電食
電食は、金属間の電位差や外来電流により局所的な電池作用が生じ、陽極側の金属が優先的に溶解する腐食現象である。一般に「ガルバニック腐食」や「迷走電流腐食」とも呼ばれ、配管継手、熱交換器、海洋構造物、埋設配管、電鉄近傍の鋼構造などで問題化する。腐食速度は電位差、電解質の導電率、温度、酸素濃度、面積比、流速などに依存し、設計と保全の両面で体系的管理が必要である。
定義と発生メカニズム
電食の基本は微小な「腐食電池」の成立である。異なる金属(例:鋼と銅)が導電性の電解質(水、湿膜、土壌水分)を介し電気的に接続されると、電位の卑な金属が陽極となり溶解し、貴な金属が陰極として保護される。陽極反応は金属の溶解、陰極反応は主に酸素還元や水素発生で進行する。外部からの直流(DC)迷走電流や電位勾配が加わる場合、自然電位差由来のガルバニック作用よりも大きな腐食が誘起されうる。
異種金属接触と電位差
異種金属接触による電食では、材料組み合わせの電位差と面積比が実務上の鍵である。電位差が大きいほど腐食駆動力は増し、さらに「小さな陽極×大きな陰極」の面積比は陽極側の電流密度を著しく高め、短期間で穿孔に至る危険がある。設計段階でガルバニックシリーズ(各金属の腐食電位序列)を参照し、近接配置や直接接触を避けることが推奨される。
以前にも言ったんですですがこの現象は電食の可能性もあります。
電食とは正規回路から外れた電流によって生じる腐食のこと。
異種金属接触腐食とは水などが接触した場合金属間の電位差によっておこる腐食のこと。 https://t.co/WkyBMrQmz8— MINORI設計-🌲 (@MINORI_sekkei) May 13, 2026
ガルバニックシリーズの概念
海水中など代表環境で測定した電位序列をガルバニックシリーズという。マグネシウム、亜鉛、アルミニウム合金は卑で、銅、ニッケル、チタンは貴に位置づく。同一材料でも合金成分や熱処理、表面皮膜の状態で実効電位は変化し、局部電池を形成して電食を助長することがある。
金塊のような亜鉛板も1年たつとこのように流線型に溶けます。タンカー船のバウスラスターの船体保護亜鉛。水流の多いところほど電食で溶けやすい。無いとこのトンネルに穴が開いてしまうのです。 pic.twitter.com/fEMArTvyXX
— 東幸海運🚢✨タンカーの船会社 (@tokokaiun) April 11, 2023
電解質環境の影響
電解質の導電率が高いほど電食は進みやすい。塩化物イオンは受動皮膜を破壊し点食を促進するため、海水、融雪剤、汗などは危険度が高い。温度上昇は反応速度を増し、流速は酸素供給やスケールの剥離に影響する。pHは反応の律速や皮膜安定性を左右し、酸性側で溶解が促進されやすい。
よくある勘違い。犠牲管がなくても船のパイプを全部ステンレスにしたら海水で腐食しないと思われる。でも、そうするとステンレスの機器やバルブが電食しかねない。ステンレスは造水機のようにチタンのパーツにはイオン化傾向で負けて溶ける。大事なところに穴が開かないようにするための犠牲管です。 pic.twitter.com/k2vlG5Mq6r
— 東幸海運🚢✨タンカーの船会社 (@tokokaiun) July 24, 2025
差別曝露(通気差)電池
同一金属でも酸素濃淡や湿潤の差で電位差が生じる。隙間、ガスケット下面、堆積物下では酸素が枯渇し陽極化して電食が局所進行しやすい。これは異種金属が無くても起こる典型的な局部腐食機構である。
設計・材料選定の指針
- 同種材の連続性を優先し、やむを得ない異材接続には絶縁スリーブ・絶縁ガスケットを介在させ電食の電気回路を断つ。
- ガルバニックシリーズで近接する組み合わせを選ぶ。特に小面積部材(ボルト、薄板)を卑側に置かない。
- 塗装・被覆は陽極側を重点的に。陰極側のみの被覆は返って陽極電流密度を増すことがある。
- 犠牲陽極(亜鉛、アルミ、マグネシウム)や外部電源方式のカソード防食を適用し電食を抑制する。
- 金属接触部は水たまりや塩分堆積を避ける形状とし、排水・通気を確保する。
アルミと鉄くらいの電位差で、簡単に電食は起こるから、金具類は鉄なんだろうなぁ。 https://t.co/hw9bW6i7tI
— 神村真(宅地防災・地盤・工学博士・技術士) (@makoto_kamimura) March 30, 2021
面積効果と局部腐食
陰極面積が大きく陽極面積が小さいほど、陽極の単位面積当たり電流が増し電食が急速化する。特に銅配管と鋼製継手、ステンレスと炭素鋼の小物部などは要注意である。
配管・設備での事例
給水・冷却水ラインでは、銅合金チューブと鋼製管台の接触、温度差と塩分の影響が重なり電食が発生する。ボイラ補機や海水取水設備では塩化物、流速、気泡混入が複合して局部腐食を加速する。埋設配管では土壌抵抗率の分布や土壌化学が電位差を生み、塗覆装の欠陥部から穿孔が起こる。
電食について説明する必要があるのですが、海水こと食塩水と船の電気が加わると金属のイオン化傾向の高い部分から電気分解が生じます。鉄とアルミニウムが同じ電気が流れるところにあればアルミニウムから解けていく作用が発生します。船体であれば亜鉛板を取り付けておけばそこからどんどん溶けます。 pic.twitter.com/zmVxSxbSq0
— 東幸海運🚢✨タンカーの船会社 (@tokokaiun) April 8, 2023
電食と迷走電流
電鉄や直流送電の近傍では、レール・地中への漏れ電流が構造物に流入・流出し、流出点で激しい電食が起こる。排流器、排流線、絶縁継手の設置や、外部電源式カソード防食の適正制御により電位を管理することが重要である。
迷走電流が大地を通って変電所に帰る場合に電食が発生するので、大地を通らずに強制的にレールに戻してあげる選択排流器というものを設置したなどの対策がとられます。
とりあえず迷走電流に関するリクエストがあったので書いてみましたな、こんな感じでいかがでしょうか??(終) pic.twitter.com/fIAnnLKMaR— 電気男@電験アカデミア (@hiro_yaen) August 29, 2021
評価・試験法
開回路電位測定、分極曲線、交流インピーダンス法(EIS)、ライナープローブ、腐食クーポンが用いられる。埋設配管では参照電極に対する構造物電位を測り、保護基準内(例:−0.85V vs Cu/CuSO4 など)に維持されているかで電食抑制を判定する。現場では外観、肉厚測定、漏れ検知と併せて総合診断を行う。
防食技術の実務
防食は多層的に設計する。第一に材質選定(近接電位、耐食合金)、第二に電気回路の分断(絶縁継手・スリーブ)、第三に環境制御(脱塩・脱気・pH管理・排水)、第四に被覆(塗装、ライニング、テープ巻き)、第五に電気防食(犠牲陽極、外部電源式)を組み合わせる。緊急補修では陽極側への被覆補完や絶縁部材の後付けで電食の進展を抑える。
機械設計あるある224
「この部品、ユニクロメッキで!」
↓
装置完成。
↓
「水洗い運転開始!」
ジャバジャバ……
↓
数日後。
「……あれ?」
↓
ボルト、錆びてる。
↓
「水洗い装置だった……。」
😂
水がかかる設備は、防錆仕様を忘れずに。 pic.twitter.com/WewB2iCwkb
— 機械設計あるある工藤 (@koutuuseirikudo) August 30, 2026
規格・指針
用語・評価・設計の参照として、国内外のJISやISO、防食学会指針、配管・建築設備の設計基準がある。特に電気防食の設計・監視は基準電位、排流管理、記録・点検周期を定め、長期的に電食リスクを管理する枠組みを構築することが望ましい。
何事も正しい使い方があって、その性能を発揮します。
ステンレス配管も使い方を誤ると、錆びてしまいます。
👉 https://t.co/YhccMxbXGu
ここには、中学生の頃に教わったイオン化傾向が関わってくるんですよ。
やっぱ、勉強って大切ですね😅#ガルバニック腐食 #電食 #イオン化傾向 #腐食 #錆び https://t.co/CIWTe1C9Kq pic.twitter.com/r01pE6tAR9— 我妻武彦@製造業 経営者 (@take_wagatsuma) November 16, 2021
安全・環境面の留意点
電食は圧力機器の漏えいや突発破損に直結し、二次災害や水質・土壌汚染を引き起こす。保全上は「微小漏えい=重大兆候」と捉え、定期点検、環境監視、材料追跡、変更管理(MOC)を徹底する。設計・施工・運用の各段階で情報を連携し、記録を残すことで、再発防止とライフサイクルコスト低減を実現できる。
電圧は250kVなものの、なにせ直流である
鉄道電車をやってる人なら分かるが、直流だと表面漏れ電流はそのまま金物の電食になり懸垂碍子の首部が減肉で千切れる
だからリークを減らすために碍子がこんなに必要
まして海の近くだと汚損で更にリークしやすいので https://t.co/IONg4PFjNc— シナモンロール男子𝑿 (@Cinnamon_danshi) April 6, 2026
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