白さび|亜鉛めっきに発生する白色腐食物

白さび

白さびは、亜鉛めっき鋼材や亜鉛合金部材の表面に生じる白色粉状の腐食生成物である。英語では”white rust”あるいは”wet storage stain”と呼ばれ、主として湿潤状態で空気流通が乏しい保管・輸送環境で発生する。見た目の劣化だけでなく、条件が悪いとめっき亜鉛の消耗を速め防食寿命を短くするため、材料選定・設計・製造・物流・保管の各段階で対策が必要となる。

発生メカニズム

白さびは、亜鉛が水分と反応して亜鉛水酸化物などの不安定生成物を形成し、それが乾湿の繰返しで白色粉末となって表面に堆積する現象である。通常、亜鉛表面は大気中の二酸化炭素と反応して緻密な塩基性炭酸亜鉛皮膜を生成し、自己被覆的に安定化する。しかし密着梱包で水膜が長時間滞留すると酸素・二酸化炭素の供給が不足し、この保護皮膜が育たないまま腐食反応が進むため、白さびが生じやすい。

発生しやすい条件

  • 白さびの主因は結露・降雨・海霧などによる持続的な湿潤と、通風不良による水分滞留である。
  • めっき直後で皮膜が未成熟、あるいは化成処理が弱い状態で密着積層・シュリンク包装された場合。
  • 塩分・硫黄酸化物・アンモニア等を含む環境、水膜の酸性化・アルカリ化による局部溶解がある場合。
  • 排水性が悪い形状や重ね板隙間、ボルト孔周りなどの隙間部で水が抜けにくい場合。

外観・影響・評価

白さびは白色~灰白色の粉状・斑点状で現れ、手で擦ると容易に落ちることが多い。軽微な場合は外観問題に留まるが、進行するとめっき亜鉛層が局所的に消耗し、将来的な赤さび発生リスクを高める。広範囲かつ厚い生成が見られる場合は、実効めっき厚の低下として評価し、補修や再めっきを検討する。赤褐色の鉄さびが見える段階は、すでに亜鉛層を貫通して基材腐食が始まっている目安である。

防止策(製造・表面処理)

  • めっき後の化成処理(例:三価クロメート、有機シール、シラン処理)で初期耐湿性を付与する。
  • 防錆油の塗布や防指紋剤の採用により水膜の拡がりを抑える。
  • 乾燥工程の最適化(低温多湿時の延長乾燥、出荷前の完全乾燥)を徹底する。
  • 表面微粗化やシール層で初期皮膜の形成を促し、白さびの起点を減らす。

防止策(物流・保管)

  • 屋内の乾燥・通風保管を基本とし、床上から離したパレットで毛細管上がりを防止する。
  • 密着積層を避け、スペーサで空気層と排水経路を確保する。
  • ラップ包装は必要最小限とし、通気孔や乾燥剤を併用する。長距離輸送では温度差による結露を想定し、保温・通気を両立させる。
  • 屋外仮置きは短時間とし、必ずカバー+下面開放の通風確保型とする。

除去・補修方法

  1. 軽微な白さびは乾拭きやナイロンブラシで除去し、清浄水で洗い流して完全乾燥させる。
  2. やや進行した場合は、希酢酸・クエン酸などの弱酸性洗浄剤で中和洗浄→十分な水洗→乾燥→必要に応じて防錆油または有機シールを施す。
  3. 基材露出や広範囲の消耗が見られる場合は、ジンクリッチペイント等で局部補修する。構造物では素地調整(ブラストやワイヤーブラシ)後に補修塗装を行う。
  4. めっき層の損耗が大きい場合は、再めっきや部材交換を検討する。

設計上の配慮

  • 水が滞留しない形状(排水孔、面取り、傾斜、段差解消)と、重ね板・箱形の通気経路を設ける。
  • 運搬・保管時に接触点が限定される支持構造とし、全面密着を避ける。
  • 濡れやすい屋外部材は初期皮膜の育成期間(施工直後)に雨だまりを作らない細部設計とする。
  • 切断・溶接部のめっき欠損には、現場での適切な補修仕様(ジンクリッチ、シーラー)を予め規定する。

材料・仕様選定の考え方

白さびリスクは、めっき種別(溶融亜鉛、電気亜鉛、合金化亜鉛)や膜厚、化成処理の有無、表面粗さ、梱包仕様で変動する。流通・保管の制約が厳しい場合は、厚めのめっきや耐湿性に優れた化成・シールの採用、出荷から施工までのリードタイム短縮、現場での一次乾燥スペース確保など、サプライチェーン全体での最適化が有効である。

品質管理・検査の要点

  • 入出庫時に外観を点検し、初期の白さびを早期発見して対処する。
  • 保管環境の温湿度・結露履歴を記録し、季節要因の影響を見える化する。
  • 除去後は塩分・粉塵残渣の無いことを確認し、乾燥後の再発生有無をフォローする。

用語と注意事項

現場では白さびを「白錆」とも表記する。外観変化が主で軽微な段階では機械的性質への影響は小さいが、意匠部材や長期耐久が要求される用途では早期対応が望ましい。赤さびは基材鉄の腐食であり、白さびとは区別して評価・補修方針を立てる。弱酸での洗浄時は取扱いと中和・水洗・乾燥を確実に行い、化成処理や塗装の密着を阻害しないよう清浄度を確保することが重要である。