球状黒鉛鋳鉄(FCD材)
球状黒鉛鋳鉄(FCD材)とは、鋳鉄中の片状の黒鉛を球状の組織にしたもので、機械的特性を向上させた鋳鉄材料の一種である。外部から力を受けたときなどに球状の黒鉛が力を分散するため、応力集中が抑えられ、粘り強い鋳鉄となる。靭性や耐衝撃性が向上しているのが特徴で、自動車部品や機械部品、建設機械などの広範な用途で利用されている。
球状黒鉛鋳鉄の特性
球状黒鉛鋳鉄の最大の特徴は、高い引張強度と優れた延性である。通常の灰色鋳鉄と比較しても強力であり、破壊に至るまでの変形量が多く、衝撃に対する耐性が高い。この特性は、内部に分布する球状黒鉛が応力集中を抑え、靭性を向上させていることに起因する。また、球状黒鉛鋳鉄は加工性にも優れており、必要に応じて機械加工を行うことができるため、複雑な形状の部品にも適している。
ダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)そのものは、INCO社が開発です。https://t.co/tigPoN2ASM
マンホールにダクタイル鋳鉄を応用したのは、福岡の日之出水道機器株式会社。1961年に「海外企業の特許製法に頼らない独自の技術で、ダクタイル鋳鉄の開発に成功。」 https://t.co/vTlLCJZyc0 https://t.co/0vXXpTss4m
— ノギタ教授 (@Prof_Nogita) April 19, 2024
球状黒鉛鋳鉄の名称と引張強度
JIS記号では、FCD材として表され、FCD370~FCD800まで7種類が規定されている。この文字はFCD+引張強さの最低保証値で表されており、代表的な例としてFCD600などが挙げられ、その引張強度は600MPa以上である。
製造工程と黒鉛の球状化
球状黒鉛鋳鉄の製造には、主に溶融した鉄にマグネシウムを添加する工程が含まれている。この工程により、鋳鉄中の黒鉛が球状化される。通常の灰色鋳鉄では黒鉛はフレーク状に存在しており、これが応力集中の原因となって脆さを引き起こす。しかし、黒鉛が球状になることで、応力の集中が緩和され、鋳鉄の強度と延性が大幅に向上する。このような球状黒鉛の形成は、球状黒鉛鋳鉄の持つ強靭性と機械的な安定性を実現するために極めて重要である。
用途と利点
球状黒鉛鋳鉄は、その優れた機械的特性から、多くの産業分野で利用されている。自動車産業では、エンジン部品やサスペンション部品、ギアハウジングなど、耐久性と強度が要求される部品に使用される。また、建設機械や農業機械などの重機においても、耐衝撃性が重要な部品に利用されている。さらに、球状黒鉛鋳鉄はコスト面でも優れており、鋼材と比較して安価でありながら、高い性能を発揮することから、コストパフォーマンスの高い材料として評価されている。
一体成形が可能で熱処理も不要、軽量高剛性化による変速スピード短縮に貢献
JFE継手が取り扱う、鋳放し高強度球状黒鉛鋳鉄「H-FCD800」の採用例として、新型ホンダNSXの9速DCTに用いられているシフトフォークを紹介。 https://t.co/OTwrsWuags— MotorFan[モーターファン] (@MotorFanweb) December 18, 2019
機械加工性
球状黒鉛鋳鉄は、鋳造後の機械加工が比較的容易である点も大きな利点である。鋳鉄の中でも比較的硬度が高いが、適切な工具と条件を用いることで、精度の高い加工が可能である。このため、最終製品としての精度が求められる部品にも使用されることが多い。また、球状黒鉛の存在により、工具摩耗が少なく、加工効率が向上するという利点もある。このように、球状黒鉛鋳鉄は鋳造から最終加工までの工程全体での生産性が高い材料といえる。
ダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)そのものは、INCO社が開発です。https://t.co/tigPoN2ASM
マンホールにダクタイル鋳鉄を応用したのは、福岡の日之出水道機器株式会社。1961年に「海外企業の特許製法に頼らない独自の技術で、ダクタイル鋳鉄の開発に成功。」 https://t.co/vTlLCJZyc0 https://t.co/0vXXpTss4m
— ノギタ教授 (@Prof_Nogita) April 19, 2024
他の球状黒鉛鋳鉄との比較
球状黒鉛鋳鉄は、他の球状黒鉛鋳鉄(例えばFCD400やFCD500)と比較して、より高い強度を持つものも存在する。例えば、FCD600は引張強度が600MPa以上であり、FCD400やFCD500よりも優れた機械的特性を提供する。しかし、その分硬度が高く、加工にはより高い技術が必要となる場合がある。用途に応じて、各種球状黒鉛鋳鉄を適切に選択することが求められる。