憐れみ|ルソー

憐れみ

ルソーにおける憐れみとは、自然状態において、人間が生まれつき持っている、他人の不幸を悲しむ同情心のことを指す。人間が自然状態であるというとき、トマス・ホッブズにおいては万人の万人による戦争状態であったが、ルソーにおいては、自己保存を求める自然な“自己愛”とともに、人間と人間のあいだに“憐れみ”があった。トマス・ホッブズに比べて穏健な人間観がある。この憐れみの感情と自己愛の感情に基づき、国家がなくとも人びとは自然人として平和に満ち足りて暮らしていた。しかし、人々が社会を成し、文明を手に入れてから私有財産の観念と同時に人間同士に不平等が生まれる。悲しいことに文明を手にいれたことから、平和な自然状態から憐れみが失われることになる。富をめぐる争いが生まれ、強奪・敵視・羨望・嫉妬へと変質された。ルソーの思想は自然に還れという言葉とともに、文明を持ちながらも自己愛と憐れみにあった自然状態における人間に近づくことを理想とした。