マスクレスリソグラフィ
マスクレスリソグラフィとは、従来のフォトリソグラフィ工程で使用するフォトマスクを必要とせず、直接描画方式で微細パターンを形成する技術である。半導体やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの分野で、プロトタイプ開発や高精度な試作に利用されることが多い。レーザー光や電子ビームなどのエネルギー源を制御し、基板上の感光レジストに直接パターンを書き込むのが特徴であり、高い柔軟性と短い開発サイクルを実現できる。
原理
通常のフォトリソグラフィではマスクを通してパターンを露光するため、マスクの作成とその検証に大きな労力と時間がかかる。一方でマスクレスリソグラフィは、CADデータから直接制御されるビームを用い、レジストを局所的に露光する。例えばレーザードライレクトライティングでは、高精度なステージとレーザー光学系を組み合わせることで、数µmレベルのパターン描画が可能である。電子ビームを用いる方式では、さらに高い分解能が得られるが描画速度の面で課題が生じやすい。
作成し、その後、多くの場合エッチングによって基板材料に転写できるようにすることです。電子ビームリソグラフィの主な利点は、10 nm未満の解像度でカスタムパターン(直接描画)を描画できることです。この形式のマスクレスリソグラフィは、解像度が高くスループットが低いため、
— ゑ (@irohani_irohani) February 26, 2020
主な技術
マスクレスリソグラフィには各種の方式が存在する。レーザー光を高速走査してレジストを直接露光するダイレクトライティング方式、DMD(Digital Micro-mirror Device)を利用して微小ミラーでパターンを投影する方式、さらには電子ビーム直接描画方式などが挙げられる。DMD方式は複数のミラーを同時に制御するため、生産性の向上と柔軟なパターン生成を両立できると期待されている。
応用例
試作品の少量生産や微細な構造が要求されるMEMSの製造、研究開発段階の設計検証などにマスクレスリソグラフィが活用される。マスク費用を削減できるため、多品種少量生産のニーズが高い産業分野では特に有効である。また、フレキシブル基板や3D実装技術にも応用が拡大しており、高精度かつ高スループットを求める現場で検討が進んでいる。
レーザー方式の特徴
レーザー方式のマスクレスリソグラフィは、フォトマスクの設計・製作期間を大幅に短縮できる利点がある。高精度ステージやガルバノスキャナなどを組み合わせれば、微細で複雑なパターンを比較的高速に描画可能となる。ただし、スループットはフォトマスク方式に比べて低下しやすく、大量生産には向かない場合がある。
電子ビーム方式の特徴
電子ビームを用いるマスクレスリソグラフィでは、数nmレベルの極めて高い解像度が得られる点が強みである。先端半導体デバイスやナノスケールのパターン形成に適しているが、露光速度が遅く、大面積基板への適用には限界がある。研究開発用の少量試作や超高精度を求める分野では依然として重要な選択肢となっている。
利点
マスクレスリソグラフィの主な利点として、マスク製作コストの削減や設計変更への柔軟な対応が挙げられる。少量・多品種の試作に適し、短納期でデザイン検証を進められるため、製品開発サイクルを効率化できる。また、シミュレーションデータや修正データを即座に描画に反映できるため、開発工程のスピードアップに寄与する。
課題
一方でスループットの問題や、ビーム制御装置の高コスト化がマスクレスリソグラフィの普及を妨げる要因となっている。特に大量生産ラインでは、マスク方式の露光装置が圧倒的に高速であるケースが多く、量産段階では依然として従来方式が強い。また、電子ビーム方式では描画範囲に限界があるなど、装置の開発・改良が進んでいるが課題は残る。それでも試作・研究用途や特殊な微細パターン形成には不可欠な技術であり、新たな露光方式との組み合わせや装置のコストダウンが期待される。