鋳鉄の種類|用途に応じた多様な鋳鉄材料

鋳鉄の種類

鋳鉄は、炭素を2%以上含む鉄合金であり、鋳造性やコスト面に優れる材料として広く利用される。炭素や黒鉛の形態、組織、添加元素によってさまざまな種類が存在し、それぞれ異なる特性を持つ。鋳鉄は用途に応じて分類され、主に「ねずみ鋳鉄」「白鋳鉄」「可鍛鋳鉄」「球状黒鉛鋳鉄」「合金鋳鉄」に分けられる。

ねずみ鋳鉄

ねずみ鋳鉄(普通鋳鉄)(FC)は、黒鉛(グラファイト)が灰色に見えることからその名がついた。また、鋳鉄中に分散する黒鉛が三日月状であることから「片状黒鉛鋳鉄」とも呼ばれる。FC100〜350が規定されており、この数値は引張強さ(MPa)を示している。硬度はHB200前後とそれほど高くないが、黒鉛やフェライトの存在により耐摩耗性に優れている。一般に鋳鉄といえば、ねずみ鋳鉄を指すことが多い。片状黒鉛による固体潤滑効果、高い減衰能、圧縮強さといった特性を持つ。一方で、片状黒鉛が応力集中を引き起こしやすく、割れの起点となることが注意点である。主にエンジンブロック、シリンダーヘッド、マンホール蓋などに使用される。

白鋳鉄

白鋳鉄は、炭素が炭化物(セメンタイト)として存在し、組織が硬く脆いことが特徴である。耐摩耗性に優れているため、摩擦や摩耗が激しい環境で使用される。例えば、粉砕機や耐摩耗部品が代表的な用途である。

可鍛鋳鉄

可鍛鋳鉄は、白鋳鉄を熱処理することで、強度と靭性を向上させた鋳鉄である。黒鉛がテンパーカーボンとして分布し、引張強さや延性に優れるため、複雑な形状や衝撃に強い部品に利用される。可鍛鋳鉄には「黒心可鍛鋳鉄」「白心可鍛鋳鉄」「パーライト可鍛鋳鉄」がある。

黒心可鍛鋳鉄

黒心可鍛鋳鉄とは、原料の白鉄を熱処理によってフェライト組織中に割れの発生になりにくいテンパーカーボンを生成させたものである。黒心可鍛鋳鉄は、可鍛性に優れ、強度と靭性を兼ね備えていることから、複雑な形状の部品や高い耐久性が求められる用途に使用される。

白心可鍛鋳鉄

白心可鍛鋳鉄は、原料となる白鋳鉄を熱処理することで、表面部にパーライトと炭化物を生成させた可鍛鋳鉄の一種である。内部はフェライト組織を含み、表面が硬く、内部は比較的柔らかく靭性がある点が特徴である。高い強度と耐摩耗性を有しながら、一定の可鍛性を保持するため、耐久性が求められる機械部品に多く使用される。

パーライト可鍛鋳鉄

パーライト可鍛鋳鉄、パーライト組織を主体とし、その中に分布する微細な黒鉛が応力集中を抑えることで強度と靭性を両立している点である。これにより、硬さ、引張強さ、耐摩耗性に優れた材料となる。

球状黒鉛鋳鉄

ねずみ鋳鉄の応力集中による割れの発生を抑えるために、溶融時にMgやCeを添加し、鋳造のままで球状の黒鉛としたものが球状黒鉛鋳鉄と呼ばれる。形状が球状に近いほど機械的性質(引張強さや伸び)に優れている。延性に優れているので、塑性変形に対応でき、ダクタイル鋳鉄(ductile cast iron)とも呼ばれ、FCD370~700が規定されている。

合金鋳鉄

合金鋳鉄は、クロム、ニッケル、シリコン、モリブデンなどの合金元素を添加し、耐摩耗性、耐熱性、耐食性を向上させた鋳鉄である。代表的なものに「高クロム鋳鉄」や「ニッケル鋳鉄」があり、鉱山機械、化学プラント、高温部品に使用される。

特殊鋳鉄

特殊鋳鉄には、特定の用途向けに特性を最適化したものがある。例えば、耐熱鋳鉄、耐酸鋳鉄、耐摩耗鋳鉄などが挙げられる。これらは、産業機械や過酷な環境下での部品に適している。

まだら鋳鉄

まだら鋳鉄は、特殊な組織を持つ鋳鉄の一種である。鋳鉄の中でも部分的に白鋳鉄と灰色鋳鉄が混在する構造を持ち、その外観がまだら模様に見えることからその名がついている。まだら鋳鉄は硬さと耐摩耗性を併せ持ちながら、ある程度の靭性も保持する。

鋳鋼

鋳鋼は、鋳造によって製造される鋼製品である。鋼を溶融し、鋳型に流し込んで所定の形状に固めたものであり、、鋳鉄よりも高い強度と靭性を持つ点が特徴である。鋳鋼は、鋳鉄に比べ炭素量が少ない(0.02~2.1%)素材のため、融点が高く、凝固収縮の際、引け巣などの欠陥が生じやすい。が、強度や延性に優れており、複雑な形状が可能で軽量化に寄与する。

タイトルとURLをコピーしました