防爆構造|危険場所で発火リスクを最小化

防爆構造

防爆構造とは、可燃性ガス・蒸気・粉じんが存在し得る危険場所において、着火源の発生や爆発の伝播を抑制するよう設計・製造された電気機器および筐体の構造を指す。国際的にはIEC 60079群およびATEX、国内ではJIS規格等に基づき分類・試験が行われ、危険場所(Zone分類)、ガスグループ(IIA/IIB/IIC)、温度等級(T1〜T6)などの適合表示で運用する。機器選定は危険源の特性、発生頻度、表面温度、密閉性、配線方式、保守体制を系統的に評価して行うのが原則である。

危険場所の分類(Zone)

爆発性雰囲気が存在する頻度に基づき、ガス雰囲気はZone0(常時・長時間)、Zone1(通常運転で断続的)、Zone2(通常は存在せず、存在しても短時間)に区分する。粉じん雰囲気はZone20/21/22を用いる。設置機器は各Zoneで許容される保護等級を満たす必要がある。たとえばZone0には本質安全防爆など高レベルの保護が要求され、Zone2では着火確率低減に重点を置く設計が許容される。

ガスグループと温度等級

ガスの着火性はIIA/IIB/IICで区分し、IICが最も厳しい要件を課す。粉じんでは導電性・非導電性や堆積性を考慮する。併せて機器の最高表面温度によりT1〜T6の温度等級を付す(T6は最も低温、最大85℃)。可燃性物質の引火点・自己着火温度より十分低い表面温度となるよう材料・発熱部・放熱経路を設計する。

主な防爆構造方式

爆発リスクの性質に応じて複数の方式が規定される。以下に代表例を挙げる。

耐圧防爆(d)

内部で爆発が起きても外部雰囲気へ火炎や高温ガスを伝播させないよう、強固な筐体と規定寸法の火炎通路(フランジ隙間やねじ嵌合長さ)で封じ込める方式である。筐体は想定内圧に耐える強度解析と型式試験を要し、グランドや操作軸にも火炎通路寸法が適用される。

本質安全防爆(i)

回路の電圧・電流・エネルギーを制限し、故障時を含めて着火源とならないようにする方式である。ia/ibなどの等級があり、Zone0ではiaが要求される。バリア(Zener/ギャルバニ絶縁)や保護素子、配線インダクタンス・キャパシタンスの評価を含む系統安全設計を行う。

内圧防爆(p)

清浄空気または不活性ガスで筐体内部を加圧・置換し、外部の爆発性雰囲気が侵入できない状態を維持する。起動時のパージ時間、運転中の圧力監視、喪失時の安全遮断など運転管理要件が付随する。大型盤や分析計に適する。

安全増防爆(e)

火花・高温部を本来持たない機器に対して、絶縁距離の拡大、締結の確実化、端子部の保護などで異常時の着火リスクを低減する方式である。モータの端子箱、照明器具などで広く用いられる。

油入(o)・充填(q)・樹脂充てん(m)・特殊(s)

油入(o)は油で着火源を隔離し、充填(q)は粉体で空隙を埋め火炎伝播を防ぐ。樹脂充てん(m)は回路封止により着火源露出を防止する。特殊(s)は特定用途向けに合理性が検証された個別方式である。

設計の勘所

  • 表面温度管理:熱設計、材質選定、放熱経路、温度リミット制御でT等級を満足させる。
  • 火炎通路寸法:耐圧筐体では隙間幅・長さ・表面粗さの組合せを規格に適合させる。
  • シール・グランド:ケーブルグランドや導入部に適合品を用い、筐体IPや防爆性能を維持する。
  • 材料・腐食:腐食で通路寸法や締結力が変化しないよう、材料と表面処理を選定する。
  • 故障解析:本質安全では単一・重畳故障を仮定したエネルギー評価を行う。

配線・施工・保守

配線は規格適合のケーブル・管路・グランドを用い、導通・絶縁・曲げR・引張荷重の管理を行う。筐体開放の可否や電源遮断の手順、ガス置換の記録など運用要件を明確化する。保守ではガスグループ適合の維持、ガスケット・締結トルクの再確認、塗膜や腐食の点検、温度上昇の監視、認証銘板の照査を定期的に実施する。

表示・認証とマーキング

機器には防爆記号(例:Ex d IIC T6 Gb)、認証機関、認証番号、使用温度範囲、保護等級などが表示される。解釈の基本は「方式」「ガスグループ」「温度等級」「装置保護レベル(Ga/Gb/Gc、Da/Db/Dc)」である。混在雰囲気や低温環境では追加条件(-40℃対応など)を確認する。

選定プロセス

  1. 危険源把握:可燃性物質、濃度、温度、圧力、換気を整理し、Zone/グループ/温度要件を確定する。
  2. 方式選択:制御回路は本質安全、動力機器は耐圧や内圧など、機能・保守性と整合させる。
  3. 筐体・配線:導入部、操作子、表示窓、保護等級を総合し、熱・強度を検証する。
  4. 認証・文書:型式試験書、図面、部品リスト、運用手順、危険場所図の整備を行う。

粉じん爆発への配慮

穀物・金属・樹脂粉などはわずかな着火源で爆燃・爆轟に至る。粉じんは堆積・付着により層状過熱が起きるため、表面温度管理と清掃性の高い筐体形状が重要である。吸気・換気の設計、フィルタの帯電・放電対策、シャフト部のシール摩擦熱にも注意する。

静電気・機械的着火源

静電気放電、摩擦・衝撃火花、摺動部の発熱は電気回路以外の着火源となる。帯電防止材、アース、回転体のバランス、非火花性工具の選定、保護カバーの適正化によりリスクを低減する。

リスクアセスメントと文書化

設置前にはHAZOP等でリスクを体系的に評価し、危険場所区画図、換気計算、機器一覧、インターロック、非常遮断、点検周期を文書化する。変更管理(MOC)を徹底し、更新時に再評価することで、防爆構造の有効性をライフサイクル全体で維持できる。

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