多変量解析|複数の変数間の関係を分析する統計手法

多変量解析

多変量解析は、多変量データ(互いに関係する3種類以上のデータの集まり)を解析するための方法で、複数の変数間の関係性を同時に分析し、データの構造やパターンを明らかにする統計手法である。たとえば、製造工場では、製造工程で熱処理温度、熱処理時間、原料の投入量など、多種類のデータを記録している。これらのデータはしばしば相互に関連しているために個々の分析では見ても成果が期待できないため、これらの膨大なデータ(多変量データ)をまとめて解析し、より複雑なデータの背後にある因果関係や相関関係を明らかにすることが可能である。主に、経済学、心理学、工学、マーケティング、医療など、さまざまな分野で応用されている。

基本概念

多変量解析では、複数の変数を同時に取り扱うことで、変数同士の相互関係や潜在的なパターンを見つけ出すことが可能となる。例えば、売上高に影響を与える要因を分析する際、価格、広告費、顧客数などの複数の変数を同時に考慮することで、各要因の影響度や関連性を明確にすることができる。多変量解析の基本的な考え方は、データ全体の変動を説明するために、複数の変数の情報を統合的に扱うことである。

目的

多変量解析はデータを対象とした技術といえるが、その目的はデータに基づく予想、あるいはデータの要約である。予測は、例えば、吹き付け塗装を行うときのノズルの径や噴射圧力などの原因系から、塗装膜厚の結果を予測したり判別したりする。医療分野では血液検査の結果から、病気を判別する。などを行う。要約は、データの構造の単純化や潜在構造の探索で、そのデータが何を意味しているかを読み取る。

量的変数と質的変数

データには量的変数と質的変数がある。量的変数とは、熱処理温度や熱処理時間などの数量データである。質的変数とは、原料の種類、機械の種類、製造担当者の性別といった数量では表現することができないデータである。多変多変量解析は、量的変数扱われるが、質的変数を扱うには数量化理論が使われる。

数式モデル

多変量解析は測定項目間の関係を数式モデルで表すことができる。また、複数の項目で評価された品質を総合評価を行うことができる。

多変量解析の種類

多変量解析にはさまざまな手法が存在し、目的やデータの特性に応じて適切な手法を選択することが重要である。代表的な手法として、主成分分析(PCA)、因子分析、重回帰分析、クラスター分析、共分散構造分析(SEM)などが挙げられる。主成分分析はデータの次元を削減し、重要なパターンを抽出するために用いられ、因子分析は観測データの背後にある潜在変数を特定する際に用いられる。また、重回帰分析は従属変数に対する複数の独立変数の影響を分析するために使用される。

主成分分析(PCA)

主成分分析(PCA)は、多くの変数をできる限り情報のロスがないように要約し、それを読み取ることで、データの特徴の発見やサンプルのグルーピングに使われる。例えば、国語と英語、数学、理科、社会の成績をそれぞれのクラスで取り、「数学の得意な人は理科も得意」「英語の得意な人は国語も得意です」といった傾向を見つけ出す場合に、主成分分析が利用される。

因子分析

因子分析は、観測された多くの変数をいくつかの潜在的な因子に集約し、その背後にある構造を解明する手法である。この手法は、マーケティングリサーチや心理学などでよく使われ、調査データにおける回答者の意識や行動パターンを分析する際に有効である。たとえば、消費者の購買行動に関するデータから、価格意識、ブランド志向、品質重視などの潜在的な要因を特定することができる。

重回帰分析

重回帰分析は、多くの説明変数と1つの目的変数の因果関係を求め、目的変数(特性値)への影響分析や目的変数(特性値)の予想に使われる。工場で記録されたデータ間には、因果関係(相互関係)が認められることが多く、たとえば、熱処理温度が高いときには、熱処理時間は短いというような関係にある。また、ビジネスにおいて、売上高に対する広告費、価格、季節などの複数の要因の影響を重回帰分析を用いて分析することで、どの要因が最も売上に影響を与えているかを特定できる。

クラスター分析

クラスター分析はデータを類似性に基づいてグルーピングする手法である。データ内に存在する潜在的なパターンやセグメントを発見することができる。例えば、野球の打撃表でいえば、得点力の高いホームランバッタータイプや高い出塁率を誇る堅実タイプ、チャンスに強い高打点タイプなど、特徴ごとにバッターをグループ分けすることができる。クラスター分析はビジネスにおいて、マーケティング分野では、顧客を購買行動や嗜好に基づいてグループ化し、ターゲットマーケティングを行う際にクラスター分析が利用される。また、医療分野でも、患者を症状や診断結果に基づいて分類し、適切な治療法を見つけるために使われる。

多変量解析の課題

多変量解析には多くの利点があるが、課題も存在する。まず、大量のデータを扱うため、データの前処理や欠損値の処理が重要となる。また、解析結果の解釈が難しい場合があり、データの背後にある意味を正確に理解するには高度な知識が必要である。さらに、データの分布や変数間の相関関係に注意を払わなければ、誤った結論に至るリスクもある。

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