振動試験|耐久性と共振リスクを評価

振動試験

振動試験は、製品や部品が輸送・設置・稼働中に受ける機械的振動に対する耐性を評価する信頼性評価手法である。共振による過大応力、ねじのゆるみ、はんだ割れ、コネクタの接触不良などの潜在不具合を事前に顕在化させ、設計改善や品質保証に資する。代表的には正弦波、ランダム、衝撃、スイープ、長時間耐久の各モードを用いる。

目的と効果

振動試験の第一の目的は、構造物の固有振動数と減衰を把握し、共振点での応答を評価することである。実稼働中の振動プロファイル(道路・鉄道・航空・工場設備など)を模擬することで、疲労寿命の短縮要因や結合部の緩み傾向を見抜ける。例えば締結部ではボルトの軸力低下や座面の微小すべり(フレッティング)を早期に確認でき、量産前の対策が可能となる。

主な試験方式

試験方式は負荷の周波数成分と時間特性で分類できる。規格では IEC 60068-2-6(正弦波)、IEC 60068-2-64(ランダム)、IEC 60068-2-27(衝撃)が広く参照され、環境規格では MIL-STD-810H の方法論が実務で用いられる。

  • 正弦波加振:単一周波数またはスイープで周波数帯を走査し、共振点と応答倍率を特定する。スイープ速度は 1~3 oct/min が一般的である。
  • ランダム振動:PSD(g^2/Hz)で定義し、広帯域の実稼働振動を統計的に再現する。評価には gRMS とピーク係数(クレストファクタ)を併用する。
  • 衝撃・ショック:ハーフサイン、台形、のこぎり波など短時間の過渡応答を評価する。解析には SRS(Shock Response Spectrum)を用いる。
  • スクリーニング:HALT/HASS などの加速ストレスで潜在欠陥を選別する。

評価指標と設定

試験条件は対象物と実環境に基づき設定する。周波数範囲は 5–2,000 Hz 程度が通例で、低周波では変位、中央域では速度、高周波では加速度で支配される。ランダムでは PSD と gRMS、正弦波では掃引レベル(m/s、m/s^2、mm p-p)を明示する。回転機械の常設監視では ISO 10816/20816 の重ね合わせ基準が参考になる。過大入力を避けるため、既知の脆弱部にはノッチング(上限制御)を設定する。

装置と治具

加振源には電磁加振器(高周波・低変位・高応答)と油圧加振器(低周波・大変位・大質量)がある。3軸評価にはスリップテーブルやヘッドエキスパンダを用い、治具はアルミまたはマグネシウム合金で軽量高剛性に設計する。可動質量と必要加速度から加振力(F=m・a)を見積もり、ストロークと電流余裕を確保する。締結部は適正トルクと表面粗さ管理により共振時の微小すべりを抑える。

取り付けと計測

取り付け条件は試験結果を大きく左右する。実機同等の境界条件(固定・拘束)と締結を再現し、余剰配線や付加質量を最小化する。加速度計は三軸配置で主応答方向を捉え、サンプリングは最高周波数の≥2.5倍を目安に設定する(Nyquist 余裕)。ケーブルのマイクロフォニックノイズを避けるため、緩やかな固定とループ抑制が望ましい。

試験手順の基本

開始前にインパクトハンマやシェーカを用いた簡易モーダル試験で固有振動数を把握する。正弦スイープでは共振検出後にドエル(定常保持)を行い、ダンピング特性と温度上昇を確認する。制御点は治具上だけでなく試験体上の代表点を選び、必要に応じて多点制御や平均化制御を採用する。

輸送振動・実環境プロファイル

梱包・輸送では道路起因のランダム振動が支配的で、PSD は 10–200 Hz にピークを持つことが多い。パレット輸送や航空貨物では共振を伴う卓越周波数が異なるため、ASTM D4169 や ISTA 3A のプロファイルを参照して模擬する。設置後の据付機械では基礎剛性やアンカー条件も評価対象となる。

データ解析の要点

時間波形から RMS、ピーク、クレストファクタを算出し、周波数領域では FRF(伝達関数)やコヒーレンスでモデル整合性を確認する。衝撃は SRS、ランダムの疲労影響は FDS(Fatigue Damage Spectrum)で比較すると、異なるプロファイル間の等価性が判断しやすい。温度や動作状態の変化に伴うシフトも併記すると再現性が高まる。

よくある不具合モード

薄肉板の曲げ共振による亀裂、プリント基板のはんだクラック、コネクタのフレッティング摩耗、ハーネス断線、ギアの歯打ち、軸受の早期損傷、締結部の回転ゆるみなどが典型である。対策としては形状リブ追加、質量・剛性チューニング、ダンパ材の局所適用、ねじの二次固定(緩み止めナット、座金、ねじロック剤)が有効である。

設計・CAEとの連携

振動試験の結果は CAE モデルの更新に用いる。モーダルパラメータ(固有周波数・モード形・減衰)で相関を取り、感度解析で有効剛性や局所質量の最適配置を導く。製品アーキテクチャ段階で支配モードを回避し、量産段階では監視しきい値と品質保証のエビデンスとして測定手順を標準化する。

規格適合とレポート

報告書には採用規格、試験体識別、取り付け条件、治具図、制御点、プロファイル(PSD/スイープ条件)、レベル遷移、異常時の停止基準、測定結果と判定を含める。トレーサビリティ確保のため、センサ校正記録、温湿度、試験ログ、異常イベントの時刻情報を付与する。規格名や版数(例:IEC 60068-2-64、MIL-STD-810H)を半角で明記する。

補足:PSDの読み方

ランダム振動の PSD は周波数対加速度密度(g^2/Hz)の曲線で表す。帯域全体の積分が gRMS に一致し、斜線部の傾斜(dB/Oct)でエネルギー配分が分かる。比較時は帯域、総 gRMS、クレストファクタ、試験時間を揃えることが重要である。

補足:ノッチングの実務

共振点での応答過大化を避けるため、制御器に上限(ディスプレイスメント/速度/加速度)を設定し、代表点の応答を監視して入力を自動抑制する。これにより破壊的試験を避けつつ、実環境に近い損傷メカニズムを再現できる。