ピラニゲージ|熱伝導を利用した真空圧力計

ピラニゲージ

ピラニゲージとは、熱伝導を利用して真空度(圧力)を測定する装置である。低真空から中真空領域まで広く対応し、シンプルな構造と安定した計測が特徴である。半導体製造装置や研究施設など、真空を扱う多様な現場で活用されており、他の方式の真空計に比べてコスト面でも優位性があるといえる。

測定原理

ピラニゲージの測定原理は、封入された細い加熱フィラメントの熱伝導特性を監視する点にある。気体分子が減少するほどフィラメントから熱が逃げにくくなるため、圧力が低いほどフィラメントの温度は上昇する。具体的には、一定電流を流したときのフィラメントの温度変化や抵抗値を測定し、その変化量から真空度を推定する仕組みである。このように熱伝導を利用するため、操作が比較的容易でありながら、良好な感度を得られるのが特徴である。

構造と部品

ピラニゲージは、加熱用のフィラメントを封入した測定チューブと、フィラメントの抵抗変化を測定する回路、およびゲージ本体の外装などから構成される。一般的には白金やタングステンなどの細い金属線がフィラメントとして用いられるが、使用環境や温度特性を考慮し、材質の選定が行われる。チューブ内部は気密性を保つためにガラスや金属シールが用いられ、外部との接続口を介して真空系に取り付ける形式が主流である。

測定範囲と用途

ピラニゲージは主に10^−3~10^2 Pa(10^−5~10^0 Torr)程度の圧力領域を測定対象とする。この範囲は低真空から中真空に相当し、半導体製造装置や研究用の真空チャンバーはもちろん、食品包装や溶接などの産業応用にも広く利用される。そのため、幅広い領域で安定した圧力管理が求められる場面で活躍しやすい測定手段である。

校正と精度管理

ピラニゲージは気体の種類や温度特性の影響を受けやすいため、定期的な校正が必要である。メーカーによっては、特定の気体補正係数や温度補正機能を持たせることで精度を向上させる工夫を行っている。ただし、他の真空計と比較すると絶対精度がやや劣ることもあるため、測定レンジの最上部や最下部では誤差が大きくなる可能性がある。

利点と制限事項

ピラニゲージの利点は、構造が比較的簡単でコストパフォーマンスに優れ、扱いやすいことである。また、応答速度も十分実用的であるため、真空度の変化をリアルタイムで把握したい場合にも利用しやすい。一方、制限事項としては、測定範囲を超える高真空域では熱伝導の変化が極端に小さくなるため精度が低下しやすいことが挙げられる。また、測定時の発熱によってフィラメントが劣化しやすく、定期的な点検や交換が必要となる。

他の真空計との比較

ピラニゲージは、ベローズ式マクラウドゲージやイオンゲージなど、他の原理を用いた真空計と組み合わせて使用されることが多い。ベローズ式などの機械的なゲージは大気圧付近の測定精度に優れ、イオンゲージは超高真空の領域に強みを持つ。その中間をカバーする役割として、ピラニ方式の計測はバランスの取れた選択肢といえる。

熱伝導の応用例

熱伝導を利用する真空計には、ピラニゲージ以外にもサーミスタゲージなどが存在する。いずれも気体分子の運動特性から熱がどの程度奪われるかを指標としているが、フィラメント材質や構造の違いにより応用範囲や測定精度が異なる。これらの計測機器は真空技術の発展に伴って改良が重ねられており、多様な産業分野や学術研究を支える重要な存在となっている。

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