セラミックス
セラミックス(Fine Ceramics)は無機物を高温で焼成して作られる材料であり、非常に高い硬度、耐摩耗性、耐熱性に優れ、錆(さび)に強い素材である。歴史的には、古くから、粘土を焼き固めて、土器や陶磁器などで親しまれてきた。また、耐火レンガ・ガラスなどにも優れている。これらを一般にオールドセラミックス(コンベンショナルセラミックス) という。現在では、ファインセラミックスとして、絶縁体としての碍子や自動車エンジンの点火プラグなどの工業製品へと応用されている。さらに発展させ、耐熱強度材料、電気・磁気・光学などの機能性材料、生体材料などに用いられるようになった。
セラミックスの種類
セラミックスには、オールドセラミック(伝統的なセラミックス)とファインセラミックス(先進的なセラミックス)の2種類がある。オールドセラミックは、陶器やガラス、レンガなどの日常的な用途で利用される一方、ファインセラミックスは高純度で精密な特性を持ち、エレクトロニクスや機械部品などの工業用途で用いられる。ファインセラミックスには、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化ケイ素、炭化ケイ素などが含まれ、それぞれが異なる優れた特性を持つ。
オールドセラミックス
オールドセラミックスとは、伝統的なセラミックスのことであり、古代から人々の生活に利用されてきた陶器、ガラス、レンガ、タイルなどを指す。日本で有名な縄文土器・弥生土器から始まり、瀬戸物や有田焼などもこの一例である。これらのセラミックスは、土や粘土などの自然素材を高温で焼成することで作られ、優れた耐熱性や耐久性を持っている。
ファインセラミックス
ファインセラミックスは、オールドセラミックスの技術的延長にあり、現代に使われるセラミックスである。ファインには、「素材について人工的な原料を使用して、各工程において厳密にコントロールして製造する」という意味があり、形状や製造工程を精密に制御することで実現され、原料が人工材で原料の粒子の大きさが非常に微細でコントロールされている。磁性材料、耐熱・発熱体、光学材料、医療、半導体など、さまざまな用途で使われている。
セラミックスの製造法
セラミックスの原料は、陶磁器の焼き物に見られるように粉末状であることが多く、均一に混ぜて、高温で焼き固めて製造が行われる。れを粉末治金ともいうが、現在では気体から製造する方法も用意られている。流動する粘土を型に流し込んで成型する泥漿鋳込み法(スリップキャスト法)、流動する粘土を金型に流し込んで加圧する射出成形法などがある。ファインセラミックスでは、原料の精製から焼成までの過程で高精度な制御が行われることで、純度の高いセラミックスを製造することが可能となる。
セラミックスの用途
セラミックスは、その優れた特性から非常に広範な用途で利用されている。例えば、耐熱性や硬度の高さを活かして、炉の内壁材や切削工具、タービンブレードなどの高温環境部品に使用されている。また、電気絶縁性を活用した電気部品、医療分野における生体材料、化学プラントでの耐腐食部品など、様々な産業分野で重要な役割を果たしている。さらに、ファインセラミックスは電子機器やセンサー、バイオセラミックスとして人工骨や歯科用インプラントに利用されることもある。
セラミックスの性質
セラミックスは耐熱性、耐摩耗性、硬度・脆さ、絶縁性などの性質があげられる。
耐熱性
セラミックスは高い耐熱性を持ち、窒化ケイ素(Si3Na4)や炭化ケイ素(SiC)などのセラミックスは1000℃以上の温度に耐えることができるが、温度変化には弱く、急に温度をあげると、破壊される。(ヒートショック)高温環境で使用される炉のライニング材、エンジン部品などに利用されることが多い。例えば、窒化ケイ素や炭化ケイ素などのセラミックスは、エンジンやガスタービンの部品として使用され、優れた耐熱性を発揮している。
もろさ
セラミックスは硬度で耐熱性に優れているが、もろくて欠けやすい。つまり展延性がほとんどないため、引張荷重などにおける強度不足による破壊は、小さな傷などを起点としてき裂が生じる。そのため利用には適材なところが必要である。
硬度・耐摩耗性
セラミックスはサーメットや超硬よりも高い硬度をもち、耐摩耗性にも優れている。一方で硬度が高いために加工が難しく複雑な形状を作ることが困難である。硬度が高いため工具や包丁などにも使われる。
絶縁性
特殊なものを除き、多くのセラミックスは電気を通さない絶縁体である。電子機器や電気部品において絶縁材料として利用される。例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)や窒化アルミニウムは、高い絶縁性能を持ち、半導体製造装置、電子基板や絶縁体として広く使用されている。また、電気に対して高い抵抗を利用して発熱体としても利用される。
耐食性と化学的安定性
セラミックスは化学的に安定しており、多くの酸やアルカリ、腐食性の化学物質に対して高い耐性を持っている。このため、化学プラントや医療機器の部品、腐食しやすい環境で使用される部品に適している。また、この耐食性により、長期間の使用が可能であるため、メンテナンスの手間が少ないというメリットがある。
エンジニアリングセラミックス
ファインセラミックスはエンジニアリングセラミックスとして工学用途として主に使われる。酸化物系構造用セラミックスとしてはアルミナ、ジルコニア(ZrO2) 、非酸化物としては、窒化ケイ素、炭化ケイ素 (SiC)などに代表される。
エンジニアリングセラミックスの例
- シリカ(SiO2)
- アルミナ(A12O3):耐摩耗性
- ジルコニア(ZrO2):耐摩耗性
- 炭化けい素(SiC):高温強度性能、高耐摩耗性、高耐食性
- 窒化けい素(Si3N4):高強度、高剛性、耐摩耗性
セラミックスコーティング
セラミックスコーティングとは、金属に対してセラミックスでCVDやPVDや溶射によってコーティングすることで、一般の金属に任意のセラミックスの性質を付与する表面処理である。本来の金属にもたない、耐摩耗性を向上させることができる。
セラミックスの課題
セラミックスには多くの優れた特性がある一方で、脆さが課題となることがある。特に、引張りや衝撃に対して脆く、破損しやすいという欠点があり、このため強度設計においては特別な注意が必要である。また、製造工程での高温処理や成形が難しく、コストが高くなることも多い。これらの課題を克服するため、セラミックスの強靭化技術や新しい製造プロセスの開発が進められている。