構想設計
構想設計(Conceptual Design)は、設計プロセスの初期段階であり、営業部門や企画部門からインプットされた設計依頼に対して、どのような機能や形態がよいのかを明確化して、その機能を具体的に満たす案を示す設計工程である。経営者の戦略や市場の需要を理解し、それを製品やサービスを、プロセスを通じてどのように満たすかを考える工程で、随時各部門と情報を共有し、デザインビューしていくことで、完成した状態で設計フェーズに移ることができる。
構想設計の概要
構想設計は、設計プロセスの最初のステップで行い、構想設計を通じて製品やシステムの基本的な機能や形態が定義される。設計者はアイデアを探求し、それらを具体化するための大まかな計画を立てる。このプロセスでは、様々なアイデアが生成され、デザインレビューでインプットされた企画や経営者の戦略が反映されているかが評価される。
構想設計のポイント
- 企画に対する機能が満たされているか
- どのような機構、構造にして、どのような機械要素を用いるか
- 部品は入手可能か
- 貿易や法務上の問題はないか
- 駆動方法、駆動伝達方法、動作や位置を検知する方法はどうするか
- 機械の強度は十分か
- 動作時の不具合や干渉はないか
- コストやスケジュール、スペースについて
システム要件の明確化
商品企画や見積書、仕様書を精査し、その製品のシステム要件を明確にする必要がある。その製品の目標品質や性能から開発の方向性を明確にし、実設計のフローへ進む準備を行う。構想設計の段階で明確化されたシステム要件が企画に沿っているかが重要である。
機能の整理
その製品が求められる機能を整理しなければならない。これらを保持させた機能をその製品に持たせなければならない。結果として高機能である一方、価格や納期が想定よりも高くなることがあるため、レビューではこの機能でよいかコストや納期の予想などを行わなければならない。
QFD
QFD(Quality Function Deployment)とは品質機能展開である。要求品質と品質性能を整理して定量的かつ定性的に結びつける必要がある。
過去製品の分析
機械であれば、製品はハードウェアとソフトウェアで分かれるが、それらの切り分けを行い、各チームに分かれて過去の製品の分析を行う。過去の製品を流用できるときはそれ元にして設計を進める。この段階でそれを設計した際の問題を洗い出し次の案件ではその改善策を講じる。
構想設計DR
構想設計DRとは、構想設計がある程度進んだ際、実設計にフローを進める前に行うデザインビューである。開発部門を中心として経営部門、営業部門、企画部門、資材部門、法務部門などが集まり、構想設計の結果を共有する。各部門がそれぞれの責任を果たし、経営方針に沿っているか、部品や部材は入手可能か、法律的な違反を起こしていないか、貿易ができるか、などを議論する。
構想設計試作
構想設計の段階で簡単な試作品を作る。試作品は、3D プリンタや模型などでの手作りの簡単なもので、大きなプロジェクトほど試作を行う傾向にあるが、時間的・経済的コストが負担となるため、3D CADで作成した3D CADやコンセプトスケッチなどですませることも多い。
コンセプトスケッチと3D モデル
コンセプトスケッチは、アイデアを視覚的に表現するための簡単な図であり、3D モデルは3D CADで造られたデータであり、誰もが直感的に理解できる。構想設計DRではこれを元にして議論を進めていく。もっと簡単なものでは、ポンチ絵と呼ばれるフリーハンドの絵を描いて、議論のたたき台とすることもある。
構想図
構想図とは構想設計の際に作られる図面で、寸法を明確化し、実現可能性や問題点などを明確にする。たいていは、前段階で、多くの案をまとめた「ポンチ絵」と呼ばれるフリーハンドの絵を描き、自分の考えや顧客とのたたき台として、要求される機能を明確にする。多くのポンチ絵の中で最良な案をもとに、構想図を作成する。
コンカレントエンジニアリング
コンカレントエンジニアリング(CE)とは、設計から製造にいたるまで、具体的には、営業、開発設計、製造、サービス部門などの検討を同時並行して進め、開発プロセスを短縮する手法である。構想設計には、このコンカレントエンジニアリングの考え方が重要で、具体的な詳細設計に入る前に多様な部門の関係を考慮にいれた上で設計を構築しなければならない。