オイルストレーナー
オイルストレーナーは、潤滑油や作動油の流路に設置し、金属メッシュや穿孔板で粗大粒子を捕捉する一次ろ過器である。油中の切粉や錆、シール摩耗粉、スラッジなどを入口側で確実に止め、ポンプや軸受、バルブの損傷を防ぐ。一般に濾材を用いる精密なフィルターに比べ目開きが大きく、洗浄再使用が容易で圧力損失が小さいことが特長である。
役割と必要性
オイルストレーナーの第一の役割は異物混入リスクの低減である。潤滑系では摩耗粉や外来粒子が接触面に噛み込み、焼付きやスクラッチを誘発しうる。油圧系ではスプール弁のスティッキングやポンプのキャビテーションを招く。入口側で粗粒を遮断しておくことで、後段のフィルター寿命を延長し、システムの保全性を高める。
構造と材料
代表的構造は、金網スクリーン、穿孔板(パンチング)+ワイヤメッシュの積層、バスケット形、カートリッジ形である。材料は耐食性に優れるSUS304/316が一般的で、ガスケットにNBRやFKMが用いられる。目開き(開口径)と開口率、網線径、メッシュ層数が捕捉性能と圧力損失を左右する。
種類
- サクションストレーナー:ポンプ吸込口直前に設置し、大粒子を確実に止める。
- インラインストレーナー:配管途中に直列配置し、メンテナンス性を重視。
- バスケットストレーナー:大流量対応。蓋を外してバスケットごと洗浄できる。
- マグネット併用形:磁性粉を磁力で捕捉し、メッシュ目詰まりを緩和。
- リターンライン用:戻り側に入れてタンク汚染を抑える。
性能指標
主要指標は許容流量、初期圧力損失ΔP、目開き(例:300 μm、500 μm等)、推奨最大差圧、許容温度・粘度範囲、耐圧等である。濾過精度の表記に「mesh」や「micron」が使われ、目開きは粒径分布に対するカットオフの目安となる。差圧上昇は目詰まり進行を示す重要な保全信号である。
設計・選定のポイント
- 流量・粘度・温度:高粘度・低温ほどΔPが増すため余裕を見込む。
- 目開き:下流機器の許容粒径(例:ポンプクリアランス)より十分小さく設定。
- 捕捉面積:大きいほど目詰まりに強く、交換・洗浄間隔を延ばせる。
- バイパス弁:差圧上昇時に自動開放して流量を確保する安全機構。
- 保全性:差圧計や差圧スイッチを併設し、定期点検を容易にする。
圧力損失の見方
初期ΔPはカタログの流量–ΔP曲線で確認する。運転中は汚染の進行でΔPが上昇するため、設定差圧で清掃・交換の基準を設ける。吸込側では過大ΔPがキャビテーション余裕(NPSH)を圧迫するため、目開きと面積に余裕を持たせる設計が肝要である。
設置と配管
サクション側では液面下の沈設を基本とし、配管はできるだけ短く曲がりを減らす。インライン形は流れ方向(矢印)を合わせ、ハウジング蓋を上向きにしてメンテナンス性とエア抜きを確保する。固定にはボルトの締結管理やガスケットの圧縮率管理が重要である。
メンテナンス
定期的にメッシュを取り外し、溶剤・超音波・逆洗い等で洗浄する。磁性粉が多い系はマグネットの清掃を追加する。目視で破断・変形があれば即時交換し、再組立時はOリングの損耗をチェックする。
故障・不具合の兆候
- 差圧の急上昇:目詰まり。流量不足やポンプ異音を伴う。
- 差圧ゼロ近傍での異物通過:メッシュ破断やバイパス弁の固着開放。
- 吸込側キャビテーション:吐出脈動・振動の増大、ポンプ損耗の進行。
自動車・産業における例
自動車のエンジンではオイルストレーナーをオイルパン内に配置し、スクリーンでスラッジやシール破片を遮断してオイルポンプを保護する。産業機械ではギヤボックスや循環潤滑系、油圧ユニットのサクション・リターンラインに用いられ、大流量設備にはバスケット形が採用される。
フィルターとの違い
オイルストレーナーは金属網主体の「粗ろ過」で、洗浄再使用を前提とする。これに対しフィルターは繊維・多孔質媒体を用いた「精密ろ過」で、規定粒径の捕捉効率やβ値が重視される。多くのシステムではストレーナー+精密フィルターの直列で信頼性と保全コストを両立する。
用語メモ
meshは1インチ当たりの線本数で、同じmeshでも線径により目開きが変わる。目開きの代表値をμm(micron)で把握し、下流機器の許容粒径との対応で選ぶと実務上の整合がとりやすい。
コメント(β版)