加工
加工とは、原材料に力・熱・電磁エネルギーなどを作用させ、所望の形状・寸法・表面性状・機能を得るための一連の工学的処理である。設計図面で規定された公差や幾何特性を満たしつつ、品質・コスト・納期(QCD)を両立させる生産技術の中核であり、除去・変形・成形・接合・表面改質・積層造形など多様な手段を最適に選定して工程計画を組む点に特徴がある。製品ライフサイクルでは、素材選定やDFMと連動し、設備能力・工具寿命・測定法・安全衛生・環境負荷まで統合的に管理することが重要である。
定義と位置づけ
加工は、材料のマクロ形状から表面粗さ・残留応力・組織状態に至るまでを制御対象とする。設計要件(機能・信頼性)を満たす最小コスト・最短リードタイムの実現が目的であり、工程能力指数や歩留まりなどの指標で実行度を評価する。工程は前後の物流・検査・治具段取りと密接に結びつき、セル生産やライン生産などの方式選択にも影響する。
主要な分類
加工の体系化は工程設計の出発点である。材料・形状・求める精度によって手段は大きく異なるため、分類理解が選定の精度を高める。
- 除去:切削(旋削・フライス・穴あけ)、研削、放電、レーザ切断など
- 変形(塑性):鍛造、圧延、曲げ、深絞り、押出し
- 成形:鋳造、粉末冶金、射出成形、ブロー成形
- 接合:溶接、ろう付け、はんだ付け、機械的締結(例:ボルト)
- 表面改質:熱処理、めっき、化成処理、ショットピーニング、ブラスチング、コーティング
- 積層造形:粉末床溶融結合、材料押出し、光造形など
加工原理と主要パラメータ
切削では切削速度、送り、切込み、工具材種とコーティング、切削液供給が主因であり、発熱と工具摩耗、びびり抑制が核心課題である。塑性では応力–ひずみ曲線、加工硬化、成形限界、潤滑が支配要因となる。研削は砥粒作用と熱損傷管理、放電は放電エネルギー密度と再凝固層制御が鍵である。レーザや電子ビームは入熱と冷却速度で熱影響部を設計する。
材料と加工性
鉄鋼は炭素量・合金元素・組織で被削性が変わり、焼入れ材は砥削・放電が現実的となる。アルミは高能率切削が可能だが溶着摩耗に注意する。銅系は高熱伝導で熱管理が容易、チタンやニッケル基は低熱伝導と反応性で工具に厳しい。樹脂は熱特性と粘弾性が支配し、金型設計が品質を大きく左右する。
被削性と評価指標
被削性は工具寿命、切削抵抗、仕上面粗さ、チップ形状、加工温度などで総合評価する。被削性向上には硫黄・鉛などの快削元素付与、潤滑・切削液管理、工具コーティング最適化が有効である。
設備・工具・治具
NC旋盤やマシニングセンタ、研削盤、放電・ワイヤ放電、プレス機、射出成形機、レーザ加工機、産業用ロボットなどが基盤設備である。ツールプリセッタと自動段取り、クランプ治具の再現性、熱変位補正、主軸剛性・減衰特性が精度安定の要点である。CAMによるパス最適化や工具ライブラリ管理は段取り時間短縮に寄与する。
精度・公差・面粗さ
幾何公差(位置度、平面度、真円度など)と普通公差、表面性状(Ra、Rz、パターン)の指定は製品機能とコストの妥協点で決める。過剰品質は工数と工具費を増大させるため、機能必要最小限の指定が望ましい。熱変形・工具たわみ・機械誤差・バリ生成を見越したオフセットが工程能力を支える。
測定と検査
三次元測定機、ゲージ、ピンゲージ、ねじゲージ、表面粗さ計、真円度測定器、画像測定、非破壊検査(浸透・磁粉・超音波・X線)を組み合わせ、初品・巡回・最終検査で統計的に管理する。治具内検査やインプロセス検出は不良流出を抑える。
工程設計とDFM/DFA
工程設計は工順、タクト、ラインバランシング、ボトルネック解析、治工具計画、搬送と在庫点の設定を含む。DFM/DFAでは部品点数削減、対称化、基準面の明確化、穴径の標準化、工具アクセス性確保、最小可製コストの公差設定などを行う。サイクルタイムと工具寿命の最適化は全体原価に直結する。
品質と統計管理
統計的工程管理(SPC)でCp・Cpkを監視し、ヒストグラム、管理図、パレート、散布図、層別などのQC七つ道具を用いる。FMEAで故障様式と影響、RPN低減策を明確にし、4M変更点管理とトレーサビリティで異常原因を迅速特定する。ばらつき設計や実験計画で頑健条件を探索する。
安全衛生・環境
切削油ミスト、騒音、振動、熱、ボルト締結時の挟み込みなどのリスクを特定し、保護具、局所排気、カバー、インタロックで対策する。材料・薬剤の選定ではVOCや重金属の管理、切粉・スクラップのリサイクル、エネルギー効率化を考慮し、環境マネジメントで継続的改善を図る。
近年の動向
5軸・ハイスピード切削、超音波援用・レーザ援用、難削材への複合的アプローチ、アディティブとサブトラクティブのハイブリッド、デジタルツインと工程シミュレーション、IoTによる稼働・工具状態モニタリング、AIによる条件最適化や外観検査自動化などが進展している。カーボンニュートラル対応の低入熱・高能率化も重要である。
規格・図面解釈
図面仕様の適切な解釈は加工の成否を左右する。幾何公差の記号体系、表面性状の指示法、普通公差の等級、ねじ・はめあい、公差方式、基準面の取り方、測定基準の整合を理解し、JISやISOの要求事項を工程へ落とし込むことで、過不足ない品質と安定生産を実現できる。