テスト容易化設計
製品やシステムの品質を高めるうえで重要なのは、開発段階からテスト容易化設計を組み込むことであるといえる。これは量産や保守の局面において障害を早期発見し、開発コストを最適化する狙いがある。大規模化するシステムや機能の複雑さを考慮すると、設計段階からテスト性を意識したアーキテクチャを練り上げることが求められる。ここではハードウェアとソフトウェア両面での設計手法、導入のメリットや課題などを総合的に解説する。
背景
テスト手法は開発工程の終盤に実施されるイメージが強かったが、それでは潜在的な欠陥を見逃す可能性が高まる。近年のシステムはモジュール間の依存関係が複雑化しており、後戻りが発生すれば膨大な工数がかかる。そこで開発初期からテストを容易化する仕組みを導入する流れになった。例えば半導体分野ではDesign for Test(DFT)というコンセプトが広まり、回路や機能ブロック単位でのテストインタフェースが標準化されつつある。
概念と範囲
一般にテスト容易化設計は単にテスト項目を増やすだけでなく、設計段階においてテスト実施がスムーズになる構造を意識することである。具体例としては、測定ポイントを回路上に複数設置する、ソフトウェアではログ取得の仕組みを標準実装とするなどが挙げられる。こうした取り組みはバグ検出だけでなく、保守性や拡張性を高める効果も期待できる。
主要なアプローチ
まずスキャンパスやBuilt-In Self-Test(BIST)など、ハードウェアテストを自動化・省力化する仕組みが代表例として挙げられる。またソフトウェア分野ではモジュール単位のユニットテストを想定したAPI設計や、CI環境における自動ビルドとテストの仕組みが重要になる。これらのアプローチを混在させることで、ソフト・ハード両面の検証を効率よく実施する狙いがある。
ハードウェア側の配慮
ハードウェア設計では、ICチップ内部にテスト回路を組み込むことで高いテストカバレッジを実現できる。具体的にはスキャンチェーンを利用し、内部フリップフロップへテストベクタを注入して動作確認を行う方法がある。実装面でコストはかかるが、不良箇所の特定や歩留まり向上につながる利点が大きいため、テスト容易化を意識したプロセスの最適化が進んでいる。
ソフトウェア側の工夫
ソフトウェアでは関数やクラスを極力独立させ、テストスタブを活用するなどの工夫が必要である。異なるモジュールとの依存を減らすことでユニットテストを容易にし、大規模システムでも小さな単位から動作確認できる状態を作る。ログや例外処理を丁寧に設計することも重要で、問題発生時の原因追及に役立つ情報を最小限のオーバーヘッドで取得できる体制が求められる。
チーム連携の重要性
テスト容易化の成否は開発チーム間のスムーズな情報共有にも左右される。ハード設計部門とソフトウェア開発部門、さらに品質保証部門が一体となって仕様や実装を検討し、各フェーズにおいて検証条件やテスト項目を合意形成しておくことが不可欠である。共同で設計レビューを実施し、テスト対象の優先度や採用するツールなどを早期に決定しておくと手戻りを大幅に減らすことができる。
導入時の留意点
開発プロセスの初期段階にテスト戦略を組み込むには、工数や費用対効果を見極める計画が欠かせない。過度にテスト項目を増やすとリソースの浪費になり、最適化が不十分ならば重要な不具合が見落とされるリスクが残る。またテスト容易化のために回路やコードに付随するモジュールを追加する場合、それ自体の管理やバージョン管理も必要になるため、設計から保守までを見据えたトータルな視点が重要である。