スループット(半導体)|製造ラインの処理能力と効率を示す

スループット(半導体)

スループット(半導体)とは、半導体製造ラインや装置が単位時間あたりに処理できる生産量であり、代表的な指標はWPH(Wafers Per Hour)やUPH(Units Per Hour)である。タクトタイム、装置稼働率、レシピの段取り時間、搬送待ちなどが総合的に効き、ボトルネック装置の能力が最終的な出荷能力を規定する。歩留まりを掛けた実効スループット(良品流量)や、ロットサイズ・投入ピッチの設計も運用指標として重要である。

定義と単位

フロントエンドではWPHが基本で、1時間あたりのウェハ枚数を示す。バックエンドや実装ではUPHやDPH(Dies Per Hour)を用いる。装置単体のスループットと、ライン全体(複数装置・搬送・検査を含む)のスループットは区別する。装置仕様の「最大WPH」と、実運用の「実効WPH」は乖離しやすく、段取り・待機・故障停止を含めた実測が必要である。

基本式とリトルの法則

  • 装置のWPH ≒ 3600 / タクト(秒/枚)。バッチ式なら「1バッチ時間 ÷ バッチ枚数」で換算する。
  • ラインの平均流量THと仕掛WIP、サイクルタイムCTは、リトルの法則 WIP = TH × CT で関係づけられる。
  • 実効スループット(良品/時間)= 名目スループット × 歩留まり。

この関係は計画能力と仕掛の整合性を点検する基礎である。投入を増やしてもボトルネックが固定ならCTだけが伸び、THは増えないため、過剰WIPは避けるべきである。

ボトルネックとデボトルネック

ボトルネックは最小能力の工程・装置である。対策は(1)段取り短縮(SMED)、(2)並列チャンバー増設・稼働バランス調整、(3)レシピの前後処理の重畳(搬入・予熱・搬出のオーバーラップ)、(4)ロットサイズ・投入ピッチ最適化、(5)再循環工程の優先度見直し、(6)自動搬送(AMHS)・ストッカーとの連携強化である。定量化のために装置ごとの理論WPHと実績WPH、待機比率(Queue/Busy)を可視化する。

装置別のスループット要因

  • 露光:ステップ・アライメント・計測・ステージ戻り等のオーバーヘッドを含む総タクトで決まる。フィールドサイズやショット数も効く。電子描画は逐次走査のためWPHが低く、設計・試作で使い分ける(電子ビームリソグラフィ)。
  • エッチング:クラスター装置ではロードロック、チャンバー間の並列化、プラズマ立上げ・クールの最適化が支配的である。原則としてレシピ時間+搬送がタクトを規定する(プラズマ基礎はアルゴンプラズマ)。
  • CVD/PVD:バッチ枚数、昇温・降温、前後処理の並行化が効く。スループットは「(バッチ枚数 × 3600)/(サイクル時間)」で近似する。
  • 組立:ワイヤ供給、ボンドヘッド移動、画像認識・補正の時間がUPHを決める。多ヘッド化・段取り短縮が鍵である(ワイヤーボンディング)。

稼働率・OEEと信頼性

OEE = Availability × Performance × Quality を用いる。AvailabilityはMTBF・MTTR・保全停止・段取りで決まる。Performanceは理論タクト比、Qualityは良品率である。名目WPHだけを比較せず、OEEを介して「実効WPH」を算出し、装置間のバランスをとることが重要である。

ばらつきと待ち行列

処理時間や到着間隔のばらつき(変動係数CV)が大きいと待ち行列が急増しCTが悪化する。ディスパッチングはFIFOを基準に、SPT(Shortest Processing Time)、EDD(納期優先)、CR(余裕率)などを状況に応じて使い分ける。特急品の多用は全体効率を損なうため、優先度ルールは明確化しておく。

測定の落とし穴

カウント対象にテストウェハ、リワーク、途中中断ロットを混ぜると数値が過大・過小評価される。装置単位の15分・60分窓でのWPH推定、日次の実績集計、ロット追跡ログとの照合を行う。ラインスループットを見る際は「開始基準」「完了基準」を統一し、二重計上を避ける。

改善の具体策

  1. 前後工程の重畳:予熱・検査を別モジュールに逃して本処理を連続化する。
  2. 段取り時間短縮:レシピ切替を外段取り化し、EPEI(Every Part Every Interval)を短縮する。
  3. 搬送最適化:FOUP待ち・シャトル往復を抑え、AMHSのルーティングとバッファ容量を見直す。
  4. 歩留まり起点の最適化:良品/時間(Good Die/Hour)を最大化し、不良再加工の循環を削減する。
  5. ロット設計:25枚固定に拘らず、目的工程での13枚・分割搬送などを検討する。

用語の使い分け

スループットは生産流量、キャパシティは設計上限、プロダクティビティは資源あたり効率、タクトタイムは1枚(1ユニット)あたりの処理時間を指す。CT(Cycle Time)は投入から完成までの経過時間で、WIPとTHとで結ばれる。文脈により表現は揺れるが、半導体製造におけるスループット(半導体)は「装置・ラインが安定的に吐き出せる良品の時間当たり流量」を意味する。運用では名目値ではなく、OEEとばらつきを含む実効指標で能力設計を行うことが肝要である。