に使う冷延鋼板や、モーターの鉄心となる電磁鋼板に向いている。スクラップに混じる銅やスズはトランプエレメントと呼ばれ、製鋼工程で取り除くことが難しい。自動車外板のように成形性が厳しく問われる鋼材を買う場合、購買側がミルシートで成分値を確かめ、製造ルートまで指定することもある。

脱炭素への取り組み

鉄鋼業は日本の産業部門で最大のCO2排出源である。その多くは、高炉で炭素を還元材に使うことから生じる。国家プロジェクト「COURSE50」は2008年度に始まった。コークス炉ガスに含まれる水素を還元材として使う技術と、高炉ガスからCO2を分離・回収する技術を組み合わせ、製鉄所の排出量を約30%減らすことを目標としている。君津地区には内容積12m³の試験高炉がつくられ、水素還元の実証試験が行われた。大手鉄鋼メーカーの中には、一部の高炉を大型電気炉へ置き換える計画を発表した企業もある。

副産物の利用

銑鉄1tをつくると、およそ300kgの高炉スラグが発生する。溶けたスラグに水を吹き付けて急冷すると、ガラス質の水砕スラグになる。これを微粉砕してセメントに混ぜたものが高炉セメントで、JIS R 5211に規定されている。スラグの混合率によってA種・B種・C種に分かれ、土木工事ではB種がよく使われる。ゆっくり冷やした徐冷スラグは、道路の路盤材やコンクリート用骨材になる。炉頂から出る高炉ガスは発熱量が約3,300kJ/m³と低いものの、量が多い。熱風炉の燃料や所内の自家発電に使われ、製鉄所全体のエネルギー収支を支えている。

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