プーリー|ベルトを掛けて動力を伝える回転車

プーリー

プーリーとは、回転軸に取り付けてベルトやロープ、ワイヤを掛け、動力の伝達や運動方向の変換を行う円盤状の機械要素である。日本語では「ベルト車」や「滑車」と訳され、モーターやエンジンの回転を離れた軸へ伝える用途で、自動車、工作機械、コンベヤ、農業機械、OA機器まで幅広く使われている。歯車による伝動と異なり軸間距離を大きく取れるため、レイアウトの自由度が高く、コストも安い。組み合わせるベルトの種類に応じて平プーリー、Vプーリー、タイミングプーリーなどに分類され、JIS B 1854(Vプーリー)やJIS B 1856(タイミングプーリー)といった規格で形状・寸法が標準化されている。

プーリーによる伝動の原理

駆動側のプーリーが回転すると、巻き掛けられたベルトとの接触面に生じる摩擦力によって従動側のプーリーへ回転が伝わる。伝達できる動力は、ベルトの張力差と接触面の摩擦係数、そして巻き付け角に依存する。オイラーの摩擦伝動理論によれば、張り側張力T1と緩み側張力T2の比はT1/T2=eμθで表され、摩擦係数μと巻き付け角θ(ラジアン)が大きいほど伝達能力は高まる。変速比は駆動側と従動側の直径比で決まり、直径100mmの駆動プーリーと直径200mmの従動プーリーを組み合わせれば回転数は1/2、トルクは約2倍になる。摩擦伝動である以上わずかな滑りは避けられず、実際の速度伝達には1〜2%程度のロスが生じる点が、かみ合いで伝動する歯つきベルト方式との本質的な違いである。

プーリーの種類

プーリーは組み合わせるベルトの断面形状に対応して作り分けられる。もっとも普及しているのはV字溝を持つVプーリーで、溝角度は34°から38°の範囲で規定され、呼び径が大きくなるほど角度も大きく設定される。Vベルトの断面規格にはM、A、B、C、D、E形があり、伝達動力に応じて複数の溝を並べた多連プーリーも用いられる。一方、タイミングプーリーは外周に歯形を持ち、タイミングベルトとかみ合うことで滑りのない同期伝動を実現する。プリンタや産業用ロボットのように位置決め精度を要する装置ではこの方式が選ばれる。そのほか、外周が平坦な平プーリー、ベルトの張力調整や経路変更に使うアイドラープーリー、溝幅を油圧で変化させて変速比を連続的に変える可変プーリーがある。可変プーリーは無段変速機の中核部品であり、CVTメタルベルトと組み合わせて乗用車に広く搭載されている。

クラウン加工

平ベルト用のプーリーでは、外周中央部を両端よりわずかに膨らませるクラウン加工が施されることがある。中央と端部の直径差により周速差が生じ、走行中のベルトが自然に中央へ寄る作用(クラウン効果)が働くため、ベルトの片寄りや脱落を防止できる。ベルトコンベヤの駆動プーリーでも同様の考え方が採用されている。

材料と製造方法

プーリーの材料は用途と回転速度で使い分けられる。汎用のVプーリーには鋳鉄、特にFC200やFC250といったねずみ鋳鉄が多用される。鋳造性と切削性に優れ、振動を吸収する減衰能が高いことが理由である。周速が30m/sを超える高速回転では、遠心力による破損リスクを考慮してアルミニウム合金や鋳鋼が選ばれる。小径・大量生産品では鋼板のプレス成形や転造加工が用いられ、切削品に比べて材料歩留まりが良くコストを大幅に下げられる。ただし転造加工は多段プーリーや特殊形状には対応しにくく、少量生産ではFC材からの切削加工で対応するのが実務上の通例である。樹脂製プーリーも家電やOA機器では一般的で、軽量・静音・無給油という利点を持つ反面、許容温度はおおむね80℃程度にとどまる。

軸への固定方法

プーリーを回転軸に固定するには、軸とボス穴の双方に溝を設けてキーをはめ込む方式が最も一般的である。キー溝の寸法はJIS B 1301で標準化されており、詳細は平行キーおよびキー溝の規格に従って設計する。近年は軸に傷を付けずに締結できる摩擦式の締結具(メカロック、パワーロックなど)も普及しており、位相調整が頻繁な設備や、キー溝加工のコストを避けたい場合に選択される。軸端同士を直結する軸継手と異なり、プーリーは軸の中間位置にも取り付けられるため、ベルトの張力によるラジアル荷重が軸受に作用する点を設計時に見込む必要がある。

選定と保守の注意点

プーリーの選定では最小径の制限に注意しなければならない。プーリー径が小さすぎるとベルトの曲げ応力が増大し、寿命が急激に低下する。たとえばA形Vベルトでは呼び径95mm以上が推奨されており、これを下回る設計は避けるべきである。据え付け時には駆動側と従動側の軸の平行度と溝位置の整列(アライメント)を確認する。芯ずれはベルトの偏摩耗と早期切断の主因であり、現場ではレーザー式アライメントツールやストレートエッジを当てて調整する。運転中はベルト張力の管理も欠かせない。張力不足は滑りによる発熱とプーリー溝の摩耗を招き、過大な張力はすべり軸受や転がり軸受の寿命を縮める。溝が摩耗したプーリーに新品ベルトを掛けても本来の伝達能力は回復しないため、溝ゲージで摩耗量を点検し、ベルト交換2〜3回に1回はプーリー側の交換も検討するのが保全実務の目安となっている。

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