コロナ放電|電極周辺に生じる局所的な部分放電現象

コロナ放電

コロナ放電は、尖った電極や細い導線のまわりで電界が局所的に強くなり、その近傍の気体だけが部分的に電離して起こる持続的な放電である。電極間が完全に橋絡するアーク放電や火花放電とは異なり、電流はμA〜mAオーダーと小さく、暗所では電極の周囲に青紫色の淡い発光が見える。名称は太陽のコロナに似た光の冠に由来する。送電設備では電力損失や雑音の原因として嫌われる一方、電気集塵、複写機の帯電、樹脂フィルムの表面処理など、製造業の多くの工程で積極的に利用されている。

局所的な電離が持続するしくみ

大気圧の空気が絶縁を保てる電界強度の目安は約30kV/cm(3MV/m)とされる。平行平板のような一様電界では、この値を超えると一気に絶縁破壊へ進む。ところが針先や細線のように曲率半径が小さい電極では、電界が電極表面のごく近くにだけ集中する。そこで電子なだれが起こっても、少し離れた位置では電界が弱いため電離が広がらない。結果として、電極近傍の「電離領域」と、その外側でイオンがゆっくり移動する「ドリフト領域」に分かれた構造が安定して保たれる。これがコロナ放電の本質である。

開始電界については、米国の技術者F. W. Peekが1915年前後に送電線の実験から経験式をまとめた。導線半径をr〔cm〕、空気の相対密度をδ、表面粗さ係数をmとすると、開始電界の波高値はおおよそ次のように表される。

Ec = 30 m δ (1 + 0.301 / √(δ r)) 〔kV/cm〕

式からわかるとおり、線が細いほど、また気圧が低く空気が薄いほど開始しやすい。高地の送電線でコロナが問題になりやすいのはこのためである。表面に傷や付着物があればmが1より小さくなり、開始電圧は下がる。

正コロナと負コロナの違い

放電の姿は電極の極性によって大きく変わる。針電極が正の場合と負の場合を比べると、次のような差がある。

項目 正コロナ 負コロナ
主な電子供給源 周囲気体の光電離 電極表面からの二次電子放出
発光の様子 電極を包む一様なグロー、高電圧でストリーマ状 電極先端に点状の輝点
電流波形 比較的連続的 規則的なパルス(トリチェルパルス)
オゾン発生量 少ない 多い(正の数倍程度)
火花移行電圧 低め 高め

負コロナで観測されるパルス電流は、1938年にG. W. Trichelが報告したことからトリチェルパルスと呼ばれる。繰り返し周波数は条件次第でkHzからMHzに及ぶ。電気集塵機で負極性が好まれるのは、火花へ移行しにくく高い電圧をかけられるからである。

送電線で起こる損失と騒音

超高圧の送電線では、コロナ放電が三つの厄介な現象を引き起こす。ひとつはコロナ損失で、晴天時は小さいものの、雨天や霧の日には電線表面に水滴が付き、損失が晴天時の数倍から十数倍に跳ね上がることがある。二つめはラジオやテレビへの電波障害、三つめは「ジー」という可聴騒音である。500kV級の線路の近くで雨の日に聞こえる音の多くはこれによる。

多導体方式による対策

対策の代表が多導体(複導体)方式で、1相を2本、4本、6本といった複数の素線に分け、スペーサで一定間隔に保つ。等価的に電線の半径を大きくしたのと同じ効果があり、表面電界を下げられる。国内の500kV線路では4導体や6導体が一般的に採用されている。変電所の金具類でも、角を丸めたシールドリングやコロナリングを取り付けて電界集中を避ける。

製造現場での利用

電離で生じたイオンを粒子や材料表面に供給できる点が、工業利用の出発点になっている。1907年にF. G. Cottrellが実用化した電気集塵機はその古典的な例で、現在も火力発電所や製鉄所の排ガス処理で集塵効率99%以上を実現している。主な用途を挙げると次のとおりである。

  • 電気集塵機:排ガス中の粉じんを帯電させ、集塵極に捕集する
  • 複写機・レーザープリンター:コロトロンやスコロトロンで感光体を一様に帯電させる
  • オゾン発生器:酸素からオゾンを生成し、水処理や脱臭に使う
  • コロナ処理:ポリエチレンやポリプロピレンのフィルム表面を改質し、印刷・接着性を高める
  • 静電塗装・除電器:塗料粒子の帯電や、静電気の中和に用いる

コロナ処理機を扱う際の実務上の注意

フィルム加工の現場では、処理効果を濡れ張力で管理するのが普通である。未処理のポリエチレンは約31mN/mしかなく、グラビア印刷やラミネートでは38〜42mN/m程度まで上げるのが目安とされる。測定はJIS K 6768に基づく濡れ張力試験用混合液で行う。注意したいのは処理効果が時間とともに低下する点で、スリップ剤などの添加剤が表面へブリードすると数日で数mN/m落ちることも珍しくない。そのため、在庫期間が長くなる品種は高めに処理して出荷するか、印刷直前にインラインで再処理する工場が多い。処理機の出力は電極幅とライン速度で換算した単位面積あたりのエネルギー(W·min/m²)で設定するため、ライン速度を上げる際には出力の見直しを忘れてはならない。発生するオゾンは作業環境の許容濃度0.1ppmを超えやすく、排気ダクトとオゾン分解フィルタの点検も日常管理に含めておく必要がある。

部分放電・ほかの放電形態との関係

気中の電極で起こるコロナ放電は、広い意味で部分放電の一種に分類される。ケーブルや変圧器、モータ巻線の絶縁物内部のボイドで起こる放電も部分放電であり、長期間続くと絶縁劣化を進める。そのため高電圧機器の出荷試験では、IEC 60270に準拠した測定で放電電荷量をpC単位で評価する。電源電圧を上げていくと、コロナはやがてストリーマを経て火花放電やアーク放電に移行する。低気圧下で電極全体が光るグロー放電とは、放電が電極近傍に局在するかどうかで区別される。自然界では、雷雲の下で避雷針や船のマストの先端が光る「セントエルモの火」が、よく知られた大気中のコロナ現象である。

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