ダクト|HVACで空気を導く流路部材

ダクト

ダクトは空気やガスを所定の場所へ搬送するための管路であり、建築設備の換気・空調(HVAC)、工場の排気・集じん、クリーン環境の維持などに広く用いられる。断面形状や材料、設計風速、圧力損失、気密性、耐食性、耐火性といった要件を満たすよう計画・施工される。自動車分野でも車室内の空調配分やデフロスターに小径のダクトが使われる。

基本概念と機能

ダクトの第一の機能は、所定の風量を必要な地点へロス少なく届けることである。送風機の静圧を搬送に使い、曲がり・分岐・長さに起因する圧力損失を管理する。二次機能として保温・防露・防音・防火などがある。設計では風速・静圧・温湿度条件を前提にダクト径を決定し、メンテナンス空間や施工性も同時に検討する。

種類(形状・構造)

  • 矩形ダクト:天井内での納まりが良い。角部で乱流が生じやすく、気密確保に配慮する。

  • 円形ダクト:圧力損失が小さく、漏気が少ない。スパイラル成形が一般的である。

  • フレキシブルダクト:短尺接続や障害回避に有効だが、長距離使用は損失増を招く。

  • 二重管ダクト:保温・防露や消音を目的に内外層を持つ。

材料と表面処理

建築用途では溶融亜鉛めっき鋼板(SGCC)が標準で、外装や高湿環境ではステンレス鋼やアルミ合金を用いる。腐食要因が強い排気は耐食グレードを選定する。内部清浄度が要求されるダクトには内面塗装や樹脂ライニング、食品・薬品では衛生仕様を選ぶ。断熱が必要なダクトは外貼り保温材や内張りライナーで結露と熱損失を抑える。

流体力学と設計指標

風速は一般に幹線ダクトで6〜8m/s、末端で3〜5m/sを目安とし、騒音や圧力損失とトレードオフで決める。損失計算では直管摩擦と局所損失(エルボ・分岐・絞り)を合算する。等圧法、等摩擦法、静圧再得法などで系統設計し、最終的に送風機静圧に収める。リークによる漏気率は省エネ上の重要指標であり、気密等級の確保が必須である。

継手・支持・シール

ダクトの接合はフランジ・スリップオン・ビードロールなどを用いる。フランジはガスケットと締結具で気密を確保し、必要に応じてボルトの強度区分を選ぶ。支持はハンガー・インサート・バンドで荷重と振動を受け、火災時の耐荷重や脱落防止金物を考慮する。シール材は温湿度・薬品性・清浄度要求に適合するものを選定する。

騒音・振動対策

高速流による風切り音、局所損失部の乱流音、送風機の回転騒音が主因である。対策として、適正風速化、エルボの曲率半径確保、消音器の挿入、内張り吸音ライナーの採用、振動アイソレータによる機器隔離を行う。特に長大ダクトはパネル鳴きを生じやすく、リブ補強や板厚増しで共振を避ける。

施工と保全

  1. 製作:板取り・成形時に寸法精度と歪みを管理し、角部のはぜ継ぎや溶接部の気密試験を行う。

  2. 据付:吊りピッチ・レベルを守り、勾配やドレン抜きで結露水の滞留を防止する。火気作業時は防火管理を徹底する。

  3. 試運転:風量バランス調整(ダンパ設定)、漏気点検、保温・防露の確認を実施する。

  4. 維持管理:フィルタ交換や内部清掃口からの点検を計画し、汚染や生物繁殖のリスクを抑える。

自動車分野での応用

車両のHVACではインパネ内のダクトがブロワからの風をデフロスター・フェイス・フットへ配分する。樹脂射出成形が主流で、軽量・低騒音・低コストと取り回し自由度を両立する。エンジン吸気やバッテリー冷却用ダクトは熱・振動・薬品への耐性が重要で、シール性や耐熱樹脂の選定が性能を左右する。

規格・評価と省エネ

ダクトの設計・施工では気密等級、耐火区画の貫通処理、外装制限、清掃口の配置など規定群に従う。性能評価は風量・静圧・騒音・漏気率・熱損失で行い、BAS/EMSと連携した最適制御で省エネ化を図る。リーク低減は送風機動力の直接削減に寄与し、LCC観点で高い投資対効果が期待できる。

圧力損失の簡易算定の考え方

設計初期は、直管の単位長当たり損失係数と主要局所損失の合算でおおよその全損失を見積もる。幹線ダクトの風速を抑え、曲がり点数を減らし、分岐角と整流板を最適化すれば送風機静圧を下げられる。詳細段階ではCFDや実測により流れの偏りや騒音源を特定し、断面変更や内面処理で改善する。