スクリューポンプ
スクリューポンプは、ねじ状のロータが回転して密閉容積(キャビティ)を連続的に移送し、流体を軸方向へ押し送る容積式回転ポンプである。JISの分類では容積形に属し、低脈動・定流量で高粘度流体や固形物混入流体の移送に適する。代表形式は二軸・三軸のスクリュー式と、単ねじのプログレッシングキャビティ式(モーノ型)である。容積式仲間のギヤポンプと比べ、せん断が穏やかで自吸性に優れる場合が多い。用途は化学、食品、石油・船舶、下水汚泥など広範で、一般的なポンプの中でも扱える粘度・固形分範囲が広い点が特長である。
構造と作動原理
二軸・三軸型では互いに噛み合うスクリュー溝とケーシングの間に密閉空間が形成され、回転に伴って空間が吸込側から吐出側へ連続的に移動する。タイミングギヤで非接触を保つ設計も多く、摩耗や発熱を抑える。単ねじ型は金属ロータと弾性体スタタの組合せで、ロータの偏心回転により進行キャビティが移動して送液する。脈動が小さく、流量は回転数にほぼ比例する。漏れ(スリップ)はクリアランスと粘度に支配される。
特長と利点
- 高粘度・高固形分(スラリー、汚泥、ペースト)でも移送可能である。
- 低脈動・低せん断で、乳化物や繊維、凝集体を壊しにくい。
- 良好な自吸性、気液混相でも運転しやすい。
- 広い差圧範囲に対応し、定量移送・計量ポンプ用途にも適する。
- 構造がシンプルで、CIP/SIPなど衛生設計にも適用しやすい。
主要形式
実務では「二軸・三軸スクリュー」と「単ねじ(プログレッシングキャビティ)」で性能・適用が分かれる。前者は高差圧・高温・潤滑性流体に強く、後者は固形分やせん断敏感な流体に強みがある。
二軸・三軸スクリュー
2本または3本のスクリューが同期回転し、閉じた空間を軸方向へ搬送する。非接触設計で高圧差に耐え、潤滑油・燃料・ポリマー・ビチューメン等に用いられる。ジャケット付で昇温粘度制御が容易、海洋・発電所の燃料移送や油圧供給でも実績が多い。
単ねじ(プログレッシングキャビティ)
金属ロータと弾性スタタにより進行キャビティを形成する。固形分やファイバーに強く、下水汚泥、果肉・チョコレート、接着剤等で定番である。ドライ運転に弱いため液切れ保護が必須で、スタタ材(NBR、EPDM、FKM等)の化学適合と膨潤管理が重要である。
性能計算と選定
理想吐出量は「Q≒Vd×n×ηv」で表し、Vdは1回転当たりの理論容積、nは回転数、ηvは容積効率である。軸動力は「P≒Q×Δp/ηo」で概算できる。吸込余裕はキャビテーション回避の要で、NPSH余裕を確保する。配管損失、粘度補正、クリアランス、運転温度も同時に検討する。層流・乱流の見極めにはレイノルズ数が参考になるが、容積式では粘弾性やスリップの影響を優先評価する。過昇圧防止のためリリーフ弁やバイパスを設け、吸込側ではキャビテーション抑制のためストレーナや配管径の最適化を行う。
- 流体情報:密度・粘度・温度・腐食性・固形分(粒径/体積分率)
- 仕様:必要流量、差圧、許容脈動、騒音、所要精度
- 系条件:吸込静圧、配管抵抗、設置高さ、周囲温度
- 材質・シール:接液材、スタタ材、メカニカルシール/グランド
- 保全:分解性、予備品、CIP対応、洗浄媒体との適合
材料とシール
ケーシングはSUSや鋳鉄、ロータは硬化鋼やコーティングで耐摩耗性を確保する。スタタはNBR/EPDM/FKM等を選定し、膨潤や熱劣化を避ける。シールはパッキンまたはメカニカルシールで、フラッシングやバリア液の有無を決める。食品・医薬では衛生設計、表面粗さ管理、デッドスペース最小化が求められる。
運転上の注意とトラブル
- ドライ運転防止:レベルスイッチや差圧監視で液切れを検知する。
- 過圧対策:リリーフ弁・バイパス・インバータ制御で保護する。
- 気液混相:ガスロック時は排気・ベント、回転数調整で復帰する。
- 摩耗・膨潤:研磨性固形分や溶剤でスタタが損耗・膨潤するため材質適合を確認する。
- 振動・騒音:軸受やタイミングギヤの偏摩耗、ミスアライメントを点検する。
用途例
化学(樹脂、塗料、添加剤)、石油・ガス(燃料供給、潤滑油)、食品(シロップ、チョコレート、果肉、乳製品)、紙パルプ(コーティング、黒液)、環境(水処理汚泥、消化汚泥)、建材(セメントスラリー、グラウト)などで広く用いられる。定量移送、充填、押出しのフィーダとしても有効である。
真空分野との関係
プロセス移送用のスクリュー式と、真空用途のドライスクリューポンプは同じねじ原理を応用するが、クリアランス・潤滑・温調思想が異なる。真空機器の体系では真空ポンプの一種であり、オイル式のロータリーベーンポンプ等と比較してドライでの清浄性に利点がある。
関連規格と保守
設計・選定ではJISやISOのポンプ用語・試験法、回転機械の振動・騒音基準、材料規格を参照する。産業界ではAPI 676が容積式回転ポンプの代表規格で、性能試験、許容振動、付属品要求の指針となる。保全は軸受・シール・スタタの消耗監視、温度・電流・差圧トレンドの予知保全が有効である。
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