サブマージアーク溶接|厚板構造物の高効率な溶接技術

サブマージアーク溶接

サブマージアーク溶接とは、直訳して潜弧(せんこ)溶接ともいい、アークがサブマージ(覆われていて外から見えない)ことから、この名で呼ばれている。フラックス粉末の層で電極ワイヤと母材の接合部を覆いながらアークを生じさせ、高い電流を用いて効率的に金属を接合する溶接技術である。厚板の大規模構造物などに多用され、溶融プールがフラックスによって保護されるため、スパッタや飛散が比較的少なく、安定したビード形成を期待できる。溶接煙の少ない内溶接の省力管理溶接の代表として、造船や大型建造物の溶接に適している。

サブマージアーク溶接とは

サブマージアーク溶接とは、ワイヤ電極が連続的に供給される一方で、溶接部がフラックスに覆われ、アークが外部から見えにくい状態で行われる溶接法を指す。この方法では溶接アークが空気中に直接さらされないため、溶融金属部分が大気汚染や酸化の影響を受けにくい。フラックスは酸化物生成の抑制に加え、溶融金属の形状を整える役割も担う。アークが視認しづらい点から初心者にはやや難しく感じられるが、熟練者や自動化装置を用いた現場では高い生産性が得られる。

原理

サブマージアーク溶接の原理は、電源から供給される大電流とフラックス層の下での安定したアーク放電に基づいている。まず、連続的に送られるワイヤ電極が母材と接触してアークを形成すると同時にフラックスが溶融し、ビード表面を覆う溶融スラグを生成する。これにより溶接部の酸化が抑えられ、深い溶け込みと均一なビードが得られる。溶融スラグは冷却後に固化してビード表面に残り、不要分はスラグとして剥がれ落ちるため、美観と品質の両面で優れた仕上がりとなる。

特徴と利点

この溶接法の最大の特徴は、大電流を使用しながらも安定したアークが維持できる点である。フラックス層によって飛散が最小限に抑えられるため、従来のアーク溶接に比べて作業環境の汚染が軽減される。また、溶接速度やビード形成の再現性が高く、大量生産や大規模構造物の製造に適している。さらにはノイズやアーク光が視界を妨げにくいという利点もあり、自動化が進めやすい。これらの要素により、サブマージアーク溶接は効率性と安定性を両立させる重要な手段となる。

特徴の一覧

  • 溶接の効率が良く溶接速度が速い
  • アークの光が外に漏れず、遮光設備がいらない。
  • アークフラックスに覆われているため、溶接煙やスパッタがほとんど発生せしない
  • 溶接後は酸化を抑えたビードを得られ、仕上がりが良い。
  • 溶接深さの調整が可能
  • 突き合わせ溶接する部材の正確な位置決めが必要。
  • 作業後、散布されたフラックスを回収しなければならない。

主要な用途

サブマージアーク溶接は、鋼板、厚板溶接の裏波なし下向き自動溶接に適しており、船舶、橋梁、タンク、パイプラインなどの厚板を使用する大型構造物の製造に広く用いられる。また、重厚な板を積み重ねて作る大型溶接構造物や化学プラントの圧力容器など、深い溶け込みと安定品質が要求される分野でも多用される。さらに、高い生産性が期待できることから、自動化ラインに組み込みやすい点も大きな利点である。多様なアプリケーションに適用されているが、板の薄い部材や複雑な形状への適合には注意を要する。

装置構成

一般的な装置構成としては、大電流を供給する溶接電源、連続送給を行うワイヤ送給装置、フラックス供給装置、トーチ、および回収装置が挙げられる。フラックスは粒状や粉末状のものが多く、溶接部を完全に覆うよう投入される。溶接中に発生するスラグや未使用のフラックスは回収装置で吸引・回収され、再利用されることもある。制御装置はワイヤ送給速度や溶接電流・電圧の管理を行い、安定したアークと品質を維持するのに欠かせない要素である。

溶接条件と制御

溶接条件は母材の厚さや形状、必要とされる溶け込み深さなどに応じて最適化される。具体的には、溶接速度、電流値、電圧、ワイヤ径、フラックスの種類などを調整しながらプロセスを進める。自動化が進んでいる現場では、これらのパラメータを数値制御システムで一括管理することも多い。試験用溶接やビード外観の検証を通じて最適値を探りながら生産性と品質のバランスを図ることが、サブマージアーク溶接の成功につながる。

安全管理と課題

フラックスやワイヤの供給量が多く、高出力の電流が流れる点から、作業環境には粉塵や熱によるリスクが存在する。防護具の着用や換気設備の整備、溶接部への近接作業の際の周辺温度の監視など、適切な安全対策が必要となる。また、アークが直接見えにくいゆえに異常やトラブルの早期発見が難しい場合もある。品質面では、スラグの除去作業やフラックス再利用時の管理を怠ると不良が生じる可能性がある。よって、サブマージアーク溶接を導入する際は安全確保と品質管理の両立が重要課題である。

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