マスクレス露光|マスク不要で高解像度な直接描画法

マスクレス露光

マスクレス露光とは、従来のフォトリソグラフィ工程で必要とされてきたフォトマスクを用いずに回路パターンを形成する技術である。直接ウェーハ上のレジストへ光や電子ビームなどを照射し、必要な形状を選択的に描画していくため、試作段階や多品種少量生産において大きな利点をもたらす。フォトマスクの作製コストやリードタイムを削減でき、製造工程の柔軟性が向上する点が注目されている。

原理

マスクレス露光の根本的な仕組みは、描画すべきパターン情報をデジタルデータとして保持し、それを光学系またはビーム制御系を介して直接レジスト上に転写するというものである。例えばレーザーを使用する場合は、半導体レーザーやHeCdレーザーなどを高速でオン・オフしながら走査し、微細パターンを描画していく。電子ビームを用いる電子ビーム描画装置も同様の考え方であり、デジタル情報に基づいてビームを制御し、サブミクロンからナノメートル単位のパターンを形成可能となっている。

歴史

リソグラフィ技術は初期に接触式から近接式へと移行し、その後プロジェクション方式が半導体量産の主流となった。しかし高精細化と多品種化が進む中で、フォトマスクをわざわざ製作せずともパターンを直接描く手法への関心が高まった。研究機関などでの微細パターン作製を皮切りに、試作段階での自由度向上を狙ってマスクレス露光技術が実用化され、近年では生産性の改善も図られている。

レーザー描画方式

レーザーを用いたマスクレス露光は、光学系によってビームを細く絞り、ガルバノミラーやステージ制御によりレジスト表面をスキャンしながら描画する。レーザー光源の選定により露光波長を自由に選べるため、多様なレジスト材料に対応できる特徴がある。また、コンピュータで制御できるため描画パターンを迅速に変更可能であり、試作におけるリードタイム短縮や少量多品種生産への対応が容易となる。

電子ビーム描画方式

電子ビーム描画方式は、電子ビームリソグラフィ技術として古くから研究されてきた手法である。高い解像度が得られる反面、ビームの照射面積が狭いため、一度に露光できる範囲は小さい。そのため大面積を描画するには時間がかかるが、高精細パターンの試作や微細加工への応用に適している。特に先端研究や高付加価値部品の開発においては、サブ10nmクラスの描画が期待されている。

光源の進化

近年ではダイレクトレーザーライティングにおいて超短パルスレーザーが導入され、レジストの選択的な反応制御や非線形光学効果を利用した高いアスペクト比の描画が可能になっている。露光時間の短縮や熱ダメージの低減にもつながり、ウェーハのみならずフォトニクスデバイスの作製にも応用が広がっている。

メリットと課題

  • メリット:フォトマスク不要で開発コスト削減、デザイン変更が柔軟
  • メリット:少量多品種生産や試作に向く
  • 課題:大量生産には露光速度が課題となりやすい
  • 課題:高解像度化に伴い装置のコストが上昇

応用例

デバイスの試作や研究段階においては、工程の柔軟性が高いマスクレス露光が重宝されている。例えばシリコンフォトニクス領域では、頻繁にデザインを変更しながら最適化を繰り返すプロセスが必要となるため、フォトマスクを都度作らずにパターンを書き換えられる利点が大きい。また、微細流路やバイオチップなどの特殊形状を必要とする分野でも、複雑なパターンを短期間で試作可能であることが注目されている。

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