ユダヤ人|ユダヤ教を信じるイスラエルの民

ユダヤ人

ユダヤ人は古代中東に起源をもつ民族・宗教集団である。一般的には、ユダヤ教を信じる人々として知られ、ユダヤ教を信じていれば、人種や言語に関係なくユダヤ人とされる。(参考:ヘブライ人)世界各地にわたる長い離散の歴史を通じて、宗教、文化、社会組織など多彩な面を形成してきた。ユダヤ人は当初、イスラエルの地を中心に独自の信仰を軸とした共同体を築き、後に多様な政治的・社会的環境のもとで自らのアイデンティティを維持・発展させている。

ユダヤ教

ユダヤ人とはユダヤ教を信じる者と定義される。ユダヤ教は現在のイスラエルを中心に信者がおり、日本でもよく知られる宗教のひとつである。紀元前から存在しており、選民思想と一神教を特徴とすることから、迫害されていた。

宗教と文化

ユダヤ人の宗教は主にユダヤ教であり、一神教であることが最大の特徴である。安息日(シャバット)や割礼、食事規定(カシュルート)などを通じ、世俗社会との共存を保ちつつも独自の慣習を維持している。トーラー(律法)に加え、タルムードのような伝承文学も大切に受け継がれ、これらの典拠が宗教的な教義や生活習慣の根拠となってきた。また、絵画や音楽、舞台芸術といった文化活動にも積極的であり、古典的な宗教芸術から現代的な創作まで幅広く展開している。

起源と歴史

ユダヤ人の起源は旧約聖書に記されるヘブライ人にさかのぼるとされる。紀元前10世紀頃には古代イスラエル王国が誕生し、統一王国と分裂王国の歴史を経ながら宗教的アイデンティティを培っていった。しかし紀元前6世紀のバビロン捕囚以降、彼らは幾度となく他民族の支配や弾圧を経験することになる。紀元70年にはローマ帝国によるエルサレム陥落が決定的な転機となり、以降は世界各地へ流散するいわゆる「ディアスポラ」の時代が長らく続いた。

嘆きの壁

嘆きの壁とは、ユダヤ人にとっての聖地で、かってユダヤ人が建設し、約2000年前にローマ帝国によって破壊された神殿の一部である。いまも残る西壁は、夜間に夜露に濡れ、それがユダヤ人の悲しい歴史を嘆いているようにも見えるため、嘆きの壁と呼ばれるようになった。信心深いユダヤ教徒が、壁に向かって聖書が読まれる。

ユダヤ人迫害

もともとキリスト教は厳格主義をとるユダヤ教に対するアンチテーゼとして生まれ、ユダヤ教で身分の低かった弱者の間で信者が広まった。このイエスキリスト教に対してユダヤ人は脅威に感じたため、ローマ帝国と策謀し、イエスを十字架にかけた。このことは、キリスト教徒が信じる『新約聖書』に書かれており、以降、イエスを十字架にかけた者として、ヨーロッパのキリスト社会で迫害されることとなる。

ディアスポラ

ユダヤ人は、紀元前にエルサレム周辺に王国を築いていたが、一世紀にローマ帝国によって滅ぼされ、ユダヤ人たちはヨーロッパ各地にディアスポラ(離散)した。過酷な歴史ではあったが、そのことで世界中にユダヤ教が広がることとなる。

ディアスポラと社会
  • 世界各地への広がり:ヨーロッパ、中東、北アフリカ、アジア、アメリカ大陸など多彩な地域に居住し、それぞれの土地の言語や文化に適応した。
  • 虐殺や排斥の歴史:中世から近代にかけて、反ユダヤ主義の蔓延により迫害・追放・虐殺が繰り返された。ホロコーストはその最も悲劇的な例である。
  • 経済・学問への貢献:商業、金融、科学、哲学の分野で優れた成果を収める者が多く、各国の社会発展に大きく寄与してきた。
言語の多様性

ユダヤ人は地域ごとにさまざまな言語を使用してきた。イスラエルの公用語であるヘブライ語は古来からの宗教言語としての地位を持ち、近代になって日常言語としても復活を果たした。一方、ヨーロッパではイディッシュ語やラディーノ語などがコミュニティ内で広く話され、各地域で独特の文化表現を育んでいる。これらの言語は民間伝承や文学に色濃く影響を及ぼし、母語の違いによる文化的多様性はユダヤ人コミュニティの大きな特徴となっている。

高利貸し

中世のヨーロッパでは、お金を扱う金融業は「汚い仕事」と見られ、差別されていたユダヤ人が担うことになる。金融業で経済力をつけたユダヤ人は、キリスト教徒から妬みを買い、ユダヤ人に対する偏見が助長された。

ユダヤ人虐殺

第二次世界大戦中のナチス・ドイツで大規模な虐殺(ジェノサイド)が行われた。アウシュビッツ収容所などで知られるが、ユダヤ人の虐殺はドイツでけでなく、ドイツが占領したヨーロッパ全土でユダヤ人の迫害が行われた。ドイツ本国では、18万人、ポーランドでは260万人、ルーマニアでは75万人、ドイツ占領下のソ連も75万人のユダヤ人が殺された。ヨーロッパ全体では、約600万人が虐殺されたと言われる。

イスラエル

ドイツに虐殺されたユダヤ人は国際的な同情を集め、またイギリスが独自の国の建設を約束したことから、ユダヤ人にとって約束の地であるパレスチナにイスラエルが建国された。イスラエルには、世界各地からイスラエルへの帰還を希望する人々が帰国を申請している。(イスラエルの建国

エルサレム

エルサレムはユダヤ人にとっての聖都で「平和の町」あるいは「美女神の基礎」に由来すると言われる。イスラエルはエルサレムを首都と宣言しているが、国連決議では、国際管理と決められ、イスラエルの主張は国際的には認められていない。

中東戦争

第二次世界大戦後、パレスチナの地を巡ってイスラエル・ユダヤ人とパレスチナ・アラブ人の間で中東戦争が起こる。4回の大規模な戦闘が行われたが、戦争の収拾がつかず、泥沼化した。

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