レーザーダイオード|半導体でレーザー光を生み出す小型光源

レーザーダイオード

レーザーダイオード(LD)は、半導体材料を用いてレーザー光を発振する光源デバイスである。ダイオード構造に電流を流すと、活性層のキャリア再結合によって誘導放出が起こり、特定の波長で高指向性の光を生成する。LEDと同様のpn接合を基本にしつつ、反射鏡を兼ねた端面や薄膜コーティングなどの光学設計が施されることで、増幅されたコヒーレント光が取り出される点が大きな特徴だ。光通信やレーザープリンタ、ディスクドライブなど幅広い分野で活躍しており、小型・高効率という特性から低消費電力化にも貢献する。

構造と原理

レーザーダイオードの基本構造は、活性層を挟んだp型とn型の半導体層から成る。活性層に電子と正孔を効率よく閉じ込めるため、屈折率が異なるクラッド層が設計されている。端面はミラー効果を発揮するように加工され、光が共振器の内部で往復しながら増幅される。共振器内に蓄積される光が一定レベルに達するとレーザー発振が起こり、端面から指向性の高い光が出力される仕組みだ。波長は主に活性層を構成する材料のバンドギャップエネルギーで決まり、InGaN系、AlGaAs系など多様な素材が使われている。

種類と特徴

レーザーダイオードには、エッジエミッタ型とベリー面(面発光)エミッタ型の大きく2種類が存在する。エッジエミッタ型は活性層の端面を共振器として利用し、高出力を得やすい反面、ビーム形状が細長い楕円になる傾向がある。一方、面発光レーザー(VCSEL)は上下面が共振器の反射鏡となり、直上方向に光を出力するためビーム形状が対称に近い。さらに多数の素子をアレイ化しやすく、小型化・量産化に有利である。また波長可変型やシングルモード型など、用途に合わせて細分化されている点も特色だ。

応用分野

光通信では、長距離かつ大容量データを伝送するために、単一モードレーザーダイオードが数多く使われている。波長安定性が高く、歪みの少ない波形を維持しやすいことから、データの品質を左右する重要な役割を担う。一方、産業用途では、金属の切断や加工に利用される高出力レーザーダイオードも活躍している。さらに近年は、プロジェクターやLiDAR(ライダー)など、可視光や赤外光を用いたセンシング技術にもレーザーダイオードが導入され、高性能化と省エネ化を同時に実現している。

利点と課題

レーザーダイオードは小型で消費電力が低く、コヒーレント光を高効率で生成できるという利点を持つ。一方で熱暴走や寿命などの課題があり、駆動時の温度管理や光学設計が求められる。半導体素子ゆえに動作電流や温度特性がビーム品質に直結するため、冷却機構やドライバー回路との最適な組み合わせが重要になる。また高出力化を追求するほど熱密度が上昇しやすく、結晶欠陥や劣化が進むリスクも高まる。これらを克服するための材料研究やパッケージ技術が日々進化している。

最新動向

高出力かつ高効率な青色レーザーダイオードが登場したことで、レーザープロジェクターや3Dプリンタ領域への応用が一気に加速している。短波長域のレーザー光はエネルギーが高いため、加工精度や記録密度を向上させる効果がある。さらには量子コンピューティングやバイオメディカル分野で利用される波長帯の開発も活発化しており、次世代の高速通信や微細加工技術におけるキーデバイスとして期待されている。製造コストの低減と信頼性の向上が進めば、より多くの用途でレーザーダイオードが主流となるだろう。

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