軸と穴とのはめあい(標準パターン一覧)

軸と穴とのはめあい(標準パターン一覧)

軸と穴とのはめあいは、加工誤差(寸法差)を体系化した公差等級(IT)と基本偏差の組合せで定義され、機械要素の機能(回転、摺動、圧入固定など)を安定して実現するための設計ルールである。ここではISO 286/JIS系の代表的な「穴基準(H基準)」と「軸基準(h基準)」の組合せを用途ごとに網羅的に整理し、実務で頻出する“すきまばめ・中間ばめ・しまりばめ”の全パターンを一覧化する。

はめあいの3分類(基本概念)

  • すきまばめ:常に正のすきまが生じる。低摩擦で分解容易。例:H7/g6, H8/f7
  • 中間ばめ:すきまにもはめあい(しめしろ)にもなり得る。軸受外輪の定位など。例:H7/k6, H7/m6
  • しまりばめ:常に正のしめしろが生じる。強固な固定。例:H7/p6, H7/s6

穴基準(H基準)の標準パターン

H基準は穴の下側偏差を0に固定し、軸側で機能を作り分ける最も一般的な設計法である。IT等級は代表としてIT6〜IT9を挙げる。

すきまばめ(回転・摺動に好適)

  • 微小すきま(高精密摺動):H6/g5, H7/g6
  • 一般すきま(一般摺動・組立性重視):H7/f7, H8/f7
  • 大きめすきま(熱膨張・汚れ対応):H8/e8, H9/e8
  • 位置決めすきま(軸受ハウジング等):H7/h6(軽いはめ)

中間ばめ(定位と保持の両立)

  • 軽い中間:H7/js6, H7/k6
  • 標準中間:H7/m6
  • 強め中間:H7/n6

しまりばめ(固定・トルク伝達)

  • 軽しまり(手圧〜軽圧入):H7/p6, H7/p7
  • 中しまり(圧入・打ち込み):H7/r6, H7/r7
  • 強しまり(高トルク伝達・永久結合):H7/s6, H7/s7, H7/u7

軸基準(h基準)の標準パターン

h基準は軸の上側偏差を0に固定し、穴側で機能を作り分ける。現合加工や量産治具の都合で採用されることがある。

すきまばめ

  • 微小すきま:G6/h5, G7/h6
  • 一般すきま:F7/h6, E7/h6
  • 大きめすきま:D8/h7, C9/h8

中間ばめ

  • 軽い中間:J6/h5, J7/h6
  • 標準中間:K6/h5, K7/h6
  • 強め中間:M6/h5, M7/h6

しまりばめ

  • 軽しまり:N6/h5, N7/h6
  • 中しまり:P6/h5, P7/h6
  • 強しまり:R6/h5, S7/h6, U7/h6

用途別の代表的パターン(実務目安)

  • 滑り軸受(ブッシュ)と軸:H7/g6, H8/f7(潤滑確保)
  • 転がり軸受 外輪とハウジング:H7/g6(静止側はすきま)/H7/m6(回転側は中間〜軽しまり)
  • 転がり軸受 内輪と軸:H7/m6, H7/n6(荷重回転側の確実な保持)
  • 歯車・プーリの圧入:H7/p6, H7/r6(トルク伝達)
  • ピンと穴(位置決め):H7/h6, H7/js6(脱着頻度に応じ選択)
  • カップリング嵌合:H7/k6(芯ズレ抑制と組立性の両立)

IT等級と選定レンジ(一般指針)

  • 精密摺動・測定装置:IT5〜IT6+すきまばめ(H6/g5等)
  • 一般機械・産業機器:IT6〜IT7(H7/g6, H7/k6, H7/m6が基軸)
  • 重機・高荷重部:IT7〜IT9+しまりばめ(H7/p6, H7/r6等)

熱・表面・製造条件の補正

  • 熱膨張:高温運転はすきま側に寄せる(H8/f7など)。低温・常温据え付け圧入はH7/p6〜r6。
  • 表面粗さ:粗い面は実質すきま減少。圧入はRaを小さく、端面面取りで損傷防止。
  • 組立方法:油圧・加熱圧入はしめしろを小さめに、ハンマ圧入は端面・支持治具を準備。

寸法レンジと代表寸法差の考え方

同一の記号でも呼び径で許容域が変化する。大径化でIT幅は相対的に大きくなるため、すきまばめは等級を一段絞る、しまりばめは一段緩めるなどの実務補正が有効である。基準例として、H7/g6は位置決めと低摩擦を両立しやすく、H7/m6は温度変化に対する保持力のバランスが良い。

記号読み取り(基本偏差の意味)

  • 大文字=穴,小文字=軸。H/hは「0線」に接し、Hは下側0、hは上側0。
  • g,f,e…:0線より負側(軸が細い/穴が小さい)でクリアランス側に寄せる。
  • k,m,n…:0線を跨ぐ中間域。
  • p,r,s,u…:0線より正側(軸が太い/穴が大きい)でインターフェレンス側に寄せる。

クイック参照(設計でまず検討する組合せ)

  • 摺動・回転:H7/g6(精密)/H8/f7(一般)
  • 定位+分解:H7/h6, H7/js6
  • 保持+分解限定:H7/k6, H7/m6
  • 強固固定:H7/p6, H7/r6, H7/s6
  • 軸基準での互換:G7/h6(すきま)、J7/h6(中間)、N7/h6(しまり)

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