石英ガラス
石英ガラスとは、光を屈折および集束させることで像を形成するを高純度で含有するガラスである。砂や水晶に含まれるケイ素成分を高度に精製し、不純物を極限まで取り除くことで生成されるため、一般的なガラスとは異なる特異な構造をもつ。結晶性の石英が再結合したような緻密な組成を形成し、極めて高い耐熱性や光学的透明度を実現している。融点が摂氏1700度付近と非常に高いため、高温下での加工や実験などに適していることが特徴であり、レーザー光の透過性や紫外線領域での高い透明度も活かされ、半導体製造装置や光学機器をはじめとする多くの工業分野で重要な役割を担っている。
原料と製造法
高純度の二酸化ケイ素(SiO2)を原料とし、天然由来の珪砂や水晶を精製したもの、あるいは化学的に合成されたシリカを用いる場合が多い。製造方法としては、ガス火炎中でケイ素化合物を溶融・再結晶化させる火炎溶融法や、電気炉を用いて塊状のケイ素原料を高温で溶融する電気溶融法などが代表的である。火炎溶融法は比較的細かい形状の管やロッドを作りやすい一方、電気溶融法では大きな塊を形成しやすい特徴がある。製造の際には金属などの混入を最小限に抑える必要があるため、高純度の装置やクリーンな環境が要求され、工程ごとに徹底した品質管理が行われる。
「半導体の製造には欠かせないシリコン、レンズ、光ファイバーの部品などに使われる石英ガラスの原料です。正確な時を刻むクォーツ時計にもセキエイ(石英)が必要です。そのため、私たち現代人の生活を支えている鉱物といっても過言ではありません。」
冬休みの研究で石集め🪨
📱も地球からの贈り物🌏 pic.twitter.com/EQwBXCP1Yg— 高橋 望🌿👩🏻🌾 (@dragonflyfarm33) January 7, 2025
特性
石英ガラスは一般的なソーダライムガラスに比べ、格段に高い融点と優れた耐熱性を示すうえ、熱膨張係数が非常に小さいため急激な温度変化にも強い特性を持つ。化学的安定性にも優れ、多くの酸やアルカリ、溶剤などに対して耐性を示すため、腐食環境での使用に適している。また、電気的には非常に低い誘電率と高い絶縁破壊電圧を有し、電子機器の基板や高周波用の部材などにも応用されている。機械的強度は高くないものの、熱的・化学的・電気的な性質のバランスが取れた素材として評価されている。
ニコンミュージアムにあった、合成石英ガラスインゴット
工業用カメラなどに使うようだがすごい透明度でした。 pic.twitter.com/r8U6xwqqUN— Y.Kato (@kaytoyoshitaka) January 25, 2025
光学的特徴
石英ガラスの光学特性は広範囲の波長領域にわたる高い透過率にある。可視光に対しても透明度が高く、紫外線や赤外線の一部波長域でも透過率が優れているため、精密な分光分析機器や光学レンズに応用される場合が多い。レーザー光線との相性も良好で、高出力レーザーに対しても光学損傷を起こしにくい点が強みである。こうした光学的特徴から、半導体露光装置や高精度計測機器などの先端分野で重用されている。
熱的特徴
石英ガラスは熱膨張係数が極めて低いことから、温度変化による寸法変化が小さい。急激に加熱や冷却を行っても割れにくい特質を持ち、実験器具や耐熱窓などに広く採用されている。加えて融点近くまで加熱してもガラスの歪みや変形が起こりにくいので、高温環境下での部材としても有用である。熱伝導率自体は金属に比べれば小さいが、耐熱衝撃性に優れた素材として、極限環境での測定装置や人工衛星などの部品にも応用が検討されている。
用途
半導体製造装置の部材や、光学レンズ、レーザー機器用の光学素子、UVランプや耐熱ガラス器具など、多彩な場面で使われている。とりわけ、高い純度を求められる半導体のエッチング工程などでは、化学薬品に対して耐性を示し、かつ微細な加工が可能であることから欠かせない素材となっている。実験室用品ではビーカーやフラスコのほか、光学セルやファイバーなどでも活用され、極端な温度差や腐食性の薬品を扱う場面でも安定した性能を発揮している。自動車や航空宇宙分野では高温下での強度や透明度が評価され、ヘッドライトカバーや特殊センサー窓といった用途も考えられている。
いきなり完成品だけ見せられても欲しいとは思わないけど、製造過程を見せられると物欲が刺激されますね…pic.twitter.com/oZ1Ae2ZBXX
— 黒色中国 (@bci_) May 16, 2024
取り扱い上の注意点
石英ガラスは硬度が高い一方で脆性を示すことがあり、特に衝撃には弱い性質があるため取り扱いには注意が必要である。表面に傷がつくと割れやすくなるため、作業時には適切な保護具の着用や取り扱い方法に配慮することが望ましい。また、非常に高い温度まで加熱できる利点があるものの、冷却や加熱の速度が極端に速すぎる場合には局部的な熱応力が発生する場合もある。廃棄する際にはガラスのリサイクルが可能な施設や産業廃棄物の処理ルートを用いて安全に処理することが推奨される。