仏教
仏教は、前5世紀頃シャカが始めた宗教。徹底した無常観に立ち、八正道の実践と四諦(生老病死の四苦から離脱する正しい認識方法)による解脱を説いた。当時支配的であったヴァルナ制という身分制度を否定し、慈悲の心と人間の平等を説いた。クシャトリヤをはじめ、ヴァイシャからも支持された。
ガウタマ=シッダールタ
ガウタマ=シッダールタは、シャカ族(ヒマラヤ山麓ネパールのインド国境近くの部族)である、カピラヴァストゥ国の王子である。29歳で出家し、35歳のときブッダガヤの菩提樹の下で悟りを開いて仏陀となり、仏教を開いた。以降、80歳で没するまでガンジス川の中・下流域を旅してまわり衰えを記した。悟りを開いてからはブッダ(仏陀、真理を開いたもの)シーキャムニ(釈迦牟尼、釈迦族出身の聖者)などの尊称で呼ばれる。(生没年代については、前563頃~前183頃前463頃~前383頃など諸説がある。)
ブッダ
ブッダ(仏陀)とは、覚者・智者をの意味では、悟りを開いた者のことである。
解脱
解脱とは、仏教においては、輪廻から脱却し、生老病死の四つの人生苦を超越すること。
中道
中道とは、ブッダは正しい方を中道と称し、極端な苦行と快楽を否定した。
四諦
サールナートの郊外、鹿野苑は仏陀の初めての説法したが、そこで四諦という四つの真理を語った。
- 苦諦:この世はすべて苦であると見極めること
- 集諦:苦の原因は執着と欲望を集めることだと知ること
- 滅諦:苦の原因である執着と欲望を捨てること
- 道諦:それを導く八正道を実践すること
八正道
八つの正しい道(八正道)の実践に努め、自我の欲望(煩悩)を捨てることによって解脱すなわち涅槃(寂滅)の境地に達することができると説いた。こうした教理は主として解脱を求める出家者(比丘)にむかって説かれたものである。
- 正見:物事を正しく見ること
- 正思惟:正しい考え方
- 正語:正しい言葉を話す
- 正業:正しい行いをすること
- 正命:正しい生活を送ること
- 正精進:正しい努力を重ねること
- 正念:正しい自覚をもつこと
- 正定:正しい瞑想を行うこと
十二縁起
十二縁起とは、人間生存の様相である。仏陀が成道にいたる悟りの境地を縁起の思想によって考察した。人の一生を無明の過去世から再び無明の彼方に転じていく。
- 無明:なにもわからない状態
- 行:なにかが起ろうとする働き
- 識:なにかを識別しようという働き
- 名色:心と体の発達
- 六入:目・耳・鼻・舌・身・意(五感と意識が備わる)
- 触:周囲の物事と接触すること
- 受:感受の作用
- 愛:自我への愛着
- 取:物事への執着
- 有:生存し、存在すること
- 生:生きて、他のものを生み出す
- 老死:老い死ぬこと
意識
仏教では、眼、耳、鼻、舌、身、意の感覚器官を六根といい、六根が対象物と接触すると認識が起る。意とは思考器官の認識のことを意識という。
悟り
悟りとは真実を知り、すべてを見通すこと。悟りは、目覚めであり、たとえ苦しみでも大きく肯定される光明を得る。心の目覚めを正覚、目覚めたものを覚者という。
四苦八苦
生、老、病、死の四つの苦しみに加え、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五蘊盛苦という四つの苦しみを合わせて八苦という。
四苦
- 生苦:生まれたための苦しみ
- 老苦:老いていく苦しみ
- 病苦:病による苦しみ
- 死苦:死ぬ苦しみ
- 愛別離苦:愛する者と出会ってもいずれ離れ、死に別れなくてはならない苦しみ
- 怨憎会苦:嫌いな相手、憎む人とも出会わなくてはならない苦しみ
- 求不得苦:求めるものが得られず、思い通りにならない苦しみ
- 五蘊盛苦:五蘊に執着する苦しみ
五蘊
五蘊は、心身とその周囲を作る集合体である。蘊はかたまりや集合体のことで、心身は五つの塊からなっている。
- 色:物質
- 受:感受作用
- 想:概念作用
- 行:意識作用
- 識:認識作用
諸行無常
諸行とは、関係性によって存在するすべての現象・事物のことで、無常とは、同じ状態にとどまることなく、生じ、消え、変化すること。
諸行は無常にして、皆これ変易の法なることを知る。ゆえに受はことごとく苦なりと説く。悟れるものの知るところなり。
三法印
- 諸行無常:すべては同じところにとどまらず移り変わる
- 諸法無我:すべてのものは確実な実体を持たない
- 涅槃寂静:煩悩や苦のない、理想的な静かな境地
四法印
三宝印に加えて、すべてのものは苦であるという一切皆苦を加えた者を四法印である。