自然法 natural law
自然法とは、時間や場所をこえて、人類に普遍的に妥当する永久的な法である。歴史的・人為的に制定された実定法とは異なる。自然法における「自然」とは、「人為」に対して、人間の生まれながらの自然な本性に基づくということを意味する。歴史的には宇宙を支配する理法(ロゴス)を説いた古代のストア派、キリスト教的視点から中世の封建的位階秩序を説いたトマス=アクィナス、17〜18世紀には、グロティウス・ホッブズ・ロック・ルソーらによって近代的な自然法思想が説かれた。
ジョン・ロックの自然権
ジョン・ロックは、生まれながらに、すべての人間に生命・自由・平等・財産所有の自然権がそなわっていることを認め、その権利の保障を目的とした社会契約による国家の成立を説いた。このジョン・ロックの思想は、人民の権利を抑圧する封建制度を批判し、絶対王政と戦うための市民革命の指導的理念となった。
人間は生来、すべて自由であり、平等であり、独立しているのだから、だれも自分から同意を与えるのでなければ、この状態から追われて、他人の政治的な権力に服従させられることはありえない。人がその生来の自由を放棄し、市民社会の拘束を受けるようになる唯一の方法は、他人と合意して一つの共同社会に加入し、結合することであるが、その目的は、それぞれ自分の所有物を安全に享有し、社会外の人に対してより大きな安全性を保つことを通じて、相互に快適で安全で平和な生活を送ることである。 『統治論』