フィルムコンデンサ
フィルムコンデンサは、誘電体として樹脂フィルムを使用し、薄い電極箔とフィルムを交互に積層または巻き取り構造にしたコンデンサである。ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの材料がよく使われる。電解コンデンサと比べて電解液が存在せず、経時変化や液漏れによる不良リスクが低減されることが大きな特徴だ。さらに、温度特性や周波数特性にも優れ、高周波領域での損失が小さいため、ノイズフィルタや高精度な回路の定数管理など、多方面で重宝されている。
基本原理
フィルムコンデンサは、絶縁性の高い薄膜を誘電体に用いることで、電荷を効率よく蓄積できる構造になっている。巻き取りや積層により、相互に絶縁した電極箔とフィルムを交互に配置し、厚さや面積を最適化して所望の容量を得る。フィルム自体の分子構造や誘電率がコンデンサの性能を左右し、例えばPP系フィルムは低損失・高耐圧性に優れた特性で知られている。
特徴と利点
フィルムコンデンサは、温度や周波数変化に対して比較的安定な容量特性を示す。また、経年変化による容量低下が少なく、長寿命を期待できるのが大きなメリットだ。自己修復機能を備えたタイプもあり、内部で小さな絶縁破壊が起こっても誘電体や電極面が局所的に融着し、ショートを未然に防ぐ。こうした信頼性の高さゆえに、パワーエレクトロニクス分野や医療機器、宇宙開発などのシビアな用途にも採用実績がある。
電源回路での用途
スイッチング電源やインバータ回路などでは、高電圧や大電流を扱うため、コンデンサには強い負荷がかかる。フィルムコンデンサは高耐圧タイプが存在し、大容量化も比較的容易なため、直流リンクコンデンサやDCフィルタ回路などに多用される。また、高周波ノイズを除去する際にも、低ESR(等価直列抵抗)が有利に働き、高効率かつ安定した動作をサポートする。
ノイズ対策と高周波特性
フィルムコンデンサの誘電損失が小さく、ESRやESL(等価直列インダクタンス)が低いことは、高周波帯域での性能を向上させる要因になる。ノイズの除去や高調波対策の場面では、コンデンサが高周波成分を効果的にバイパスする役割を担うが、フィルムコンデンサはこの用途に最適だ。また、自己共振周波数が高めに設定できる点も、高周波領域での精密な定数管理に寄与している。
選定時のポイント
フィルムコンデンサを選ぶ際は、定格電圧や容量だけでなく、使用温度範囲やリップル電流耐性、絶縁抵抗なども考慮する必要がある。高耐圧タイプやメタライズド構造のもの、ラジアルリードやスナップイン形状など、用途に応じた形態が数多く提供されている。特に高周波回路や電源回路で大きな電流や高速スイッチングが発生する場合、十分なマージンを見込んだ定格選定が望ましい。