先割りテーパピン|高精度な固定を実現する機械要素

先割りテーパピン

先割りテーパピンは、機械部品同士を正確に位置決めし、抜け防止の役割を果たすために使用される円錐形のピンであり、その先端が縦に割れていることが特徴である。この割れ目は弾性変形を可能にし、ピンを挿入する際に適度な圧力を生み出す。これにより、振動や衝撃に対する緩み防止効果が高まり、特に頻繁に取り外しを行わない固定部位において重宝される。用途は産業機械、治具、金型、エンジン構成部品など多岐にわたる。

形状と材質

先割りテーパピンの形状は、円錐状で全長にわたりわずかに細くなっており、片側の端部に縦のスリット(割れ)がある。このスリット部分は弾性を持ち、ピン挿入時に圧縮されて密着力を高める働きをする。一般的な材質には、炭素鋼ステンレス鋼が使用され、必要に応じて焼入れ処理が施されることで耐摩耗性や引張強度が強化されている。腐食環境ではステンレス鋼製が選ばれることが多い。

テーパ角と標準規格

テーパ角ピンの性能に直接影響を及ぼす要素であり、JIS(日本産業規格)では1/50のテーパ(すなわち長さ50に対して直径1のテーパ)が標準とされている。この角度により、ピンの抜けにくさと挿入のしやすさのバランスが保たれている。標準規格としては、JIS B 1355などがあり、ピンの長さ、直径、材質などが定められている。これにより、部品間の互換性や再現性が確保される。

使用方法と取付手順

先割りテーパピンは、あらかじめ加工されたテーパ穴に圧入することで取り付けられる。取り付け時にはハンマや圧入工具を用いてピンを挿入し、完全に密着させる。テーパの自己保持効果により、接着剤ネジのような追加の固定手段を用いなくても十分な保持力が得られる。また、割り部分が微妙な変形を許容するため、穴の微小な誤差を吸収でき、安定した固定が可能である。

利点と欠点

  1. 利点:
    • 高い位置決め精度
    • 抜け止め機能を兼ねる
    • 繰り返し使用可能
  2. 欠点:
    • 専用工具が必要
    • 取り外しに手間がかかる
    • 疲労破壊のリスクがある

先割りテーパピンの形状と寸法(単位 ㎜) 2-20

先割りテーパピンの形状と寸法

呼び径 2 2.5 3 4 5 6 8 10 12 16 20
d 呼び
円すい
直径
2.0 2.5 3.0 4.0 5.0 6.0 8.0 10 12 16 20
d' 基準寸法 2.08 2.60 3.12 4.16 5.20 6.24 8.32 10.40 12.48 16.64 20.80
許容差 0
-0.040
0
-0.040
0
-0.040
0
-0.048
0
-0.048
0
-0.048
0
-0.058
0
-0.058
0
-0.070
0
-0.070
0
-0.084
n 最小 0.4 0.4 0.6 0.6 0.6 0.8 0.8 1.0 1.0 1.0 1.6
t 最小 3 3.5 4.5 6 7.5 9 12 15 18 24 30
t 最大 4 5 6 8 10 12 16 20 24 32 40
a 0.25 0.3 0.4 0.5 0.63 0.8 1.0 1.5 1.6 2.0 2.5
A1―A2
B1―B2
最大
最大 0.2 0.2 0.3 0.3 0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.5 0.8
10
12
14
16
18
20
22
24
26
28
30
32
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
90
95
100
120
140
160
180
200
呼び径 2 2.5 3 4 5 6 8 10 12 16 20

10-180は、lの寸法である。

先割りテーパピンの呼び方

先割りテーパピンの形状と寸法(単位 ㎜)2-20

呼び径 2 2.5 3 4 5 6 8 10 13 16 20
d
基準径
2 2.5 3 4 5 6 8 10 13 16 20
d′
基準寸法
2.08 2.6 3.12 4.16 5.2 6.24 8.32 10.4 13.52 16.64 20.8
許容差
(H9)
+0.025
0
+0.025
0
+0.030
0
+0.030
0
+0.030
0
+0.036
0
+0.036
0
+0.043
0
+0.043
0
+0.043
0
+0.052
0
n
最小
0.4 0.4 0.6 0.6 0.6 0.8 0.8 1 1 1 16
t
最小
3 3.5 4.5 6 7.5 9 12 15 20 24 30
t
最大
4 5 6 8 10 12 16 20 26 32 40
A1-A2
B1-B
最大
0.2 0.2 0.3 0.3 0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.5 0.8
12
14
16
18
20
25
28
32
36
40
45
50
56
63
70
80
100
112
125
140
160
180
200
225
呼び径 2 2.5 3 4 5 6 8 10 13 16 20

JIS B 1353付属書。
割込み部先端の偏肉=A₁-A₂。
割込み部底の偏肉=B₁-B₂。

ISOによらない先割りテーパピン(単位 ㎜)2-20

呼び径 2 2.5 3 4 5 6 8 10 13 16 20
d
基準径
2 2.5 3 4 5 6 8 10 13 16 20
d′
基準寸法
2.08 2.6 3.12 4.16 5.2 6.24 8.32 10.4 13.52 16.64 20.8
許容差
(H9)
+0.025
0
+0.025
0
+0.030
0
+0.030
0
+0.030
0
+0.036
0
+0.036
0
+0.043
0
+0.043
0
+0.043
0
+0.052
0
n
最小
0.4 0.4 0.6 0.6 0.6 0.8 0.8 1 1 1 16
t
最小
3 3.5 4.5 6 7.5 9 12 15 20 24 30
t
最大
4 5 6 8 10 12 16 20 26 32 40
A1-A2
B1-B2
最大
0.2 0.2 0.3 0.3 0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.5 0.8
12
14
16
18
20
25
28
32
36
40
45
50
56
63
70
80
100
112
125
140
160
180
200
225
呼び径 2 2.5 3 4 5 6 8 10 13 16 20
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