二項分布
二項分布は、成功か失敗か、不適合か適合か、という2つのどちらかしか得られないようなデータが、ある試行を一定回数繰り返したとき、成功する回数の確率分布を示す確率分布である。これは離散型確率分布の一種であり、各試行が独立して同一の成功確率を持つ場合に適用される。例えば、コインを10回投げて表が出る回数や、製品の検査で不良品が出る回数など、現実の多くの事象に適用できる。
二項分布の条件
二項分布が適用されるためには、次の4つの条件を満たす必要がある。まず、試行の回数が固定されていること(n回)。次に、各試行が独立していること。そして、各試行において成功と失敗の2つの結果のみが存在すること。最後に、各試行で成功する確率pが一定であることである。この条件を満たす場合に、二項分布を用いて確率を求めることができる。
二項分布の確率関数
二項分布の確率関数は、ある試行において成功する回数を求めるためのものである。n回の試行で成功する回数をk回としたとき、その確率P(X = k)は次の式で表される。pは1回の試行で成功する確率、(1-p)は失敗する確率である。
二項分布のグラフ
期待値と分散
二項分布の期待値(平均値)と分散は、次のように表される。期待値はn回の試行における成功の平均回数であり、n×pで計算される。一方、分散は成功のばらつきを示し、n×p×(1-p)で求められる。これらの指標により、二項分布の特徴やデータの傾向を把握することができる。
正規分布との関係
試行回数nが大きくなると、二項分布は正規分布に近づくという性質がある。特に、np ≥ 5かつn(1-p) ≥ 5の条件を満たす場合、二項分布は正規分布で近似できる。この性質を利用することで、計算が複雑な場合でも簡単に確率を求めることが可能となる。
ベルヌーイ分布
二項分布は、ベルヌーイ分布を拡張したものである。ベルヌーイ分布は1回の試行における成功・失敗の確率を示すが、二項分布はこれをn回繰り返したときの成功回数の確率分布を表す。したがって、ベルヌーイ分布は二項分布の特別なケース(n = 1)であるといえる。
グラフの特徴
二項分布のグラフは、試行回数nと成功確率pによって形が異なる。成功確率pが0.5に近いほど、グラフは左右対称になり、pが0.5から離れるほど片側に偏る。また、nが大きくなるほど山が広がり、滑らかな曲線に近づく。これらの特徴により、二項分布の性質を視覚的に理解することができる。
二項分布の利用例と応用
二項分布は、多くの実際の事象に応用されている。製造業の品質管理や医療分野の臨床試験、マーケティング調査などで広く利用されている。
製造業での利用例
例えば、製品の不良率が5%である場合、10個の製品を検査したときに不良品が出る確率を求めることができる。また、試験で正答率が80%の問題を10問解いたとき、8問正解する確率なども二項分布で求められる。こうした現実の問題に対する確率の分析や予測に二項分布は有用である。
マーケティングでの利用例
例えば、顧客満足度調査において、ある商品に満足する顧客の割合を分析する際に、二項分布を用いて満足度の分布や信頼区間を求めることができる。