人倫
人倫とは、儒教的な 意味合いで人間の共同体やその秩序のこと。
ヘーゲルの人倫
ヘーゲルは、人倫とは、人間の社会関係の抽象的な形式である客観的な“法”と、個人の主観的な確信にすぎない“道徳”とを止揚的に統一したものとした。特にカントの道徳を主観的なものとして批判し,その対極に客観的で抽象性が問題となる法を対置して、両者を総合し、バランスが取れた状態を「人倫」と呼んだ。
さらに精神の自由の理念が、具体的な社会生活において、生き生きと実現されたものであるといえ、人倫は、家族・市民社会・国家の弁証法的に発展し、「国家」に至る時に、人倫は完成され、国家の成員である個人もまた国家が定める法のもとに自由で理性的な自己を実現することができる。
『精神現象学序論』ヘーゲル
〔個別的なものと普遍的なものとの一体性〕の理念の概念はもっぱら精神として存在する。すなわち,
おのれをるとともに現実的でもあるものとして存在する。なぜなら精神は、おのれ自身を客体化する働きであり、おのれの諸契機の形式を通しての運動であるからである。だから精神の展開はつぎのようになる。
A.直接的もしくは自然的な倫理的精神、-家族。
この実体性はその一体性の喪失態へ、分裂態へ、そして相関的なものの立場へと移る。こうしてそれは、
B.市民社会となる。すなわち独立の個々人である成員たちの結合態、したがって形式的普遍性における結合態、成員たちの欲求を介しての、また人格と所有との安全を保障する手段たる法律体制を介しての、そして彼らの特殊利益と共通利益のための外面的秩序を介しての、結合態となる。こうした外面的国家は、
C.実体的普遍者とこれに捧げられた公的生活との目的および現実性へ-すなわち国家体制ないし憲法へとつれもどされて、おのれをとりもどす。