ガス溶接
ガス溶接とは、可燃性ガス(それ自体燃焼するガス)と、支燃性ガス(他の物質の燃焼を支援するガス)を溶接用のトーチ(吹管)の中で混合した後、噴出させて点火し、その混合ガスが燃焼する高温を利用して、金属を溶かして溶接を行う方法である。可燃性ガス(多くはアセチレンだが、水素やプロパンガスもある。)と酸素で混合して燃焼させることで高温の火炎を生み、母材と呼ばれる素材と溶加材を融合させる仕組みとなっている。装置が簡単で現場への持ち運びも容易なため、鉄鋼やステンレス、あるいは銅合金など、多様な金属材料の。アーク溶接や加熱加工に適用されてきた技術である。ただし、加熱時間が長く、厚板の。アーク溶接には適さない。
定義と特徴
ガス溶接とは、可燃性ガス(一般にアセチレンなど)と酸素を混合し燃焼させる火炎で母材を加熱・溶融して接合する方法である。これは溶接方法の中でも特に歴史が古く、電気を用いない点が特徴となっている。燃焼火炎の温度は最高で約3000℃程度に達し、。アーク溶接だけでなくろう付けや熱切断といった周辺プロセスにも応用可能である。機器が軽量であることや電源を必要としないこと、また使用ガスの調整によって火炎特性(中性炎・酸化炎・還元炎など)を変えられることにより、多彩な溶接条件が得られるのが利点といえる。さらに、操作は職人的な経験が大きくものをいう反面、電気溶接機材に比べて設備導入コストが低めであるため、建築現場や工場だけでなく、設備の少ない作業環境や屋外などにおいても一定の需要がある。
今日はガス溶接で金属を切断する「溶断」をやっています!
アングル(L字型の鋼材)を切るのは難しいです😣金属を切ってみたい人は新潟テクノスクール溶接科へ😌🌠 pic.twitter.com/KgbNHuAfrm
— 新潟県立新潟テクノスクール (@ngttechno) February 7, 2025
特徴例
- 設備費が安く、手軽に溶接作業ができる。
- 薄鋼板やパイプ類の溶接ができる
- 鋳鉄などの補修溶接ができる
- 電気を使わないため、現場対応が可能。
- 火炎の量を調節できるため、厚物から薄物の溶接ができる
- 火炎の温度が低く(3000~3300°C)、熱が集中しにくいため、溶接能率は低い
- 火炎の集中性が悪く、母材を広い範囲に加熱するため、溶接ひずみが大きい
- 大きな事故を引き起こす危険がある
使用ガスと安全性
代表的なガス溶接の燃料となる可燃性ガスはアセチレン(C2H2)である。アセチレンは純度が高いほど燃焼温度が上昇するが、一方で非常に引火性・爆発性が高いため、取り扱いに細心の注意が必要である。また、近年ではプロパンガスや天然ガスを使用するケースもあるが、火炎温度がアセチレンより低くなる傾向があるため、溶接速度や溶着量などの面で多少の制約を受ける。酸素ボンベと可燃性ガスボンベを組み合わせて使用するため、ボンベ自体の保管や移動時の転倒防止、ガス漏れの監視、ホースの劣化点検などは厳重に行う必要がある。現場では火花や溶融金属の飛散に加えて、高温の火炎に直接触れるリスクやガスの爆発リスクが存在するため、適切な保護具や換気体制、さらに作業時のガス圧管理などを徹底することが望ましい。
装置構成
ガス溶接に用いる主な装置は、可燃性ガスと酸素を貯蔵するボンベ、それらの圧力を調整するレギュレータ(圧力調整器)、ガスを火口に導くホース、そして溶接火炎を生み出す溶接トーチ(バーナ)から成り立っている。レギュレータは高圧のボンベ内ガスを作業に適した低圧にまで減圧する装置であり、両方のガス圧を個別にコントロールできるようになっている。溶接トーチの先端部にはガス混合部が設けられており、ここで酸素と可燃性ガスが混合されて火口から火炎が噴出する。なお、酸素と可燃性ガスを別々に操作するためのバルブがトーチに備わっており、これらを調整することで炎の性質を酸化炎・中性炎・還元炎といった具合に使い分けられる。
作業手順
まず、強固な平面もしくは安定した架台上でボンベを立て、チェーンなどで転倒を防ぐ固定を行う。続いてレギュレータをそれぞれのボンベに取り付け、ガス漏れがないことを確認した上でホースを接続する。酸素と可燃性ガスのバルブをゆっくりと開きながら、レギュレータで圧力を作業に適した値に調整し、トーチのバルブも開閉をチェックする。点火は専用の火花式着火装置や安全ライターを用いるが、トーチ先端から少しガスを出した状態で確実に着火しなければならない。炎の色や形状、音を観察しながらトーチの酸素バルブと可燃性ガスバルブを微調整して中性炎を得る。溶接する部位をプレヒート(予熱)した後、溶加材を母材との間に置き、火炎の移動や溶加材の添え方を制御しながら溶接線を形成していく。熟練が必要な理由は、この火炎や溶融池の観察に基づく調整が大きく左右するためである。
10月最終日。
今月は久しぶりに売り上げが👍
お仕事依頼も増えてるので、しばらくは暇ではないようでホッとしてます(笑)
写真は15年程前に鋳物のガス溶接をしている叔父。
様になってるなぁ~😊
父や叔父、前に居た従業員さん。
そんな先輩(あえて)の技術の蓄積があるので今がある。
ホントに感謝😊 pic.twitter.com/cYFXwM6S0E— 株式会社 須山鉄工 (@yo_setuman) October 31, 2023
用途と利点
ガス溶接は、薄板やパイプ類の溶接、または美術工芸品の制作や修理、各種ろう付け(ブレージング)といった繊細な作業に広く使われている。そのほか、鋳物の修正や補修作業、現場での臨時的な加熱や曲げ加工にも対応しやすい。電力を使用しないため、電源確保が難しい場所での金属接合にも対応できることは大きな強みである。火炎の温度と形状を直感的にコントロールできるため、狭い範囲を的確に加熱したり、緩やかに温度を上げたりといった作業がやりやすい。さらに、アークを伴う溶接ほどの強力な光が生じないため、遮光面を用いずに目視で火炎や溶融池を観察しやすい点も作業性を高める要因となっている。
課題
ガス溶接は、母材にひずみ(溶接熱による母材の変形)が発生しやすく、溶接能率が悪いことから、厚板の溶接には適さない、
留意点
ガス溶接は一見するとシンプルな工法であるが、高圧ボンベの取り扱いや可燃性ガスの爆発リスクを十分に理解し、安全管理を徹底しなければならない。特にアセチレンは圧力が高くなるほど爆発リスクが増す性質があるため、ボンベ内部では溶剤に溶かす形で保管されていることが多い。また、火炎温度は高いが加熱範囲が広くなる傾向があるため、溶接による熱の影響が母材全体に及びやすく、熱変形や熱歪みに注意が必要である。アーク溶接に比べると溶接速度が遅く、母材や溶加材の溶け込みが浅い傾向にあるため、高強度を求められる厚板溶接や特殊鋼の溶接には向かない場合もある。現場では安全対策の徹底に加えて、用途に即した火炎制御と適切な溶加材の選定が要求される。