スポット溶接
スポット溶接とは、抵抗溶接の一種であり、接合したい2枚の金属板を重ね合わせ、電極ではさみ、部材間に大電流を瞬間的に流し、局所的に金属を加熱、溶融・固化させる。電極の圧力も加えることで2枚の母材の接触面が接合する。スポット溶接は、薄板の高能率溶接に適した溶接法で、作業者の熟練を必要としないため自動化・ロボット化がしやすい。主に自動車や家電製品などに広く普及し、効率的な生産性を支えるキーテクノロジーといえる
抵抗溶接
抵抗溶接とは、抵抗溶接を利用した溶接方法である。抵抗溶接は重ね抵抗溶接(薄い板状の母材を重ね合わせて行われる抵抗溶接)と、突合せ抵抗溶接(棒状の母材の端面同士を突合せて行われる抵抗溶接に大別されるが、スポット溶接は重ね抵抗溶接の代表的な溶接である。
抵抗発熱
抵抗発熱とは、金属に電流が流れると、金属のもつ電気抵抗により発熱し、温度が上がる現象である。ジュール熱ともいうを流すと、金属材料内で電力が消費されて発熱する。下記がその関係を表したものだが、これをジュールの法則という。
ジュールの法則
H = V I t = R I2 t
H:熱量(J:ジュール)
R:抵抗
t:時間(s)
I:電流
カロリーに換算すると下記のようになる。
Q = 0.24 R I2 t
Q:カロリー
R:抵抗
t:時間(s)
I:電流
原理と構造
基本的な原理は、金属同士を圧着しながら通電し、その接触部分でジュール熱を発生させて融合させる点にある。強固な電極の先端が対象部材をはさみこむ形で通電を行うと、接触抵抗の大きい部分が急速に加熱され、局所的に溶融した後に冷却・凝固して接合点を形成する仕組みとなる。溶接機は主に本体、ガン(電極チップが装着されたアーム部)、制御装置などから構成されるが、機種によっては可動式や固定式などさまざまなバリエーションが存在する。スポット溶接が成り立つ鍵は、適切な圧力と電流のタイミング制御にあり、この調整が品質や生産性を大きく左右することになる。
こんにちは👋😃
M蔵です‼️今日はプロジェクションボルト🔩💥のスポット溶接の様子です🤗 pic.twitter.com/r4giL6shRi
— 島田工業株式会社 (@shimadaind) January 13, 2025
スポット溶接の特徴
① 溶接時間が短く、作業能率がよい。
② 溶接が母材の合わせ面内で行われるため、シールドガスが必要ない。
③ 加熱が局部的に行われるため、溶接ひずみが少ない。
④ 作業者に技術が必要なく、品質が左右されない。
⑤ 大きな溶接電流を必要とするため、溶接機および受電設備の電気容量が必要である。
⑥ 母材の材質や板厚により溶接電流、通電時間、加圧力、電極形状などの溶接条件が必要。
⑦ 装置の運搬が不便である。
⑧自動化・ロボット化が可能である。
使用材料と適用範囲
スポット溶接の対象材料としては、軟鋼や高張力鋼、ステンレス鋼などの鋼板類がよく用いられる。特に自動車産業では、外装パネルや骨格部材の組み立てに多数の溶接点が設けられ、軽量化やコスト削減の要となっている。また、アルミニウム合金や銅合金にも適用可能だが、電気伝導率や溶融特性が異なるため、より高度な電流制御やチップ設計が必要とされる場合がある。近年は高強度な鋼板や複合材料の普及に伴い、溶接条件の最適化や装置の高機能化が進められている。
職場でジジっと。
スポット溶接機最高。 pic.twitter.com/u9C4DUBQMi
— ゴトー (@daiki_Re_R) December 26, 2024
装置と制御
一般的な溶接機には交流式や直流式があるが、近年はインバータ式の採用が増加している。これにより電流の波形を細かく制御でき、溶接点の品質向上やエネルギー効率の向上が期待できる。ガンの形状はロボットアームに取り付けるロボットガン型や、人が直接握って操作するハンドガン型などがあり、作業現場のレイアウトや生産量に応じて選択される。制御装置では通電時間や押し付け力の管理が極めて重要で、これらのパラメータをリアルタイムに監視し、溶接品質を一定に保つ仕組みが整えられている。
スポット溶接のロボットアームはカワサキ制作なんやね。 pic.twitter.com/Ir4bzwZjyx
— メガブー おもちゃん (@Realize_mega) December 8, 2024
メリットと留意点
スポット溶接は高速で大量の接合点を形成できるため、生産ラインの自動化に適している。一方、接合部が点接合であるため、荷重が集中するとクラックなどの損傷リスクがあることや、溶接痕が表面に残る場合があることなども留意すべきである。また、電極チップは使用に伴って摩耗し、形状や表面状態が変化するため、定期的な交換や研磨によるメンテナンスが必須となる。さらに、アルミニウムなどの高導電性材は適切な電流管理を行わないと、過熱や不完全接合が発生する恐れがある。
応力と強度評価
接合部は局所的に溶融した後に急冷されるため、固化の過程で生じる組織変化や残留応力が溶接強度に影響を及ぼす。溶接後に引張剪断試験や剥離試験などを行い、所定の荷重に対して十分な破断強度が発現しているかを評価することが重要とされる。特に薄板材が重なった部分では強度のばらつきが大きくなりやすいので、個々のスポットごとの品質チェックが必要不可欠である。
さて!
このスポット溶接をどうやって剥がそうか…
グラインダーで少しずつ削るか🤔 pic.twitter.com/ckY3gpnkw6— せっきー (@sekkogi1) January 11, 2025
産業応用の広がり
自動車や家電製品のライン生産での採用が最も一般的とされるが、近年は建築用の軽量鋼材や電子機器分野でもスポット溶接の応用が検討されている。ロボット技術の進歩により自動化が進む一方、製品の多様化と複雑化に対応するため、モジュール型の溶接ステーションや可搬式ロボットガンの開発が活発である。今後も高強度・軽量化材料の需要拡大にともない、より高度なプロセス制御や装置の改良が求められるといえる。
ワイヤーシェルフ製造工程のひとつ「スポット溶接」の様子です。
シェルフの形に組んだワイヤーを圧接して電流を流し、電気抵抗で発生する熱でワイヤー同士を接合します。
はんだ付けのような溶加材を使わないので、小さな面積で強力に接合できます。#工場見学 #エレクター甲府工場 pic.twitter.com/nk24L2uzxO
— エレクター株式会社 (@erecta) November 15, 2024
安全管理と環境面
通電時には火花やスパッタが発生するため、作業者には防護眼鏡や適切な保護具の着用が推奨される。また、稼働音や電磁界への配慮、作業環境のレイアウト最適化なども重要な課題である。溶接時に有害ガスは発生しにくいとされるが、表面に付着した塗料や油脂が熱分解する場合もあるため、換気や集塵装置の整備が必要となる。省エネルギーの観点からはインバータ技術の導入や適切な通電管理が効果的であり、効率的なスポット溶接プロセスを構築することが求められている。