過電流継電器|過電流を検出し設備と回路を保護

過電流継電器

過電流継電器は、系統や機器に流れる電流が所定の整定値を超えたときに動作し、遮断器のトリップを指令する保護リレーである。送配電線路、変圧器、母線、配電盤、電動機回路など広範に用いられ、短絡・地絡・過負荷といった異常電流に対する基幹的な保護を担う。逆時限(inverse time)特性を用いることで故障電流の大小に応じて動作時間を可変化し、上位・下位系統間の選択協調を確保する点が大きな特徴である。一般に電流変成器(CT)二次電流を入力とし、しきい値(ピックアップ電流)と時間整定(タイムダイヤル)を組み合わせて運用する。

動作原理

過電流継電器は、測定要素がCT二次電流の実効値を監視し、I≥Is(Is:整定電流)で動作を開始する。逆時限要素では、動作時間tが電流比M=I/Isに依存し、概ね t=k·M(k、α:曲線定数)で表される。故障電流が大きいほど動作時間が短縮され、下流側の保護が先行動作することで系統の選択性が確保される。これに対し一定時限(definite time)要素はMに関係なく一定時間後に動作し、瞬時要素(instantaneous)では上限整定を超えた瞬間にトリップ指令を出す。

種類と特性

  • 逆時限要素(IDMT:Inverse Definite Minimum Time)
  • 一定時限要素(DT:Definite Time)
  • 瞬時要素(INST:Instantaneous)

逆時限要素には標準逆時限、非常に逆時限、極端逆時限など複数の曲線群があり、配電・送電・変圧器保護で使い分ける。標準逆は汎用、非常に逆は配電線やヒューズ協調、極端逆はトランス突入耐性を意識した選択に向く。実装形式は機械式(誘導円板形)から静止形、デジタル・数値リレーへと発展し、現行では多機能保護リレーにOCR機能が統合されるのが一般的である。

設定値と協調

過電流継電器の基本整定は(1)ピックアップ電流Is、(2)時間ダイヤル(TD)、(3)瞬時整定(必要時)の3点である。Isは保護対象の常時最大負荷電流と過負荷許容を踏まえ、CT比と連動して決める。TDは上位側リレー・遮断器とのグレーディングマージン(一般に0.2〜0.4 s程度を目安)を確保するよう決定する。瞬時要素は母線近傍の大電流短絡に対する高速遮断を狙うが、下流故障への誤先行を避けるため整定電流を高めにとる。

グレーディング手順の要点

  1. 下位回路から順にIsとTDを仮設定し、保護対象の最小故障電流で確実動作することを確認する。
  2. 隣接上位の継電器との動作時間差に設計マージンを加え、整合するようTDを調整する。
  3. 瞬時要素は上位設備の許容遮断容量、CTの飽和、母線短絡時の保護選択性を同時に満たすよう吟味する。

適用例

配電線では逆時限要素を主として用い、末端ヒューズや下位OCRと時間協調をとる。変圧器保護では高圧側の短絡に対してOCRがバックアップを担い、一次・二次の故障レベル差と励磁突入電流を考慮して整定する。電動機回路では始動電流を誤検出しないようIsとTDを始動時間より長く、瞬時要素は不感化するか高めに設定する。母線保護では差動継電器が主役となるが、過電流継電器は差動装置や遮断器失敗時のバックアップとして機能する。

計算・整定の基礎式

逆時限特性は標準化曲線に基づき t=TMS·F(M) で表され、TMS(Time Multiplier Setting/Time Dial)が時間軸をスケーリングする。F(M)は曲線ごとの関数で、例として標準逆では F(M)=0.14/(M0.02−1)、非常に逆では F(M)=13.5/(M−1)、極端逆では F(M)=80/(M2−1) などが用いられる。実務では保護協調図(COC:Coordination Curve)上に各リレーの時限曲線と遮断器動作時間を重ね、全故障電流域で選択性と応答速度が両立するようTMSを調整する。

CTと計測上の留意点

CTのクラスや定格負担が不適切だと、故障時飽和により二次電流がひずみ、整定どおりの選択協調が崩れる恐れがある。特に瞬時要素の誤動作回避には、CTの励磁特性と二次回路インピーダンスの管理が不可欠である。配線誤りや接触不良はゼロ位相電流の混入や測定遅延を招くため、端子台・接地・導通試験を定期点検項目に含める。

試験と保守

  • 二次注入試験:試験器でCT二次回路に電流を与え、Is・TMS・瞬時整定の動作点と動作時間を検証する。
  • 一次注入試験:系統側から実負荷経路で電流を流し、CT・配線・リレー・遮断器までを含む一体動作を確認する。
  • 定期点検:動作記録の回収、設定値のトレーサビリティ管理、ファームウェアの維持、端子の清掃・増し締め。

数値リレーでは自己診断機能、イベントログ、故障波形記録が利用でき、故障解析や協調見直しに有用である。試験結果は保護協調図と併せて文書化し、設備変更時には速やかに改訂して整合を保つ。

誤動作要因と対策

投入突入電流(変圧器・電動機)や励磁涌流、非全相故障、発電機励磁の過渡、第三調波成分などが誤検出の要因となる。対策として逆時限曲線の選択、始動ブロッキング、第二高調波拘束、方向要素(DOCR)追加、地絡専用要素(零相電流方式)との役割分担が挙げられる。また、系統構成変更(連系開閉)で故障電流レベルが変動する場合、定期的に整定見直しを行うことが望ましい。

関連規格と用語

継電器一般の性能・試験には国際的にIEC 60255群が広く参照され、わが国の据付・試験実務でも整合が図られている。用語としては、ピックアップ(動作開始)電流、ドロップアウト(復帰)電流、タイムダイヤル(TMS)、動作余裕度、選択協調(選択遮断)、グレーディングマージン、遮断器固有時間などが重要である。これらを統合的に理解し、系統・機器特性に適合させて整定することが、過電流継電器の有効性を最大化する鍵である。

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