スライド支持
スライド支持は,構造物や配管において,一定方向の相対変位を許容し,他の自由度を拘束する支持方法である。熱伸び・収縮や据付誤差を吸収して過大応力を防ぐために用いられる。代表的な実装はPTFEとステンレス鋼板の摺動やローラー式であり,橋梁や配管ラックに広く採用される。設計では許容荷重,ストローク,μ(摩擦係数),温度範囲を評価する。
目的と機能
スライド支持の目的は,拘束すべき自由度と許容すべき自由度を整理し,不必要な拘束力を除去することである。典型的には鉛直荷重を支持しつつ,軸方向の並進を許容する。許容変位は±数mm〜数百mmで,必要ストロークは δ=αLΔT から見積もる。摩擦抵抗は F=μN,N は支持反力である。μを低く抑えるほどアンカー荷重や機器ノズル荷重を減らせる。
適用分野と例
- 配管:熱膨張を軸方向に逃がす。ライナー付サドルやスライドベースを用いる。
- 鋼構造・橋梁:平面内の伸縮を許容する摺動支承。
- 装置・機器:片端固定・片端スライドで据付応力を抑える。
自由度と拘束
並進3軸と回転3軸のうち,どれを許容しどれを拘束するかを定義し,重複拘束を避ける。スライド支持は「法線方向を拘束し,接線方向を許容」する境界条件としてモデル化し,解析では「frictionless support」や「面内スライド」で表現する。回転拘束は治具やボルトで調整する。
設計パラメータ
- 面圧:許容接触圧を超えないよう当接面積を決める。
- 摩擦係数μ:PTFE/SSは低く,乾燥鋼同士は高い。
- ストローク:施工誤差+運転変位+地震分に余裕を加える。
- 温度範囲:材料劣化を考慮して選定する。
- 耐久性:摩耗,面荒れ,異物噛み込みへの対策。
材料・構造と施工
摺動面はステンレス鋼の鏡面仕上げとPTFEライナーの組合せが一般的である。固定側はアンカーボルトで基礎に定着し,長孔で軸方向の移動を確保する。表面粗さや平面度は摩擦と偏荷重に直結するため,RzやRaの管理が重要である。現場ではレベル調整と初期マーキング,防錆・防塵を行う。
配管設計の留意点
配管では,スライド支持の摩擦が熱膨張力の一部をアンカーに伝える。解析ではスプリング・摩擦要素で表現し,支点間隔やノズル許容荷重を満足させる。吊りと床支持の混在時は,摩擦条件差による荷重偏在に留意する。保温がある場合はスライド量に応じたスリーブや伸縮継手との干渉を確認する。
保全と信頼性
- 点検:摺動痕,摩耗厚み,固定部の緩み,腐食,異物付着を確認。
- 故障:固着,スティックスリップ,ライナーのクリープ,ボルトの片当たり。
- 対策:防塵カバー,水切り,面圧分散プレートの追加,μの管理。
解析と評価
有限要素解析では,スライド支持を接触要素や面拘束で表現し,摩擦係数をパラメトリックに評価する。線形の「摩擦なし」モデルで上限変位を把握し,非線形計算で荷重再配分を検証する。
安全とドキュメント
停止時に想定外の拘束が生じないよう,異常時の逃げ(failsafe)と点検性を確保する。仕様書には荷重,μ,ストローク,温度範囲を明記し,関連規格や社内標準を一元管理する。