ショットピーニング
ショットピーニングとは、炭素鋼などの表面硬化法で、ショットと呼ばれる無数の鋼球を金属表面に高速で衝突させることで加工硬化を起こさせ、工作物の表面の硬度向上させる加工である。冷間加工の一種で、ショットピーニングを施すことで金属の耐摩耗性、耐久性、疲労強度の向上ができる。
【CWJP】
ショットピーニングは、微粒子(メディア)を衝突させて金属表面に圧縮応力を付加する処理。一方、CWJPは、水のみで金属表面に凹凸をつける。水中で水を高圧噴射してキャビテーションを起こし、圧力差による"衝撃"で凹凸を付加する。水だけでショットピーニングできるんだね、すげぇ技術。 pic.twitter.com/mDZLDTXArt
— しぶちょー (@sibucho_labo) February 24, 2024
歴史
ショットピーニングの歴史は、20世紀初頭、航空機エンジンの寿命延長目的から始まる。以降、急速に発展を遂げ、特に、ジェットエンジンのタービンブレード、自動車のサスペンション部品など、負荷のかかる重要部品に使われる。
原理と効果
ショットピーニングの基本原理は、ショットの衝突による塑性変形に基づいている。ショットが表面に当たると、局所的な圧縮力が発生し、表面層に塑性変形を引き起こす。この塑性変形により、表面層に圧縮残留応力が導入される。圧縮残留応力は、引張応力に対抗する力として働き、疲労破壊や応力腐食割れを防ぐ効果がある。ただし、表面の状態(表面性状)は悪くなる。
【ショットピーニング】
無数の"微粒子"を金属表面に衝突させて、材料を強くする技術。粒子が衝突してボコボコになった表面には、圧縮応力が残る。この"残留応力"が、疲労破壊の原因となる"亀裂の成長"を抑制するため、材料の疲れ強さが増す。幅広い分野で使われる技術だ。https://t.co/RBRTpzB0C0 pic.twitter.com/uH3gEdTvzu
— しぶちょー (@sibucho_labo) March 15, 2021
ショットピーニングのメリット
- 疲労強度:表面に圧縮残留応力を与えることで、応力集中部やひび割れの進展を抑制する。
- 耐摩耗性:表面を加工硬化することで、摩擦や摩耗に対する耐久性を高める。
- 耐応力腐食割れ性:圧縮残留応力が腐食環境でひび割れの発生を防ぐ。
- 放熱性:表面に微細な凹凸を形成することで、熱伝達率を高める。
- 流体抵抗の減少:表面にディンプルを形成することで、流体との摩擦を低減する。
ショットピーニングのデメリット
- 表面粗さ:ショットピーニングで表面に凹凸が生じるため、潤滑性や摩擦特性が悪化する。
- ショットの摩耗:ショットは使用するごとに摩耗や割れることがあるため、定期的に補充する。
- 処理後の傷:処理前に浅い傷があれば寿命の低下を防ぐが、深い傷やショットピーニング後につけた傷は防げない。
- 処理後の熱や塑性変形の負荷:ショットビーニング後に高温や大きな力を加えると、残留応力が無くなる
- コスト:複雑な加工プロセスを行うためコストが高い。
- 高難易度:適切な条件の設定が難しい
投射剤
投射剤とはショットピーニングで使われる球状粒子である。投射剤の材質には、鉄系・銅系・ガラス系・セラミック系樹脂系などで一般に粒径30μm-4mm程度のものが使われる。鋼球は強度が高く、重い材料に適している。一方、ガラスビーズやセラミックビーズは、軽量で脆い材料に対して使用されることが多い。一般に鋼球は強度が高く、重い材料に適しており、ガラスビーズやセラミック系樹脂は、軽量で脆い材料に対して使用されることが多い。なお、その効果は、投射剤の形状、サイズ、硬度、速度、角度に依存する。一般に粒系が大きくなるほど表面は荒くない、削る量も多く、小さいほど表面の状態はよく摩耗も少ない。